Billboard JAPAN


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【#BJMA】2014年ビルボードジャパン・チャート解析/本田次郎

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【BJMA】特集


いよいよ表面化する “チャート価値構造の変化”


 総合楽曲チャート「Billboard Japan Hot100」は、2013年12月から、従来のパッケージセールス、エアプレイ、デジタルセールスに加え、Twitterのツイート回数とCDのLook Up回数を組み込んだハイブリッド・チャートのカタチで運用されているため、2014年のイヤーエンドチャートもまた新たな指標を反映したものになっています。Tweet数からはSNSでの、Look Upからはレンタル市場での、各ユーザー動向が把握できるようになり、それぞれにおいてどのようなアーティストがパワーを持っているかが把握できます(TwitterのTOP10にはAKB48が3曲、東方神起と嵐、EXILE関連が2曲ずつ。Look UpではTOP10に嵐とSEKAI NO OWARIが3曲づつ)。それとともに、日本のマーケット性、消費者心理に適合させた戦略をとった商品の強さをここ数年の傾向通り垣間見ることができますし、エアプレイではEDMトレンドに縛られない洋楽曲が上位にチャートインしています。

 業界メディアを運営する中で、少し俯瞰して2014年を振り返ってみると、音楽チャートの意義というものが、特にネット上でより顕著に、議論されるようになった年だと感じました。一つの見方として、社会的に、ある事象が議論の対象となる場合、それに対する意見や主張が様々な角度から言説として目に見えるカタチで表れるようになってはじめて、その事象はみんなで議論するに値するテーマになるというケースがあります。そして、そこから様々な取り組みがはじまります。例えば「引きこもり」や「ニート」という事象を例にとった場合、昭和の時代から仕事をしないで家にいる大人は普通に存在していました。ですが、メディアの進化や社会変化によりその有様や実態が明らかになるにつれ、「仕事をしないで家にいる」状態に対する本来的な意味でのclaimが多く提示されるようになり、その状態を表す言葉が作られ、議論・対策がなされるようになりました。このコンテクストはソーシャロジーに含まれるひとつの限定的なスタンスではあるかもしれませんが、基本的に「公平」という要素が強く求められてしまうチャートやランキングを考えるにあたってはひょっとすると有効かもしれません。翻って、海外の音楽ビジネス記事がほとんどストリーミングサービスやデジタルの話題で埋め尽くされていた感のある今年、フィジカルからデジタルへマーケットの変動が世界的に進み、音楽チャートが持つ意味も以前とは明らかに違う色合いを帯びるようになりました。その変化を、音楽産業に関わる関わらないを問わず、人々が意識的にも肌感覚的にも敏感に感じとった結果、「音楽シーンの把握にはもっと多様なチャートや指標があってもいいのでは?」といった言説の顕在化・拡散がより進んだ一年だったように感じます。

 今年、アメリカのビルボード本体で長年チャートデザイン、設計を手がけてきたチャートディレクターであるSilvio Pietroluongoさんとお話させていただく機会がありました(http://www.musicman-net.com/focus/47.html)。Silvioさんは、「我々は時代の変化にあわせて柔軟にチャートを進化させてきた」とおっしゃっており、チャートそのものの意義に関し、チャートの無い世界は「カオス」だと、つまりチャートはある種の秩序をもたらす役割を果たすと、お話されていました。そういう方針を根本に持ってデザインされたビルボードのハイブリッドチャートは、時代の変遷にあわせた新しい試みをマーケットに示し、音楽の歴史において一つのメルクマールとなり得る可能性を秘めたストリーミングサービスの是非が問われる昨今、「【音楽に順番を付ける】ということはそもそもどういうことなのだろう?」と、私たちに改めて考えさせてくれる側面を持っているのかもしれません(2014年11月、米国では【ビルボード・アルバム・チャート】が23年振りに刷新され、ストリーミングのデータを加えるようになりましたが、それを受けBob lefsetz氏のように「セールスはもう無意味だ、ストリーミングだけが人々が何を聴いているかを表している」という意見を持つ人もいます。また、Shazamのように地域性やパーソナルな興味にフォーカスするなど全く別の視点からチャートデータを提示するサービスも今後さらに増えることが予測されます)。

 一方で、国内音楽メディアとして毎日沢山のプレスリリースを拝見する中で、セールスチャートでの好成績がニュース出しのリファレンスとなるケースは依然多くあります。つまり、音楽で何かしらの良い格付けを獲得すること自体が、今でも楽曲やアーティストのブランディングとして強力かつ有効に機能していることが伺えます。

 2015年は、産業の複雑化、構造変化がよりドラスティックになることが見込まれますし、あわせて、チャートやランキングもそれら自体がどういう価値変化を帯びていくのかが一層注目されます。

BJMA2014


プロフィール写真

本田次郎 大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年Musicman-NETに参加。 メディアの企画・制作・運営から、イベント、記事執筆、PR、取材など現場の仕 事も行い、音楽業界のビジネスサイドを伝える。 並行してアーティスト活動も行う。

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