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リリースから20年!マライア・キャリーの大ヒット曲「恋人たちのクリスマス」の制作秘話をあの名プロデューサーが語る
クリスマス・ソング、その代表格といえば、やはりマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」だろう。毎年必ずクリスマス・シーズンに入ると、米ビルボード・シングル・チャート、そしてBillboard JAPANの洋楽チャートでも上位にチャートインし、クリスマス・ソングの定番として、世界的に不動の人気を誇るこの曲。今年は、1994年11月にリリースされた「恋人たちのクリスマス」と世界中で500万枚以上のセールスを記録したマライアのクリスマス・アルバム『メリー・クリスマス』が、20周年を迎えるアニバーサリー・イヤー。そこで、セリーヌ・ディオンの代表作「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」、ホイットニー・ヒューストン、ライオネル・リッチー、ベイビーフェイスなど、数々の大物アーティスト手掛け、90年代初頭よりマライアの作品に携わり、『メリー・クリスマス』では共同プロデューサーを務めたウォルター・アファナシエフに世紀の名曲の制作秘話を語ってもらった。
「ホワイト・クリスマス」や「ジングル・ベル」のように、
伝統的な要素がまったく無かったにもかかわらず、
大きなポップ・ヒットになった
▲ 「Miss You Most (At Christmas Time)」 MV
??アルバム『メリー・クリスマス』の制作はどのようにスタートしたのですか?
ウォルター・アファナシエフ:このアルバムを制作し始めたのは1993年で、マライアと初めて仕事をしてから3年ぐらいが経った頃だ。マライアとともに、彼女のクリスマス・アルバムの為に曲を書き始めた。一番最初に書いた曲は、「Miss You Most (At Christmas Time)」で、バラード調の悲しげな曲だった。そして、「Jesus Born on This Day」というクラシカルで宗教的な曲を書き上げた。次はマライア、そしてトミー(・モットーラ:当時ソニーのCEOでマライアの夫)が作りたかった、フィル・スペクターを彷彿させる、古き良きロックンロールのような、60年代っぽいクリスマス・ソングを一緒に書き始めたんだ。
僕が、ロックンロール調のピアノを弾き、左手でブギウギをしだしたら、それがマライアを触発したようで、「I don’t want a lot for Christmas」というメロディを思いついた。そして、この“ロックンロール・ブギウギ・ソング”に合わせ歌ったり、演奏しながら、色々試したものが、「恋人たちのクリスマス」の中核部分となっていったんだ。
??アルバムに収録されている3曲のオリジナル・ナンバーは、ゴスペルのフィーリング(「Jesus Born on This Day」)、バラード調(「Miss You Most (At Christmas Time)」)とポップ・ロック風(「恋人たちのクリスマス」)となっていますが、意識的に様々なジャンルを取り入れることにしたのですか、それとも自然な流れで?
ウォルター:クリスマスへ敬意を表しているんだ。クリスマス・ミュージックには、伝統的なもの、「赤鼻のトナカイ」や「フロスティ・ザ・スノーマン」などの愉しい子供向けのもの、そして「Chestnuts Roasting On An Open Fire」、「I’ll be Home for Christmas」などのラヴ・ソングと、3種類ある。だから、それらを1曲づつ書こうと思ったんだ。
??「恋人たちのクリスマス」は、先ほど話していたピアノでのセッションから完成まで、どれぐらいの時間を要したのですか?
ウォルター:僕ら2人にとって、曲作りのプロセスはいつも大体一緒で、最初に曲の中核、ベーシックなメロディを書きあげ、そして曲を書き終わる段階で詞も多少出来上がっている。あの曲は完成するのがとても早くて、いくつかの他の曲に比べると書くのが簡単だった。定型的で、コード・チェンジも少なかった。あまり聞かないような特別なコードを入れて、少しユニークにしようとしたことが、曲を特出させ、特別にした。月日が経っても、ユニークであり続けるのは、それが要因の一つだと思う。その部分は、多分1時間ぐらいかかって、その後は普段どおりに家に帰ったね。
そして次の数週間の間にマライアは、僕に電話をして、「この部分はどう?」と訊いてきて、詞を美しくコーディネートし、完成させるまで少し話をした。そして、レコーディング・セッションが始まるまで待った―それは1994年の夏、NYに集まり、行われた。そこで初めて、彼女がマイクを通して歌うのを聴いたんだ。その後は、もうご存じのとおりだよね。
??その当時、「恋人たちのクリスマス」がアルバムからの一番のヒット曲になると思いましたか?
ウォルター:ノーーー。20年前は、今のようにクリスマス・ミュージックやクリスマス・アルバムは、重大事ではなかったんだ。昔は、クリスマス・アルバムを発表するアーティストは少なかったし、あまりポピュラーでもなくて、オリジナルのクリスマス・ソングのシングルをリリースするアーティストは誰もいなかった。だから、普段どおりに「クリスマス・アルバムを出すだけで、別に大したことじゃない。」という心持ちで、シングル・チャートで1位になって、アルバムのセールスを促進することになるなんて、予想もつかなかった。そんな時代ではなかったんだ。そこが、当時ならではのモダンな現象だよね―「ホワイト・クリスマス」や「ジングル・ベル」のように、伝統的な要素がまったく無かったにもかかわらず、大きなポップ・ヒットになった。
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「恋人たちのクリスマス」が、一番有名で、
成功したクリスマス・ソングになると信じている
??近年は、クリスマス・アルバムが沢山リリースされているとおっしゃいましたが、それにも関わらず、同じような成功を収めた曲が見当たらないのは、なぜだと思いますか?
