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スイスが誇る若きポップ/フォーク・シンガー、バスティアン・ベイカー スペシャルインタビュー(チケプレあり)

バスティアン・ベイカー インタビュー

 本国スイスのみならず、ヨーロッパ各国で人気上昇中のシンガー・ソングライター、バスティアン・ベイカー。今年2月、日本・スイス国交樹立150周年の記念事業の一つであるイベント、SWISSDAYSに出演するため日本にやってきた彼が9月24日、『トゥー・オールド・トゥー・ダイ・ヤング ジャパン・エディション』(UNCLEOWEN / HUCD-10169 / www.uncleowenmusic.com)で日本デビューを飾った。
 バスティアンにとって2作目のアルバムとなる『トゥー・オールド・トゥー・ダイ・ヤング』は昨年9月、本国スイスのアルバム・チャートで初登場No.1の快挙を成し遂げたヒット作。その『ジャパン・エディション』には3曲のボーナス・トラックを追加。ストリート感覚あふれるロック・ナンバーからピアノ・バラードまで、レコーディング当時、21歳だったバスティアンがベテラン・ミュージシャンを従え、セルフ・プロデュースで完成させた多彩な曲の数々からみずみずしい才能に加え、持ち前の気骨も感じられ、ただ繊細なだけじゃないところが頼もしい。
 アルバムのプロモーションのため、再び日本にやってきたバスティアンにインタビューした。11月には東名阪を回るツアーも決定。23歳の若きシンガー・ソングライターの日本での活躍に期待している。

一番のプライオリティは日本だよ。

??2度目の日本ですね?

バスティアン・ベイカー:前回は2月に来て、ブルーノート公演を含め、3回、ライヴをやったんだ。ちょうど大雪が降った時だよ(笑)。街が静かできれいなところやみんな音楽が大好きってところがスイスに似ているんだよね。だから、日本はいつ来ても居心地がいい。11月の来日ツアーも今から楽しみなんだ。

??残念なことに日本ではほとんど知られていないスイスのミュージック・シーンについて教えてもらってもいいですか?

バスティアン:以前は、スイスの人達も国内にはそんなにいいアーティストはいないと思っていたけど、僕がやっているようなフォーク/ロックのシーンは急成長している。スイス国内のみならず、国外で活躍しているアーティストも増えてきた。もちろん、ワールドワイドで成功を収めるようになるまでにはまだ時間は必要だけど、どんどん良くなってきているよ。ミュージシャン同士の交流も盛んで、僕がこうやって日本に来ることもスイスのアーティストにとっては、いい刺激になっているみたいだね。スイス人って元々、クリエイティヴなんだよ。

??じゃあ、スイスでワールドワイドの成功に一番近いのがバスティアンというわけですか?

バスティアン:ハハハ。そうなったらいいよね。それを目指して、一生懸命やってきたし、今も全力で音楽に取り組んでいる。スイスはもちろん、フランス、ドイツ、ベルギー、イタリア……いろいろな国で活動しているんだ。でも、一番のプライオリティは日本だよ。今回だって日本に来る2週間前ぐらい前から「また日本に行けるぞ!」って興奮していたんだ(笑)。日本でブレイクできたらいいね。アルバムが発売されたこともうれしいし、ツアーできることもうれしいよ。これがきっかけで、日本との関係がずっと続いていったらいいね。スイスのアーティストにとって、世界につながる扉を開く存在になれたらうれしいよ。

??ライヴ・シーンは盛んなんですか?

バスティアン:ああ。600人から2000人規模のヴェニューはいっぱいあるし、フェスティバルだって年間、300ぐらい開催されているんじゃないかな。スイスの人口が700万人だということを考えると、スイス人がどれだけ音楽好きかわかってもらえると思うよ。

??日本にいるバスティアンのファンに誰かスイスのアーティストを薦めるとしたら?

バスティアン:77 Bombay StreetとPegasusはオススメだよ。両方ともフォーク・ロック系のバンドなんだけど、最近、スイス国外でも活動している。僕も含め、この3組が今、スイスの音楽シーンをひっぱっていると言ってもいい。

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    今はその時期じゃないと判断したんだ。
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メジャー・レーベルからもオファーはあったんだけど、 今はその時期じゃないと判断したんだ。

「79 CLINTON STREET」
▲ 「79 CLINTON STREET」 MV

??10代の頃はホッケーをやりながら音楽にも夢中になっていたそうですね?

