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Ryu『静かに恋をして』インタビュー
2003~4年に日本でも空前の大ヒットを記録したドラマ『冬のソナタ』で、主題歌「最初から今まで(さいしょからいままで)」や挿入歌「My Memory」を歌ったRyuが、2014年で日本でのCDデビューから10周年を迎えた。 その記念として、約8年ぶりのオリジナルアルバム『静かに恋をして』をリリースする彼に、K-POPブームが起きる以前から日本で活動していた話から、日韓の間に起きた様々な潮流。近年楽曲提供したSKE48をはじめとする日本のアイドルや、このたび待望のコラボを実現させた玉置浩二についてまで。幅広く応えてもらった。
『冬のソナタ』大ヒットから10年。当時を振り返って
--今年で日本でのCDデビュー10周年という節目を迎えました。当時はまだK-POPという言葉もほとんど浸透しておらず、日本に来て歌う韓国人ミュージシャンもあまりいませんでした。
Ryu:いなかったですよ! チョー・ヨンピルさんの「釜山港へ帰れ」が日本で大ヒットしたというのをニュースで知る程度でした。僕は2003年11月末くらいに生まれて初めて日本に来て、初めて日本で歌いましたけれども、それからもの凄い人の中でインストアイベントをやらせてもらったり、紅白に出させてもらったりと、すべてが本当にいきなりすぎて……(笑)。 “すみません”も知らない状況で来て、人生を変えなきゃいけないという負担プラス、毎日新しい文化、新しい言葉、新しい人たちに会っていたので、自分がどこにいて何をしているのか、ちゃんと実感できていなかったかもしれないですね。--しかもRyuさんは2004年で30歳という節目でもありましたよね。
Ryu:僕は2000年に韓国でデビューアルバムをリリースしたんですけれども上手くいかなくて、翌年から映画の主題歌を作らせていただいたりしていて、それで偶然『冬のソナタ』のOSTを歌うことになったんです。ドラマがヒットして韓国ではどこに行っても曲が流れるようになっていたんですけど、代わりに自分のアルバムリリースが後回しになってしまったりと、必ずしも歌手として成功していた訳ではないんですよ。 ただ、そこから他のドラマのOSTに作家として参加させていただいたりと、作曲家としての道は開き始めてきた。『冬のソナタ』が韓国で放送終了した直後あたりには、プロモーションツアーとして香港や台湾に行っていたんですけど、個人的には「作家として生きていこうかな」とも思ってた時期なんですよね。だからその直後に「日本で凄い人気になった」という話になった時は、嬉しい半面、戸惑いもあって。でも、それならすぐに日本へ行くべきだって話になり、30歳を超えた新人歌手として日本での活動をスタートさせていただきました。--当時は韓流ブームと呼ばれ、もの凄い人気でしたね。
Ryu:日本のスケジュールだけでパンパンでしたね。あれから10年、日本に住んでいるマンションがあって、色んな人と交流があって、スタッフが周囲にいてくれる。人生の4分の1を日本で過ごさせていただいて、「なんて運命なんだろう」って感謝の気持ちを強く感じます。韓流~K-POPムーブメントがもたらせたもの
--そして日本の音楽シーンでは、『冬ソナ』大ヒットから4~5年経って、K-POPムーブメントが起こりました。
Ryu:僕は全然意図していなかった、一番ラッキーなアーティストだと思います(笑)。僕が日本に来た当時はK-POPブームというのはなかったし、行くことすら難しい状況でしたから。今は韓国から日本にやってくるアーティストはいっぱいいますが、私は日本に滞在して、スーパーで食べ物を買ってきて料理をして(笑)、日本で生活をしながら活動している。そういう意味では特別なタイプかもしれません。 今は日韓関係が微妙になってきてしまったかもしれませんが、それでも楽しんでいる人は楽しんでいるし、韓国から日本に旅行に来る人も多い。韓国の空港に行けば、日本人観光客もたくさんいますよ。大きな所から見るんじゃなくて一般の交流、政治目的じゃなく“お互いに興味がある”っていう交流……。この前も日韓交流のフェスティバルにボランティアで歌ってきたんですけど、たくさんのお客さんがいらっしゃってくれました。そういう人たちはどういうニュースが流れていても、区別がつくんですよね。--それこそが政治にはない文化の醍醐味でもありますよね。
Ryu:私もそうだったんですけど、「すいません、すいません」ってよく他人に謝る日本人の文化を、マナーが良くてオシャレだと感じている韓国人は多いですよ。僕はそこからJ-POPを聴くようになって、安全地帯のCDを手に入れたりして。だから昔は「日韓関係ってどうしてこんなに悪いんだろう」ってイライラしてたし、もっと仲良くなって欲しいって気持ちが強すぎてストレスになってしまっていた時期もありました。 でも、僕のファンの人の中によく手紙を送ってくれる人がいるんですけど、そういう人たちは固定概念を持たずに人と人との繋がりを大事にしていて、お互いの文化を楽しんでいる。それを応援できたらいいなって思うし、そういうブームがあったからこそ一つのジャンルになって、今は質の良い音楽だけが残っているとも考えられます。ブームがなくなったからといって、まったく民間交流がなくなる訳でもないですよね。 付き合ったばかりの友人よりも、長年の中でケンカもしたし仲直りした時期もあった友人の方が深い友情ができますよね。きっと知らない内に一般の人たちの中から生まれてくると思います。Music Video
