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OAU『FOLLOW THE DREAM』 徹底取材:マーティン・ジョンソンの知られざる半生(後編)

マーティン・ジョンソン インタビュー

 9月3日に約5年ぶりとなるフルアルバム『FOLLOW THE DREAM』をリリースした、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND。

 アルバムのリリースと9月13日、14日に行われる彼ら主催のキャンプ・フェス『NEW ACOUSTIC CAMP 2014』の開催を記念し、TOSHI-LOW(BRAHMAN)と並ぶ、このバンドのもう1人のフロントマン、マーティン・ジョンソンの知られざる半生を徹底的に掘り下げる独占取材を敢行。来日までのエピソードを秘蔵写真とともに紹介した前編に続き、来日後の音楽活動やTOSHI-LOWとの出会い、OAUと『NEW ACOUSTIC CAMP』への思いが語られた後編を公開!

徹底取材:マーティン・ジョンソンの知られざる半生(前編)はこちら>>>

二十歳で子供が生まれて、はじめて自分で歌を作った

――2002年、来日から7か月。来日のきっかけとなったテーマパークとの契約期間が終わった、その後は?

マーティン:決められた7か月が終了したら、もう7か月の延長を申し入れられたんだよね。その頃には、もう「ビールください!」とか、「かわいいね!」とか言えるようになっていたし、あと、契約延長は父親は声を掛けられなくて俺だけ。笑 だからあと7か月、やります!って。

――その頃、すでに日本での生活にはだいぶ慣れていたということですね。

マーティン:そうだね。海外に行くこと自体はじめてじゃなかったから、その国に行ったらその国のルールに従うのは当たり前のことだと最初から思ってた。だから家の中で靴を脱ぐのも、まぁ面倒くさいけど、「この国のルールなら、分かった!OK!」「電車で喋らない?うん、分かった!OK!」って。仕事仲間のなかでは、日本のこういうところが嫌だ、面倒だって文句を言うやつらもいたけど、それはおかしいじゃん。自分たちのルールが全てなの?それしか知らないの?って。新しいこと、新しい言葉、新しい文化って面白くない?って。

――自分の国へ帰りたいとは思わなかった?

マーティン:いや、その頃は、いつかは帰ると思ってたよ。だから何かあっても、まあいいやって気楽に思える部分もあったし。

――その頃、仕事仲間たちとバンドを結成することになったんですよね。

マーティン:そう。職場には、色んな楽器を演奏できる人がいたから。もともと気の合う飲み仲間だったんだけど、ある時、じゃあバンドやればいいじゃん!ってなって。4人組のバンドだったんだけど、ここでジョンソンズ・モーターカーとうい名前が生まれた。笑 はじめてのライブは新宿のアイリッシュパブだったね。実際はジョンソンズ・モーターカーになる前のバンドなんだけど、飛び込みで営業に行ったら、いきなりギャラを提示してもらえたんだよ。でも、仕事があったから、帰ってから夜練習して。なかなかハードだったけど評判も良くて、同系列の店でのライブをたくさんやらせてもらえるようになって、じゃあワンマンライブをやろうってことになった。でもそれが失敗だったんだよ…

――なぜですか?

マーティン:フリーペーパーに広告を打ったんだよ、そしたら職場に見つかって。契約には「副業禁止」っていう項目があったから。

――で、クビに?

マーティン:怒られたけど、変に自信があったんだよね。笑 契約も2期目に入ってたから、まあ俺たちがクビになるわけないじゃんって。

――じゃあ、なんとか一件落着で、その後問題なく…

マーティン:そうなんだよね。でも、その頃ちょうど、子供ができたんだ。

――その頃って、まだ二十歳ですよね?

マーティン:そう、超やべぇじゃんって。契約が終ったら仕事もないし、ましてや日本。とりあえずなんとかバンドを続けてお金を稼がないと!って。でも、計14か月の契約が終わると、他のバンドメンバーはみんな自分の国に帰ってしまって自分ひとり。結婚して、彼女は妊娠9か月、それでも新しいことが始まると思ってワクワクはしてたけどね。それで、子供が生まれてはじめて自分で歌を作ったんだよね。

――どんな曲ですか?