バスティアン:ホッケーは13年間やっていた。父がプロのホッケー選手なんだ。だから、ホッケーは家系みたいものかな(笑)。ギターは7歳の時に弾きはじめた。最初はフランス語で曲を書いていた。同時に250人ぐらいいる合唱団でも歌っていた。それは3年ぐらいやっていたかな。その後、学校の友人と組んだバンドを2、3個掛け持ちしながらバーや結婚式で演奏していた。英語で曲を書きはじめたのは15歳の時からだったよ。その頃好きだったのはR.E.M.、クイーン、レッド・ツェッペリン、イーグルスなんかだった。

??自然に音楽に触れることができる家庭だったんですか?

バスティアン:両親が大の音楽好きだったんだ。家でも車でも常に音楽が流れていたよ。さっき挙げたバンドはみんな両親が聴いていたんだ。父はギターが弾けたわけじゃないんだけど、ギターを使って人を楽しませることが好きだったし、母は実際、ちょっと弾けたしね。やっぱり、その2人の血が流れているんだって思うよ(笑)。

??ミューズ、ニルヴァーナ、レディオヘッドも好きだったそうですね?

バスティアン:うん。その他にもコールドプレイ、フー・ファイターズが好きだった。もちろん、アコースティック系の音楽も好きだよ。ジェイソン・ムラーズとか、ジャスティン・ノズカ、アンガス&ジュリア・ストーン、マイケル・ブーブレとかね。

??ああ、なるほど。ミューズとかニルヴァーナが好きだったと聞いて、今、バスティアンがやっている音楽と違うけどって不思議だったんですけど、アコースティック系の人達も聴いていたんですね。

バスティアン:元々はアコースティック系の音楽とかフォークとかが好きなんだ。曲を書く時は今もアコースティック・ギターを使っている。ただ、アレンジをするとき、ロックになる曲もあって、それをバンドでやると、さらにロック色濃いものになるけど、今回みたいなプロモーションの時はもっぱらアコースティック・ギターの弾き語りなんだ。クレイジーにやりたい時はニルヴァーナみたいになることもあるけどね(笑)。

??プロを目指したのは何歳の時?

バスティアン:「よし。プロになってやろう」って思ったことはないんだけど、4年前、19歳の時にリリースした「Lucky」というシングルがスイスのラジオでヒットしたことがきっかけでキャリアがスタートしたんだ。それを考えると19歳の時ってことになるのかな。

??そこから自分にできることを一つ一つやって来た結果、今、ここにいる、と?

バスティアン:そうだね。1年間で200本ライヴをやったり、フェスティバルに出演したり、もちろんいろいろな人との出会いが大きかったとは思うんだけど、その都度その都度、できることを、自分のことを信じながら精一杯やってきた結果だと思う。僕はメジャー・レーベルと契約しているわけじゃなくて、インディでやっているからね。自分達のチームで計画を立てながらやっている。そういう意味ではファミリー・プロジェクトみたいな感じなんだ。だから成功を収めれば、全員が喜べるし、うまくいかなければ、全員で改善策を考える。今、音楽ビジネスはどんどん変わっているけど、こういうやりかたのほうが、自分がボスでいられるからいいと思うんだ。

??そうか。うっかりしていたけど、インディなんですね。インディのアーティストでNo.1ヒットってすごいことなんじゃないですか?

バスティアン:(ガッツポーズ)ヒット・チャートを見たとき、Phonag(バスティアンの所属レーベル)の下はソニー、ソニー、ユニバーサル、ワーナーってメジャー・レーベルばかりだったんだから、その眺めは壮観だった(笑)。それが2作目のアルバムでできたのがうれしかった。大抵は1作目でバーンと売れて、2作目は苦戦することが多いだろ。だから2倍うれしくて、シャンパンのボトルを何本も空けたよ(笑)。あの時は最高の気分だった。もちろん、メジャーが悪いとは思わない。でも、プライオリティ・アーティストになれればいいけど、そうじゃないと、だろ? メジャー・レーベルからもオファーはあったんだけど、今はその時期じゃないと判断したんだ。

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  2. 実はもう3作目のアルバムが作れるぐらい曲はあるんだ。
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実はもう3作目のアルバムが作れるぐらい曲はあるんだ。

「FOLLOW THE WINDY」
▲ 「FOLLOW THE WIND」 MV

??では、スイスでNo.1ヒットになったその『トゥー・オールド・トゥー・ダイ・ヤング』について聞かせてください。まず確認したいのが、バスティアンのホームページには、そのアルバムはジャミロクワイのキーボード奏者だったトビー・スミスのディレクションによって作られたと書いてありましたが、実際はバスティアンによるセルフ・プロデュースですよね?