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Interviewer:杉岡祐樹
話題はK-POPからPSY、SKE48から両国のアイドルへ
--ここ最近の韓国の音楽シーンは、セクシー路線のガールズポップが流行っていますよね。
Ryu:韓国は、例えば4~5人組のアイドルグループが流行ると、似たようなグループが登場しすぎるんですよ!(笑)--それは日本でもよくあることですよ(笑)。
Ryu:似たようなグループがどんどん出てくるんだけど、みんなそこそこ人気が出ているっていうことは、国民の特徴として新しい物に興味があるのかもしれないですね。やっぱり日本のようにロック好きならロック、アイドルならアイドルって色んなジャンルのアーティストが出てきて欲しいし、韓国のファンの人たちもアイドルに疲れちゃってる所はあると思うんですよね。--また、『冬ソナ』が日本のシーンを変えた存在だとすれば、PSYさんの『江南スタイル』は世界を変えました。
Ryu:PSYくんとは一時、同じ事務所にいたんですけど、独特の人ですよね。怖いもの知らずなのに礼儀正しくて、自由人でもある。音楽で遊んでいる所もあるような気がして、そういう人はなかなかいないですよね、びっくりしました!--先ほどアイドルの話がありましたが、Ryuさんは今年の春、SKE48に楽曲提供(※1)しました。昨今の日本のアイドルブームをどう見ていますか?
Ryu:韓国のアイドルはセクシーを売りにしていますが、日本のアイドルは子どものようなかわいさ、若さを武器にしていますよね。それに応援しているお兄さんたちが「ゥオオオオオオオ!」って凄いです(笑)。昔からモーニング娘。さんとかの存在は知っていたんですけど、知らない間にすごいアーティストができてきたなって思いましたね。 やっぱりアイドルって世界中で通じるじゃないですか。かわいいし明るいし、世界中に元気を与えられる存在だと思いますよ。AKB48さんやSKE48さんが出すぎて、他のアーティストがテレビに出られないなんて言われてますけど、それはいつの時代も一緒ですし。
2014/3/19 on sale 14th.Single GALAXY of DREAMS MV(special edit ver.)
--確かに僕も、“サムスンだからRyuさん”と勝手に確信してました(笑)。
Ryu:SKE48さんは大好きですし、本当にダンスもかっこいい。だからコンペを知って、自分の曲以上にがんばって書きました。大人気のグループですから、何千人もの競争になりますけど、SKE48さんのファンからしてみれば「これって『冬ソナ』のRyuだよね? まったく雰囲気が違くない?」ってなるじゃないですか。そこから何人かでも作家としての私を好きになってもらえれば、自分の音楽も聴いてもらえるかもしれない。作家としての本能というか、自分の音楽を他人に歌ってもらうことも凄く好きなんですよ。10周年を記念する新作アルバム『静かに恋をして』
--現在もチャートでは上位を占めているアイドルですが、最近、徐々にパフォーマンスの質が求められ始めたとも感じています。ですので、Ryuさんがこのたびリリースしたアルバム『静かに恋をして』を初めて聴いた時、丁寧に創り込まれたサウンドの中で、歌の力を存分に堪能できる作品だったことに感動しました。
Ryu:ありがとうございます! 10年を記念する、8年ぶりのオリジナルアルバムって気づいた時に、ひょっとするともうCDリリースはできないかもしれないからこそがんばらなきゃって大きな負担を感じてしまって、一時はまぶたの痙攣が続いてしまったりもしていたんです。でも、徐々にアルバムがリアルになっていくにつれて落ち着いて、10年を記念するアルバムだからこそ力を抜いて、あまり熱唱しすぎずにメロディを活かせる音楽を伝えたいって気持ちに変わっていきましたね。--タイトル曲のM-01「静かに恋をして」は、Ryuさん自身が日本語で作詞した初めての楽曲です。
Ryu:私は(麻布)十番を歩くのが大好きなんですけど、コーヒーショップに座って街を眺めていると、若い恋人たちがいっぱいいるんですよね。日本のカップルには韓国のカップルとは違う魅力があって、静かに恋をしているイメージなんです。人の群れの中で静かに歩いているというか、静かで小さな2人なんですけど、その世界観はとても大きいんだろうなって。だから「あなたたちはこんな綺麗な姿で恋してましたね」っていうプレゼントの意味合いもあるんですよ。--日本語と韓国語の違いはどういった所にあると思いますか?
