Special
プラニメ『Plastic 2 Mercy』インタビュー
プラニメ:カミヤサキ(ex.BiS)ミズタマリ(ex.いずこねこ)
不安でも 蹴り上げて飛べ baby another sky
日本のアイドルシーンにいくつもの衝撃と喪失感を残し、嵐のように過ぎ去ってしまったBiSといずこねこの物語。それを見守ってきたほとんどの人が言う。プラニメにあれは超えられない。
バカにするな。そんなことは百も承知の上で、それでも超えようとしているんだ、2人は。意識したくなくても意識してしまう過去と対峙しながら、カミヤサキとミズタマリは“概念”や“現象”や“大人の力”という不確かなものでなく、自らの存在を懸けて戦っている。
◎ミズタマリ(ex.いずこねこ)
周りの反応で「終わる」っていうのが決まったんです。
--自撮りですか?
ミズタマリ:このお店、綺麗だから撮っておこうと思って。でも私、自撮り苦手なんですよ。--アイドルとしては致命傷ですね(笑)。
ミズタマリ:そうなんですよー。だからツイッターにあんまり自撮りを上げないんです。ダメですよね。でもたまに「どうだ!」みたいな写真が撮れるんですよ(笑)。20枚ぐらい撮らないとその奇跡みたいな写真が撮れないんですけど。で、そっからまた綺麗に加工して……。だから取材の写真とか基本的に見たくないです。私に選ばせてくれないから。アー写(アーティスト写真/宣材写真)とかも「あー……」って気分で見てる。あと、あざといのも嫌いなんですよ。いかにも「可愛いでしょ?」的なあざとさが。--向いてないなー、この仕事(笑)。
ミズタマリ:私がやってもなんか古くなるんですよ(笑)。--なんでアイドルになったんですか?
ミズタマリ:アイドルになりたいと思ってなかったんですよ。最初はバンドをやっていて。ギターとかバイオリンとかピアノとか楽器が好きで。でもそのバンドにはボーカルがいたから、私も歌いたかったんですけど言えなくて。で、ある日、地下アイドルイベント。のど自慢みたいなしょうもないイベントなんですけど、それに友達から誘われて歌ったら「あ、ステージで歌うの、クソ楽しいやん!」ってなって、アイドルになりたいというよりもステージで歌いたくなった。--でもアイドルになったのは?
ミズタマリ:そのときにサクケン(サクライケンタ/元いずこねこプロデューサー)が仮歌の仕事をやってくれる人を探してて。そのイベントにサクケンが曲を作ったアイドルも出てて、声を掛けてくれて「仮歌やってくれません?」って言われたんです。1年ぐらいやってましたよ。「歌でバイトできるんだ、お金もらえるんだ!」と思って。同時にフリーでイベントにも出てたんですけど、オリジナル曲もないし、楽器もないからアイドルイベントしか出れなくてアイドルになってました。で、初めてオリジナル曲をもらって、赤坂BLITZの復興支援イベントで河村隆一さんと共演したんですよ!--凄いじゃないですか。
ミズタマリ:それで「ここまで来たらもう行かなきゃ!」「私、この世界で頑張ろう!」みたいな。だからアイドルは流れです(笑)。アイドルなんてミニモニ。ぐらいしか知らなかった。でもアイドルの仮歌やってるときに「どんな娘がこんな可愛いブリブリな曲歌うんだろう?」と思って観に行ったら、ちょっと感動しちゃったんですよ。それがしず風&絆~KIZUNA~ちゃん。--プラニメとしてはT-Palette Recordsの先輩ですね。
ミズタマリ:「アイドルだけど格好良いんだなぁ」って。でも他にもいろんな地下アイドルとか観てたら「私のほうが絶対パフォーマンスできるし、もっと盛り上げられるし、歌も絶対あの娘たちよりは上手くなれる」と思って。なんか「こんなんでキャーキャー言われてんだ!?」って悔しくなって。それで「私がやってやる」みたいな。「アイドルなんかクソ食らえ!」から始まった(笑)。それでしょこたん(中川翔子)とか、まのえり(真野恵里菜)ちゃんとか、小桃音まいちゃんとかソロアイドルをいっぱい観て、アイドルになりつつ「アイドルよりももっと格好良くライブできるようになったらいいな」と思って勉強しました。ソロでいろいろ変えてやろうと思って。--それがいずこねこだったと。
ミズタマリ:そう!--いずこねこってなんで終わっちゃったんですか?
