Special
オリジナル・ジェームス・ブラウン・バンド特集
ゴッドファーザー・オブ・ソウル、そしてキング・オブ・ファンクこと、ジェームス・ブラウン(JB)。数あるブラック・ミュージックのアーティストのなかでも、JBの存在は別格だ。特に、スライ&ザ・ファミリー・ストーンからプリンスに連なるファンクの歴史は、彼がいなかったらまったく異なったものになっていただろう。同時に、ロックからヒップホップ、テクノに至るまでジャンルを超えて多大な影響を与え続け、死後8年が経とうとしている今も、彼が残したファンクネスは健在だ。そしてその魂は、ジェームス・ブラウン・バンドとしてこの世に存続し、いよいよこの年末に日本へ上陸する。再評価著しいJBサウンドを体感するまたとないチャンスだけに、あらためてJBの世界を知っておきたい。
まずは、ジェームス・ブラウンの歴史をおさらいしておこう。1933年(1928年という説もある)、米国東南部のサウス・カロライナ州で生まれた(といわれている)JBは、貧しい家庭で育った。幼少時からすでに歌の才能はあったようだが、16歳の時に自動車窃盗の罪で教護院に収容される。ここで知り合ったのが、後に音楽のパートナーとなるボビー・バードだった。
▲『ライヴ・アット・ジ・アポロ』(1963)
服役後はボビーらとリズム&ブルースのバンドを組み、1956年にジェイムズ・ブラウンとフェイマス・フレイムズ名義で初のシングル「プリーズ、プリーズ、プリーズ / Please, Please, Please」をリリース。いきなりビルボードのR&Bチャートで5位を記録する。その後、1958年にシングル「トライ・ミー / Try Me」がR&Bチャートで1位を獲得。一躍、気鋭のソウル・シンガーとして注目を浴びた。60年代に入っても「シンク / Think」(1960年)を筆頭に数々のヒットを放ち、1962年に発表したライヴ・アルバムの傑作『ライヴ・アット・ジ・アポロ / Live At The Apollo』(1963年)で大ブレイク。代表曲を集めた本作では、初期JBの絶品の歌唱力と強力なパフォーマンスを堪能できる。
▲James Brown T.A.M.I Show Performance(1964)
1964年には最初のファンクといわれているシングル「アウト・オブ・サイト / Out Of Sight」をリリース。続いて、「パパのニュー・バッグ / Papa's Got A Brand New Bag」(1965年)、「アイ・フィール・グッド / I Got You (I Feel Good)」(1965年)、「マンズ・マンズ・ワールド / It's A Man's Man's Man's World」(1966年)、「コールド・スウェット / Cold Sweat」(1967年)、「アイ・ゴット・ザ・フィーリン / I Got The Feelin」(1968年)、「セイ・イット・ラウド / Say It Loud ? I'm Black And I'm Proud」(1968年)、「マザー・ポップコーン / Mother Popcorn (You Got To Have A Mother For Me)」(1969年)、そして誰もが知っている「セックス・マシーン / Get Up (I Feel Like Being A) Sex Machine」(1970年)と、ファンクのマスターピースと呼べる楽曲を大量に生み出した。
この数年間に彼の代表曲が出揃っていることを考えると、いかに密度の濃い時期だったかがわかるだろう。もちろん、アルバムも多数発表しており、『ライヴ・アット・ジ・アポロ・2 / Live At The Apollo, Volume II』(1968年)や『セックス・マシーン / Sex Machine』(1970年)といったライヴ盤が特に人気が高い。
来日公演情報
The Original James Brown Band
featuring RJ and Martha High, Danny Ray,
Fred Thomas, Tony Cook, The Bitter Sweets etc.