Ryu:文法的にはほとんど一緒なのですが、文化や言葉のニュアンスが違いますから、日本語独特のイメージはとても新鮮ですね。また、僕は韓国で歌詞を書く時は自然と韓国の考え方になる。日本では日本の考え方になるから、M-09「Sunlight」はAメロが日本、A'は韓国みたいになって悩んでしまって、松井五郎さんにお願いしました。 日本語には、小鳥、小舟、小腹が空いたとか(笑)、”小”が付く言葉が多くて、それがかわいいな?!って思うんですけど、日本の方には自然なことなんですよね。この10年で自分の中に保存してきたイメージを、自分なりに言葉にしたのが「静かに恋をして」ですね。Music Video
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Interviewer:杉岡祐樹
「実はこの楽曲は予告編なんですよ」
--M-10「I'd like to dance」は、スモーキーなサウンドが心地よいスロウバラードです。昨年には【JAZZ流 Live Selection】(※2)で披露していたカバー曲を収録したアルバム『Love note』をリリースしましたが、そうした影響が出た1曲だと感じました。
Ryu:そうだと思いますね。SKE48さんに提供した曲は、何も考えず本能に寄って書いたんですけど、ダフト・パンクなどのアナログっぽくなっているダンスミュージックとか、イギリス系のちょっとフュージョンになっているポップスとか、面白いサウンドが大好きなんですよ。 それでエレピとかを使って面白い音を作ったりして周囲に聴かせていたら、「いいんじゃないの?」って言ってもらって。それなら歌詞をこう繋げてアルバムの最後の1曲にしたら、他との兼ね合いもそこまで変じゃないかもしれないってことで完成したのが「I'd like to dance」です。--また、この楽曲ってEDM系のアレンジにも寄せられる楽曲ですよね。
Ryu:お、すごいですね! 実はこの楽曲は次の予告編になっているんですよ! ……言っていいのか分からないですけど(笑)。--こうした楽曲もありながら、玉置浩二さんが作詞作曲された珠玉のバラード「Winter Leaf ?君はもういない」も収録されています。
Ryu:もう、すごいプレッシャーがありました。だって玉置さんからいただいたデモは、仮歌が仮歌のレベルじゃないんですよ!(笑) 玉置さんは音楽をしている人がファンになるしかないです。ボーカリストとして天才ですし、作る曲も凄い。もの凄い切磋琢磨をしながら、もの凄い表現をする。自己プロデュース能力も凄いですし、我慢する時、一気に開放する時の振り幅も凄い。本当に尊敬するアーティストです。玉置浩二 作詞作曲の名バラード「Winter Leaf ~君はもういない」
Ryu:玉置さんからは「ここはこう歌った方がいいんじゃない?」ってアドバイスをいただいたりもしたんですけど、僕自身の感覚と違った点が一箇所だけあって、もの凄く礼儀正しく「僕はこうこうこうだからこうした方がいいと思いました。でも、どうしてもと仰るなら直します」って連絡をさせていただきました。そのやりとりが続いて、「それでいいよ」。うわー、ありがとうございます!って本当に感謝しています。--ちなみにこの曲のタイトルは玉置さんが付けたんですか?
Ryu:そうですよ。--タイトルに“Winter”を入れる所が本当に見事ですよね。
Ryu:「この曲には『冬のソナタ』のイメージがあるから」っていうプロの作家さんのようなお気遣いもありますし、玉置さんは北海道出身ということで北風や海のイメージも見事で、本当に嬉しかったです。--他にも「小部屋」や「儚い唇」のように特徴のあるサウンドもと、バラードを中心に様々な色合いを楽しめる作品になりました。そして今後についてですが、先ほどお話しされていたように、大きな変化を迎えることになりそう?
Ryu:それをわざとらしくやるのはどうかと思うんですけど、今回のアルバムを準備しながらいつもと違う姿勢というか、これからは成功を意識しすぎずに価値のある音楽をやっていきたい。ファンの方が何人だとしても、自分が満足できるようなことを誠実にやっていきたいんです。ただ、「I'd like to dance」のジャンルをより特化させた音楽を、いきなり私が発表することは、ある意味、暴力かなって意識もあるんですよね(笑)。 作曲家としてがんばってみようと思っていた理由の一つとして、そういう部分を発散できる場所、違う自分も認めてもらいたいっていう気持ちもありますし、これからも面白いアーティストさんがいたら楽曲を提供してみたいです。実は8年くらいキープしている、ブラックミュージックの男女デュエット曲があるんですよ。自分ではけっこう自信があるんですけど、できたら凄いアーティストに歌って欲しい。僕がもうちょっと売れたら、もの凄い女性ボーカリストに来てもらって、一緒に歌いたいんです(笑)。【10th anniversary Ryuの韓流ドラマコンサート】
10月4日(土) 東京 きゅりあん(品川区立総合区民会館)
OPEN 14:30 / START 15:00
10月8日(水) メルパルク大阪
OPEN 14:30 / START 15:00
出演:Ryu、キム・テフン(OST「復活」)、URs(ユー・ジソン)、バラダン ゲストミュージシャン:増崎孝司(DIMENSION)
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