ミズタマリ:なんで終わっちゃった? とりあえず終わった理由がいっぱいあり過ぎるんですよね。一番の大きい理由は、仕事量が抱えきれなくなった。サクライさんは拘りが凄いんですよ。曲は誰にもいじられたくない、歌詞も俺が書く、仕事の依頼も俺が選びたい、どういう風に活動していくか全部見ていたい、グッズも俺が全部やりたい、デザインもしたい……もう拘りがすっごい。本当に天才だし、クリエイティブな人だし、プライドも高いし、拘りも凄いから仕事量が抱えられなくなっちゃって。私がここまで来ると誰も思ってなかったし。--サクライさんが抱えきれなくなったと。
ミズタマリ:そう。サクライさんは元々音楽事務所で音楽作ってるだけの人なんですよ。プロデュースできないんです。ただ、私がすごくセミプロデュースが出来ちゃったからここまで来れたんですよ、2人で。最初の頃は3,4人ぐらいスタッフいましたよ。仲間内で集まってチームを組んで。けど、いざ始まったら徐々に離れていっちゃって。サクライさんの拘りが強すぎるから。「ああしてほしい、こうしてほしい」って注文多すぎるし、みんなそれを抱えきれないし。小さい事務所で、しかも最初はフリーの団体だから。それで2人になって、また新しい人が入っても結局サクライさんの性格に耐えられないから、どんどん離れていっちゃうんです。でも私はその性格にも「天才だから。この人がいないと私は動かないから」ってずっとついてきたし、尊敬しているところもあるから進められていたんですけど、3年という年を重ねてきて、いずこねこもイベントのトリとか務められるようになって、注目も浴びて、そうなるとプレッシャーもあるし、サクライさんが作る曲への期待値もどんどん上がるじゃないですか。「次のサクライさんの新曲、すごく楽しみにしてます。期待してます」その言葉が重みなんですよ。サクライさんにとっては。--苦しくなってしまったんですね。
ミズタマリ:「いずこねこの曲は、俺が作りたい曲を作る。で、マリちゃんが好きなようにパフォーマンスする。自分のやりたいようにやる」って言っていずこねこは始まったのに、どんどんそれが重みになってくるんですよ。私もそうだけど。振り付けも自分でやってたし、忙しくて歌やダンスの練習ができなくて悔しい想いもするし。で、サクライさんも「もう無理だ。もう詞が出せない」みたいな。そしたら止まっちゃうしかない。それで「もう僕辞める。あとはマリちゃんに任せた」みたいな連絡が定期的にあって。それをツイッターや表に出さないようにしていたのは私たち。だけどそれを私たちも放棄しちゃったから書いちゃっただけ。書くか書かないかの差だったんですよ。でも書いちゃったから「あ、今回は本当に書いちゃった」って。書かなかったら今も続けてたと思う。--どんなことが書かれていたんですか?
ミズタマリ:もう僕はいずこねこを辞めます。みんなが僕のことを嫌いになって離れていきました。そんな内容です。だからケンカの最中に何も解決していないのに自分がワァー!ってなってることをそのまま書いちゃっただけなんです。本当にそれだけなの。で、サクライさんの言葉しかネットに出ないからいろんなことも書かれたし、間違った情報ばっかり流れて、私もすごくツラかったし。何が一番ツラかったって、サクライさんの発信だけで、みんなが勝手な想像でバァーって書いて盛り上げちゃって、そこでスッと止めておいてくれたら良かったのに何千リツイートもされて、ヤフーニュース載って、そこまで大事にされたから出来なくなっちゃったんですよ……。もしそれで「あ、またサクライさんがこんなこと書いてるわぁー」「サクライさん、また病気悪化しちゃったんだなぁ。落ち着いたらいいなぁ」ぐらいの心の広さでみんなが見てくれたらいいけど、そんなことは絶対にないから。見てる人は何千人もいるし、その全員が味方してくれる訳じゃないから。周りの反応で「終わる」っていうのが決まったんです。--要するに収拾できなくなった?