バスティアン:ああ、それは彼のスタジオを使ったっていうことなんだよ。アルバムはイギリスのブラックリーにあるスタジオで素晴らしいミュージシャン達と完成させたんだ。レコーディングは僕がまず、この曲のキーはこれで、テンポはこれでと指示してから、ほぼライヴに近い形でレコーディングした。バンドが演奏している間、僕はミキサー卓でミュージシャンからのいろいろなアイディアをひとつにまとめ、曲を形にしていった。エンジニアのトム・フラーもいろいろなアイディアを出してくれたよ。ミュージシャンと話をしながら意見を聞いて、決断することがプロデューサーとしての僕の役割だった。だからこそ、リアルなサウンドになっていると思うんだ。

??今回、2作目のアルバムを作るにあたってはどんな作品にしたいと考えていたんですか?

バスティアン:そうだな。前作とはいろいろな意味で違うものにしたかったんだ。前作は最初、ドラムとベースを録って、次にキーボードを録って、ギターを録ってというふうに段階を踏んでレコーディングしたんだ。しかも、スタジオを変えながらだったからあまり集中することができなかった。今回はスタジオで1日12時間、みっちりレコーディングした。田舎のスタジオだから、他にできることと言えば、卓球ぐらいだった(笑)。近所にはバーもないから酔っ払うこともできない。そういう環境だからがっと集中することができた。サウンド面で言えば、さっきも言ったように、ほぼライヴ・レコーディングだったからオーバーダブもしていない。「Give Me Your Heart」という曲ではクリックさえ使っていないんだ。実は最初は使ったんだけど、エモーショナルな曲だから合わなかっただ。じゃあ、いっそのことライヴでやろうってギター、ヴォーカルも含め、全部がワンテイクなんだ。そういうふうに録ったほうが実際、ライヴでも表現できるからね。それが前作との一番の差だね。歌詞も前作を作った時は、まだティーンエイジャーだったからその頃にありがちな“俺はこうだ”“俺はこう思っている”みたいな曲ばかりだったけど、その後、ファンから自分も同じように思っていましたという反応をもらって、そうか、僕だけじゃなかったんだと気づいたから、今回は自分の周りにも目を向けてみたよ。

??レコーディングにはスティングやマドンナと共演歴があるファーガス・ジェランドをはじめ、ベテラン・ミュージシャンが参加していますが、バスティアンが選んだんですか?

バスティアン:ライヴのメンバーは10年来の友人達ばかりなんだけど、レコーディング時間が限られていることを考えると、やっぱり経験豊富なセッション・ミュージシャンを起用したほうがいいと考えたんだ。とは言え、全然知らない人達ばかりではないんだよ。ドラムのファーガスは前作でも叩いているんだけど、元々、僕のマネージャーの元カノのバンドで叩いていて、とあるフェスで会ったとき、デモを渡したことがきっかけで知りあいになったんだ。ポウジーズのメンバーでR.E.M.のサポート・メンバーとしても知られるケン・ストリングフェローもマネージャーが昔からの知り合いで、4年前、パリで食事をしながら紹介してもらったんだ。彼のすごいところは、彼がたった一言、アイディアをつけ加えるだけで、曲が劇的に変わるんだ。参加ミュージシャンはみんなベテランばかりだ。二十歳そこそこの若造からあれこれ指図されたら、いい気持ちはしないだろ? でも、前からの知り合いがいてくれたおかげでうまくいったよ。

??自分によっぽど自信とはっきりしたヴィジョンがないと、まとめられないですよね?

バスティアン:たっぷり時間があったら、あれこれ考えていたかもしれないけど、スタジオの時間が限られていたから、逆に即決しなきゃいけなかった。正直、初日はやりづらいと思ったよ。だから2日目からは帽子とサングラス、それにジャケットを着て、別のキャラクターになりきって、自分はプロデューサーなんだって言い聞かせたんだよ(笑)。

??収録曲は前作発表後に作ったものなんですか?

バスティアン:「You’re The One」と「Bewitched」は前作を作っている最中に書いたんだ。それ以外は前作発表後に書いたものばかりだよ。ツアー中でも書けるタイプだから、実はもう3作目のアルバムが作れるぐらい曲はあるんだ。

??それは頼もしいですね。全曲が自信作だと思うけど、特に気に入っている曲ってありますか?