マーティン:いままで誰にも聴かせたことないよ。自分だけ。でも今もはっきり覚えてる。

――子供が生まれて生活は変化しましたか?

マーティン:とにかく、アイリッシュパブやバーで演奏したよ。新しいバンドも結成して。だけどなかなかバンドメンバーが定まらなかった。もともと、同じ音楽がやりたくて集まったメンバーじゃなかったこともあって、うまくいきかけると必ず誰かメンバーが欠けてしまって。

――思い通りの活動ができず、もどかしい日々だったんですね。

マーティン:やっと新しいメンバーが見つかった!これでライブができる!と思ったらまた1人減って、みたいな…1年間で何回メンバーチェンジをしたか。外国人とバンドをやるのは大変なんだよ。みんな国に帰っちゃうから。

――マーティンも外国人ですけどね。笑 そんな生活に変化が訪れたのは?

マーティン:知人経由でフィドラーを探している日本のアーティストがいるよって聞いて。ある日、AKEBOSHIが俺のライブを観に来てくれて、彼に「手伝ってもらえないか?」って誘われた。で、その時俺は彼がソロアーティストだって知らなかったから、「手伝う」って何?バンド一緒にやるの?いいよ!って。

――それでAKEBOSHIの活動に参加することになったんですね。

マーティン:そう。彼のツアーで色んな場所に連れて行ってもらって、たくさんの人の前で演奏することができたんだよね。すごく面白かった。それで1年位経った頃かな。AKEBOSHIの音楽は全部彼のオリジナルだったけど、俺もずっと自分の曲を書き続けていたから、そろそろ自分の曲もやりたいな、と思うようになって。それでAKEBOSHIに誰かいい人いない?って相談したんだけど…知らないって言われて。笑

――またもやメンバー探しをしないといけなかったんですね。

マーティン:AKEBOSHIのマネージャーにも相談して、音楽的なアドバイスをもらったりしたんだけど…全然見つからない。そんな時、AKEBOSHIがBRAHMANと対バンしたんだよね。

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  2. ~TOSHI-LOWとの出会い~
    「BRAHMANにバイオリンって必要ない?」
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~TOSHI-LOWとの出会い~
「BRAHMANにバイオリンって必要ない?」

――ここで、ついに運命の出会いを果たすことになったわけですね。2004年の11月@恵比寿リキッドルームで。

マーティン:そう、でも当時はBRAHMANなんて知らないし、その日も全然ライブなんて観てなかったんだけど。終わった後に楽屋でタバコが吸いたくて、近くにいたTOSHI-LOWに「ライター持ってない?」って聞いたの。そしたら、「…持ってない。」って言われて。笑 それで、まあいいやって自己紹介して。「ところであの子、かわいくない?どっかで見たことあるんだけど、誰?」って言ったら…TOSHI-LOWが「俺の嫁」って。

――つまり、その女性はりょうさんだったんですね。笑

マーティン:そう。で、それを聞いて俺が「あぁ、そう。よかったじゃん!」って。TOSHI-LOWは、なんなのこの変な外国人!って顔で見てたけど。笑 俺もなんか、あんまり空気読めてなかったって言うか。ああ、この人はこういう人なんだね。ふ~ん。みたいな。21歳だったから。さらに、「俺、曲作ってるんだよね。BRAHMANにバイオリンって必要ない?」って聞いたの。そしたら「絶対に必要ない!お前なんか絶対必要ない」って言われ…

――命知らずの発言ですね。笑

マーティン:彼も逆に新鮮だったと思うよ。だって、誰もTOSHI-LOWのことバンドに誘わないでしょ。「俺と一緒にバンドやらない?」なんて。笑」

――当たり前ですよ。そんなこと言えるの、日本でマーティンくらいだったと思いますよ。

マーティン:だって俺BRAHMANなんて知らないし。ある夜、楽屋で出会った男でしかないからね。「あなた、なんかカリスマ性あるじゃん!」とかいってね。

――あはは。絶対に言えない。笑

マーティン:そしたらTOSHI-LOWが、「分かった。ツアーが終わったら少し落ち着くから、ゆっくり話そう。」って言ってくれて。多分、俺がすっごいしつこかったから…TOSHI-LOWもきっと、「なんで俺、OKって言っちゃったんだろう。」って後々思ったはずだよ。

――ライブすら観ていない「楽屋で出会ったひとりの男」を、なぜそこまでしつこく誘ったんですか?やっぱり、TOSHI-LOWさんには、惹き付けられる特別な何かがあった?