ミズタマリ:そう。そっから私が何もそのことに対して発信しなかったのは、もう何を言っても情報が二転三転して間違った形で周りに広がっていくだけだし、それが嫌だったから。もうここで抑えておきたいから、私はあの事件のあとに何も言わなかった。--いずこねこ終了が決まっても活動は8月の終わりまで続きましたよね。どんな心境で動いていたんですか?
※いずこねこ/nostalgie el (2nd onemanDVD 「猫と煙と赤いカーテン」in 東京キネマ倶楽部より)
--サクライケンタはミズタマリにとってどんな存在だったんだろう?
ミズタマリ:なんか……親みたいな。生みの親だし。で、活動しているときはめっちゃ仲良かったんですよ。病気のことがあっても、性格がどれだけ悪くっても(笑)全然一緒に活動できていたから、兄弟みたいな。お兄ちゃんみたいな存在であり、親であり、家族みたい。本当に……チームだったんですよね。デザインやってくれていた人とかも、結局離れちゃったけど、お母さんみたいに思ってたし、お姉ちゃんみたいに思ってたし。フリー団体で始めたから契約結んでやってる訳じゃないし、自分たちで「やりたい!」と思って集まったチームだから、みんなのこと好きでいたんです。--そういう意味では、いずこねこは“解散”という表現も間違っていないと思うんですが、ミズタマリが元BiSのカミヤサキとユニット組んで、サクライケンタは元BiSのコショージメグミと組んで。チームいずこねこ、どれだけBiS好きなんですか?
ミズタマリ:それは本当に偶然です(笑)。コショージ本人からも「発表の2日前に決まった」って聞いたし、サクライさんからじゃなくてコショージから言った……まぁその辺はよく分かんないんですけど、私も「BiSに入ろう」なんて思ったこともないし、ただBiSが好き。ただイチファンとしていただけで。ライブもいっぱい行ってたし、ミッチェル(元BiSメンバー)とか仲良くしてくれたし、ファンとしてプーちゃん(プールイ/元BiSリーダー/現LUI◇FRONTiC◆松隈JAPAN)のこと大好きだったけど、BiSと何かしようなんて思っていなかった。だからサキちゃんから声かけられなかったら、私は今何していたか分かんない。またギターを触ったりはしていたかもしれないけど、もう一回オーディション受けることもないし、ソロでメジャーに行こうとも思わなかったし、本当にゆるくバンドとかをやってたと思う。--では、アイドルを辞めるという選択肢もあったと。
ミズタマリ:あった。いずこねこ大好きだし、いずこねことしての自分が大好きだから続けたいとも思ったけど、でもいずこねこのせいで嫌いになっちゃったところもあって。だからよく分かんなかったんですよ、最後のほうは。今も「いずこねこ続けたい?」って言われたら続けたくないし、でもいずこねこ大好きだから「また歌いたい?」って言われたら歌いたい。でももう歌えないから、それはしょうがない。そんな感じ。
※映画『世界の終わりのいずこねこ』特報!!!!!!!!!!!!!
--そう考えるとBiSが解散していなかったら、カミヤサキがアイドルを続けようと思ってなかったら、ミズタマリがアイドルとしてステージに立つことはなかったかもしれないんですね。
ミズタマリ:なかったと思います。たまたまBiSさんが解散したから、サキちゃんに声かけられて今がある。BiSが続いていたら、まだいずこねこは映画『世界の終わりのいずこねこ』があるから、それで関係者しながらBiS通ってたんじゃないかな(笑)。- < Prev
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リリース情報
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄|Photo:外林健太
Plastic 2 Mercy
2014/09/30 RELEASE
TPRC-105 ¥ 1,100(税込)
Disc01
- 01.Plastic 2 Mercy
- 02.too misery
- 03.Plastic 2 Mercy(inst)
- 04.too misery(inst)
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