ウォルター:何と言ったらいいかよくわからないけれど、僕にとって50億年に一度しか起きない宇宙的な出来事のようなんだ。それに、この20年間でたくさんのオリジナル・クリスマス・ソングが書かれていて、誰も書いていないわけではない。誰もが代表的なクリスマス・ソングを書くことを望んでいるけど、どういう理由からか「恋人たちのクリスマス」がその曲になってしまったんだ。考えてもみなかったことで、きちんと説明するのも難しい。でも幸運だと思っているよ、クリスマス・ソングの勢いに乗ることができた最後の曲で、その後は扉が閉ざされてしまったから。
もちろん新たなヒットは生まれると思うし、そうあるべきだ。けれど、アーティスト、時期、ともにピッタリでなければいけないし、その時のカルチャーにあった詞、そしてメロディでなければならない。20年前、それが僕らの曲と合致し、そして今もビッグになり続けている。「恋人たちのクリスマス」が、一番有名で、成功したクリスマス・ソングになると信じているよ。
▲ 「All I Want for Christmas Is You」 / "Love Actually" OST
??ビッグになり続けているというのには同感です。それまでも大ヒットしていましたが、2003年に公開された『ラヴ・アクチュアリー』で重要な役割を果たし、映画が大ヒットしたことも、曲の勢いを手助けしたのではないかと思います。
ウォルター:もろろん。これも注目すべき現象の一つだと思う。マライアが、映画やTVなどで自分の曲が歌われることを許可するのは稀なんだ。でも、『ラヴ・アクチュアリー』では小さな女の子が歌うことを許可し、それが最初で最後だった。もしマライアが、映画などにあの曲をレコーディングしたい、というすべてのリクエストにイエスと答えていたら、あの曲は20倍有名になっていたと思う。でも、あの1本の映画で、1人の小さな女の子が歌っているバージョンのみだ。
??マライアが、あの映画に使われることを許可したのか理由を知っていますか?
ウォルター:いいや。あの映画が単に好きだったからではないかな―脚本もキャストも気に入っていたからね。「小さな女の子で、ちょうどいい時期だ。」と考えたんだと思う。とてもラヴリーで、キュートな映画で、クリスマスを代表する作品となった。この10年間で、『ラヴ・アクチュアリー』は、最も成功したクリスマス映画の一つになった。そういったこともあり、今後10~20年で、もっとビッグなクリスマスの代表作となり、同時に僕らの曲を、より歴史に名を刻むような曲になる手助けをしてくれる。素晴らしいことだね。
??過去に「恋人たちのクリスマス」を映画化したいとマライアが話していたこともあるそうですね。
ウォルター:マライアと僕は、もう連絡を取り合っていないんだ。人生で、一時を一緒に過ごしたけれど、僕らと決別しなければならなかった。彼女の個人的な怒り、そして夫とのパーソナルでエモーショナルな別れの結果、僕らとも距離を置かねばならなかった。これは、彼女個人の意思で…今もその状態が続いている。僕らは『バタフライ』以降、一緒に制作活動はしていない。僕らが一緒に作った作品に関しての彼女の予定や将来の計画については、まったくわからない。今年は20周年なので、何かできればいいと思うけれど、今のところは何も観ていないし、聞いていないよ。
??では、オリジナルではない曲に関して、収録曲を2人でどのように決めていったのですか?
ウォルター:いつでもマライア、トミー、そしてレコード会社による総意の決断だったね。トミーはレコード会社で、彼女のパートナーで、夫でもあったから、彼の意見や導きは常に参考にしていた。マライアは、彼がもたらす知識を真剣に受けとめていた。何故なら、レコード会社のサポートがなければ、やるだけ無駄だからだ。お互いのパートナーシップが不可欠なんだ。そしてマライア自身、自分が歌いたい特有のスタイルがあって、彼女の歌声が上手く映えるような多様性を持った、普段のポップスターとしてのキャリアでは不可能なことをやりたかったんだ。
Q&A by Erin Strecker / 2014年10月30日 Billboard.com掲載
「All I Want For Christmas Is You」 MV
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メリー・クリスマスⅡユー
2013/11/06 RELEASE
UICL-1107 ¥ 2,619(税込)
Disc01
- 01.サンタが街にやってくる (イントロ)
- 02.Oh サンタ!
- 03.ああベツレヘムよ|リトル・ドラマー・ボーイ
- 04.クリスマス・タイム・イズ・イン・ジ・エア・アゲイン
- 05.牧人ひつじを|ボーン・イズ・ザ・キング (インタールード)
- 06.ホエン・クリスマス・カムズ
- 07.サンタクロースがやってくる|ハウストップ・セレブレイション
- 08.チャーリー・ブラウン・クリスマス
- 09.神の御子は今宵しも|ハレルヤ・コーラス feat.パトリシア・キャリー
- 10.さやかに星はきらめき (ライヴ・フロム WPC)
- 11.ワン・チャイルド
- 12.恋人たちのクリスマス (ニュー・ヴァージョン)
- 13.オールド・ラング・サイン (ニュー・イヤーズ・アンセム)
- 14.Oh サンタ! (Jump Smokers Remix) (日本盤ボーナス・トラック)
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