ビルボードライブ東京:2014/12/30(火) ~ 12/31(水)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2014/12/28(日)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
Text: 栗本斉
「セックス・マシーン」をヒットさせた1970年に、JBはバック・メンバーを大幅に入れ替えた。それが、グループ単体でも後に活躍することになるThe J.B.'sだ。ここには、その後パーラメントやファンカデリックといったPファンク・ファミリーの一員となるブーツィー・コリンズが初代メンバーとして在籍し、メイシオ・パーカー、フレッド・ウェズリー、ピー・ウィー・エリスによるJBホーンズを生み出すなど、ファンク史に残る優秀なミュージシャンを多数輩出した。
▲『ホット・パンツ』(1971)
彼らを従えて最強のサウンドを完成させたJBは、「ホット・パンツ / Hot Pants」(1971年)、「メイク・イット・ファンキー / Make It Funky」(1971年)、「トーキン・ラウド&セイイン・ナッシング / Talking Loud And Saying Nothing」(1972年)、「ザ・ペイバック / The Payback」(1974年)、「マイ・サング / My Thang」(1974年)といったヒットを連発。後続のスライ&ザ・ファミリー・ストーンやPファンクらとともにファンク黄金時代を築き、クール&ザ・ギャング、オハイオ・プレイヤーズ、EW&F、ザップ、そしてプリンスといったスターたちが登場する礎を作り上げた。
▲『ボディヒート』(1971)
しかし、70年代半ばを過ぎると、ディスコ・ブームが到来。洗練されたサウンドが主流になっていったことで、JBの粘っこいグルーヴは徐々に忘れられてしまう。「ゲット・アップ・オファ・ザット・シング / Get Up Offa That Thing」(1976年)や「ボディヒート / Bodyheat」(1976年)等のヒットはあるが、自身もディスコを取り入れるなど迷走。80年代初頭にはThe J.B.'sも解散し、しばらくは不遇の時代を過ごすことになった。しかし、ディスコの時代が終わるとヒップホップが台頭し、アフリカ・バンバータがJBをフィーチャーしたシングル「ユニティ / Unity」(1984年)をヒットさせる。
▲「Unity」James Brown & Afrika Bambaataa
同時に、過去のJBサウンドがサンプリング・ソースとして多数引用されることで、再評価の兆しが高まっていく。そんな良きタイミングで発表したのが「リヴィング・イン・アメリカ / Living In America」(1985年)だ。映画『ロッキー4/炎の友情』に使用され、映画とともに大ヒットする。またこの後も、フル・フォースと組んだ「アイム・リアル / I'm Real」(1988年)や、アレサ・フランクリンとのデュエット「ギミ・ユア・ラヴ / Gimme Your Love」(1989年)など、全盛期には劣るがこの時代ならではのヒットを生み出している。
90年代以降は、さすがに制作のペースは落ちたが、ライヴ活動は精力的に続けた。来日公演も頻繁に行い、往年のソウル・ファンから若いヒップホップ・リスナーまでを魅了。その間、カップヌードルのCMに出演したり、SMAPのアルバムに参加するなど、日本のお茶の間で彼の声を聴くことも増えた。しかし、2006年の12月25日に肺炎をこじらせて緊急入院の末、急逝。半世紀に及ぶファンクの歴史が幕を閉じた。
さて、今回来日するジェームス・ブラウン・バンドのメンバーは、とにかく豪華だ。長年JBとステージをともにしているバンド・リーダーのルーズベルト・“RJ”・ジョンソン、60年代から断続的にツアーに参加していたヴォーカリストのマーサ・ハイ、晩年のJBバンドでサックスを吹いていたワルド・ウェザーズ、ブーツィー・コリンズの後釜としてファンキーなベースラインを弾いていたフレッド・トーマス、10代でJBに見初められたというドラマーのトニー・クック、晩年のバンドで屋台骨となったドラマーのエリック・ハーグローヴ、ライヴ・エイドなどの大舞台にも立ったコーラス隊ビタースウィーツのメンバーなどが大挙参加している。なかでも絶対に見逃せないのは、ダニー・レイだ。名前は知らなくても、名調子でJBを舞台に呼び込む司会者であり、あのマント・ショウ(Cape Act)に欠かせない人物といえばわかるだろう。JBのライヴは、彼の存在そのものが重要な演出であったし、本人亡き後のジェームス・ブラウン・バンドにとっても同様だ。
とにかく、年末の日本を踊らせるためにやってくるジェームス・ブラウン・バンドは、50年に及ぶ歴史を凝縮した現在世界最強のファンク集団。彼らのパフォーマンスに、きっと天国にいるJBもうなずきながら眺めているに違いない。そして我々も、彼の温かいまなざしを遠くに感じながら、輝かしい新年を迎えようではないか。Get Up, Get Into It, Get Involved!
来日公演情報
The Original James Brown Band
featuring RJ and Martha High, Danny Ray,
Fred Thomas, Tony Cook, The Bitter Sweets etc.
ビルボードライブ東京:2014/12/30(火) ~ 12/31(水)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2014/12/28(日)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
Text: 栗本斉
セックス・マシーン
2018/12/05 RELEASE
UICY-76581 ¥ 1,100(税込)
Disc01
- 01.セックス・マシーン
- 02.ブラザー・ラップ
- 03.ビウィルダード
- 04.アイ・ゴット・ザ・フィーリング
- 05.ターニット・ア・ルーズ
- 06.アイ・ドント・ウォント
- 07.リッキング・スティック
- 08.ロー・ダウン・ポップコーン
- 09.スピニング・ホイール
- 10.イフ・アイ・ルールド・ザ・ワールド
- 11.ゼア・ウォズ・ア・タイム
- 12.マンズ・マンズ・ワールド
- 13.プリーズ、プリーズ、プリーズ
- 14.アイ・キャント・スタンド・マイセルフ
- 15.マザー・ポップコーン
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