マーティン:なんだろうね。いい匂いがしたからかな。笑 で、その日、KAKUEI(現OAUメンバー)をその楽屋に呼んだんだよ。彼は俺のはじめての日本人の友達だったから。それで、TOSHI-LOWに紹介したら、KAKUEIが固まっちゃってって。笑 「え?なんで?」って俺は思った。

――無知とは恐ろしいですねえ。

マーティン:そう。それで、「じゃあ、6か月後に連絡するから!」って言ってその日は帰って、また俺は普通の生活に戻った。AKEBOSHIのサポートと自分のバンド ジョンソンズ・モーターカー、それと、エージェンシーに登録してイベントで演奏したり。日本に来てはじめて音楽だけできちんと生活できるようになった時期だったから、それはそれで、すごく楽しかったよ。

――それで6か月が過ぎ…

マーティン:TOSHI-LOWに電話した。「ねえ、俺だよ!俺のこと覚えてる?あの時のガイジンだよ!マーティンだよ!」って。

――なんか詐欺みたいですね。笑

マーティン:何回か電話して、やっと出てくれて。それでTOSHI-LOWが「マジで?お前マジで電話かけてきたのかよ…」って。

――普通かけられないですからね。

マーティン:それで、TOSHI-LOWが、とりあえず事務所に来るようにって。そこで話をしようって言われて。

――もう、面倒くさかったんでしょうね。笑

マーティン:多分ね。でもダメとは言われてなかったから。2005年の6月かな。ちょうどその頃、ジョンソンズ・モーターカーの活動もメンバーが変わってようやく軌道に乗りはじめて。新宿の路上ライブで200~300人も集まるようになって、平日のたった数時間で100枚位のデモCDが売れたり。そこから寝ないでひたすらCDを作って路上で演奏して売るっていう生活をしてた。

――じゃあ、比較的のぼり調子の時に、BRAHMANの事務所に呼ばれたわけですね。

マーティン:そうそう、割といい感じの時だった。それで、事務所に行って、彼にその時作ったデモを渡したの。アコースティックなものだけじゃなくて、ジャズとか、ファンクとか、ロックとか、プログレっぽいものまで、あらゆる音楽を詰め込んだやつ。そしたら、TOSHI-LOWが、「この、アコースティックの曲、イイ感じじゃん。」って。それで、「なんだ、そういうのが好きなら、俺いっぱい持ってるよ!」って。笑 逆に、ファンクを選ばれたらその1曲しかないからどうしようって感じだったんだけど。それで、「どういう形になるか分からないけど、何かやろう。」って、やっと言ってくれて。「やったぁ!なんか出来る!」って。それからTOSHI-LOWがメンバーを探すことになって、決まったのが…

――BRAHMANのメンバーだったという。笑

マーティン:そう。結果、ユニット?俺は手伝いなの?BRAHMAN+マーティン&友達のKAKUEIってなにこれ?って、相当不安だったよ。最初はBRAHMANのみんなも、今、OAUで担当している楽器なんて全然出来なかったからね。最初のリハーサルなんて、もうボロボロ。それで、なんとか1曲、TOSHI-LOWがデモで気に入ってくれた「Believe」のデモ音源が仕上がって。それで、「よしっ!飲みに行こう!」って。その日は朝までとにかくワイワイ騒いで。俺、この人たちとバンドやったらすっごく楽しいじゃん!って確信できたんだよね。

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  2. 俺の国は日本。
    俺の家族はここにいるし、俺の人生はここにある。
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OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND「FOLLOW THE DREAM」Live ver.
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND「Making Time」Music Video
俺の国は日本。俺の家族はここにいるし、俺の人生はここにある。

