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【#BJMA】2014年ビルボードジャパン・チャート解析/西寺郷太

【BJMA】特集


「時代に即したまっとうな判断基準」の存在は、
必ず素晴らしい音楽を生む土壌となる


 73年生まれの自分が洋楽に夢中になったのは10歳の頃、1983年のことだ。

 そこからの数年、マイケル・ジャクソンの《スリラー》を皮切りに(当時大流行したMTVの勢いもあって)、世界中の子供達がプリンスだ、ポリスだ、ワム!だ、などとアメリカのビルボード・チャートに一喜一憂するような時代が訪れる。僕も典型的なその幼い「ポップスおたく」のひとりだった。

 強調したいのはポップスの楽しみ方には、楽曲そのものの素晴らしさや、アーティストの魅力はもちろんだが、「チャートを読む」ことも含まれるということだ。あたかも、鉄道好きの少年達が時刻表ひとつで全国を駆け巡る「架空の旅」を妄想するように・・・。毎週めまぐるしく変化する公正なヒット・チャートは、さながらシングルという武器を持った現代の戦国武将達の様々な合戦場であり、想像力を喚起させるエキサイティングなものだった。

 今回、新しくリニューアルした日本の「ビルボード・チャート」、2014年の年間100位を眺めながら、僕は毎週チャートにのめり込んだ少年時代に戻っていた。

 時代が変わればヒット曲の生まれ方も変わる。現在のミュージック・ビジネスの手法のひとつに、何枚も同じ人間が同一のシングルを購入する、というモデルがある。確かにそれもひとつのファンによる愛の深さだ。しかし、ラジオやネットやSNSなど様々なベクトルから読み込んだ「時代に即したまっとうな判断基準」の存在は、必ず素晴らしい音楽を生む土壌となる。

 「ビルボード」という栄光の伝統の名の下に、この国の「ヒット」の基準に2010年代ならではの多様性が生まれる。現代のミュージシャン、プロデューサーとしてとても嬉しいことです。

BJMA2014


プロフィール写真

西寺郷太 1973年東京生まれ、京都育ち。1996年にNONA REEVESとしてデビュー。以来、12枚のオリジナル・アルバムを発表。作詞・作曲家/プロデューサー/アレンジャーとして幅広く活動しながら、ラジオ・TVのパーソナリティや雑誌、ライナーノーツの執筆でも活躍。マイケル・ジャクソンや80'sの音楽の造詣も深く、著作に『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』『マイケル・ジャクソン』がある。

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