バスティアン:自分にとっては、どれも大事な曲だけど、「Prime」って曲はフランスのテレビに出演したとき、けっこうイヤな経験をして、「自分は何をやっているんだ?!」「自分は何者なんだろう?!」って悩みながら作ったものなんだ。だから、この曲を歌うたび、その時のことを思い出して、いまだに鳥肌が立つ。「Kids Off The Streets」は複雑な曲なんだけど、5分で書けた。スイスを訪れたネパールのストリートの子供達に会ったとき、 忘れがちだけど、自分はどれだけ恵まれているんだろうって感じた気持ちを曲にしたんだ。 ライヴでとにかく盛り上がるという意味で好きなのは「79 Clinton Street」「Follow The Wind」「Dirty Thirty」。ライヴの終盤やることが多いんだけど、この3曲は絶対、盛り上がる(笑)。

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    できるだけお客さんと交流できたらいいな。
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できるだけお客さんと交流できたらいいな。

「DIRTY THIRTY」
▲ 「DIRTY THIRTY」 MV

??「79 Clinton Street」はマンハッタンの住所ですよね?

バスティアン:そう。ロウワー・イーストサイドのね。前に5日間、バンドのメンバーとニューヨークに滞在していた時のフラットの住所なんだ。歌詞はシリアスなことを歌っているわけじゃない。パーティーで女の子と出会って、みんなで楽しんでいる様子を、そのままボブ・ディラン風に描写したんだ。サビの「Take my hand」ってフレーズは最初、シンボリックな意味で歌っているんだけど、曲が進むにつれ、文字通りの意味になるところが自分でもおもしろいと思う。未来のことよりも今、起こっていることが大切なんだってことや、人と人がつながることを歌っているんだ。

??収録曲はそれぞれにいろいろなアレンジになっているけど、ピアノ・バラードにするのかロック・ナンバーにするのか、そういうアレンジは曲を作ったときすでに頭の中でできあがっているんですか?

バスティアン:曲ごとに違うんだけどね。その時の感じ方だから、なぜそういうふうになるのかはわからない。ただ、アルバムとして考えたとき、全部同じような曲じゃおもしろくない。だから、一貫性がありながらもいろいろなアレンジにしたかったんだ。「79 Clinton Street」は最初、歌詞があったんだけど、そこにメロディをつけたとき、これはストレートなロックだと思ったんだ。それは言葉からエネルギーを感じたからなんだけど、でも、ルールがあるわけじゃないから、いずれピアノ・バラードにしてみてもおもしろいと思う。

??最後に11月の来日公演について教えてください。日本のファンはどんなライヴを期待していったらいいですか? 

バスティアン:2月に来たとき、日本のお客さんがすごくクールだってことはわかったよ。だから、最初はフォーキーに始めて、その後、ソフト・ロック路線やアコースティック・セットがあって、最後はロックで盛り上げるっていうのがいつもの流れなんだけど、ブルース・スプリングスティーンみたいにその時のノリでセットリストを変えてみてもいいかもしれないね。今度はバンドで来るし、曲はアルバム2枚分あるからいろいろなやりかたができると思うんだ。日本語のMCも交えながら、できるだけお客さんと交流できたらいいな。もちろん、音楽が中心にあるんだけど、楽しめるライヴにしたいと思っている。名古屋と大阪は初めてだからすごく楽しみなんだ。今から待ちきれないよ。

BASTIAN BAKERの来日公演(東京)に5組10名様をご招待!

11月19日(水)
会場:渋谷duo MUSIC EXCHANGE
OPEN: 18:00 START: 19:00

<応募方法>
1. ビルボードジャパン公式ツイッターアカウント“@Billboard_JAPAN”をフォロー
2. 本特集をリツイート

<受付期間>
2014年10月29日(水)18:00 ~ 11月10日(月)23:59まで

※当選者様にはビルボードジャパン公式アカウントよりDMでご連絡後、ご住所をお伺い致します。頂いたご住所宛にチケットをお送り致しますので、当日お持ちください。チケットをお持ちでない場合は、ご入場をお断りさせていただきますのでご了承ください。
※当選時にビルボードジャパン公式アカウントをフォローしていない場合は無効となりますのでご注意下さい。

バスティアン・ベイカー「トゥー・オールド・トゥー・ダイ・ヤング ジャパン・エディション」

トゥー・オールド・トゥー・ダイ・ヤング ジャパン・エディション

2014/09/24 RELEASE
HUCD-10169 ¥ 2,547(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.79 クリントン・ストリート
  2. 02.ユア・ザ・ワン
  3. 03.フォロー・ザ・ウィンド
  4. 04.ビーウィッチト・フィーチャリング・ルートワーズ
  5. 05.ワン・ラスト・タイム
  6. 06.ダーティー・サーティー
  7. 07.キッズ・オフ・ザ・ストリーツ
  8. 08.ネヴァー・イン・ユア・タウン
  9. 09.プライム
  10. 10.イヤリングス・オン・ア・テーブル
  11. 11.ソング・フォー・イー・ヴィー
  12. 12.ギブ・ミー・ユア・ハート
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