――それこそ、バンドの原点を見たって感じですね。

マーティン:でも、リハの後にそんなことがあったのは、結局この1回だけだったんだけどね。最初で最後。笑 そこから3曲作って、下北のライブハウス「440」で3曲15分のライブをやったんだけど、まぁ、それはヒドかったよね。メインスピーカーから音は出ないわハウるわで。でも、終わった後、やっぱりすごく楽しかった。今思うと、俺は「やっとなにかできてる!」っていう気持ちが大きかったし、BRAHMANのメンバーにとっては、「原点」からの出直しがすごく新鮮だったんだと思う。それで、じゃあ続けよう、もっと曲を作ろう、ってことになって。幸運なことに、まだ3曲しかないのにアルバムも作らせてもらえることになった。普通こんなチャンスないよね、数億人に1人のチャンスを手にしたと思ったよ。

――ある程度、ほかの活動が軌道に乗っていたからこそ、チャンスだと前向きにとらえることができたのでは?だって、あまりにも大きいでしょ。BRAHMANとともにバンドを結成して、CDデビューがすでに決まっている状況って。プレッシャーもハンパではなかったと思います。

30
▲2006年発表の1stアルバム『OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND』

マーティン:大きなチャンスが手に入った時は、幸せでもあるけど、同じくらい不安でもある。しかも、この活動は本当はBRAHMANにとってやる必要なんてないんじゃないか。彼らが「辞めた!」って言ったら終わり、それまで。そういう不安に駆られることはあったよ。だけど、いざとなったらまたジョンソンズ・モーターカーでの活動を頑張ればいいって思ってはいたけど。それでもずっと不安だった。アルバムを出して、全国ツアーが始まっても、まだ不安だった。TOSHI-LOWともケンカばかりしていたし。これ、本当に続くのかなって。

――世の中的にも、最初はすごく特異な存在でしたからね。BRAHMANが別ユニットとして、まったく違う音楽をやっていることに違和感を持った人は多かったと思います。しかも謎の外国人と一緒に。

マーティン:当時、TOSHI-LOWは各所から色々言われたと思うよ。なにやってんだよって。俺の前でも言われてたことがあったしね。俺は日本語分かってるのに。TOSHI-LOWは、そんな反応にも、すごく冷静に対応してたよ。そういう人たちに対して「いつかは俺らも大人にならないといけないんじゃないのか?ただ「怒り」だけじゃ、ダメなんじゃないか?」って。

――今では、その異なるイメージもすごく自然に多くのリスナーに受け入れられるようになりましたよね。それはきっとTOSHI-LOWさんたちが、きちんと両活動のバランスをとって、それぞれのコンセプトを守ってきた結果なんだと思いますが。

マーティン:そうだね。やっぱり最初は本当にみんなびっくりしたんだと思うよ。俺はなにも知らなかったから…ファンはもちろん、一緒にやってきた他のバンドにとっても、すごく衝撃だったと思う。180度違うもんね。普通のバンド、そんなこと、やらないから。

――マーティンの「不安」がなくなったのは、いつごろだったんですか?

マーティン:本当に最近の話だよ。フロントマンとして、自分の曲をやることにもあまり自信が持てなかったし。自分自身をさらけ出すことへの不安はずっとあった。BRAHMANのファンの前でライブをやることへの不安も。

――自身をさらけ出す音楽をやっていても、観客はBRAHMANの別ユニットという目で見ている、そのギャップはマーティン自身が一番肌で感じていたでしょうしね。

マーティン:それが一番大変だった。10年経ってやっとなくなってきたかな、っていう。あと、このユニットはいつか終わりが来るんじゃないか、っていう不安はずっと持ってたね。

――その気持ちが変化した具体的な出来事はなにかあったんですか?

マーティン:なんだろう…リリースした作品が増えていったことが1つの安心にはなったけどね。それでも、何度もTOSHI-LOWとはケンカしたからね。「俺、このバンドに必要ねえじゃん、辞める!」って言われたり。俺の生活もギリギリだったし。でも、なんとか活動が続いて、CDもリリースして、ツアーもやって、フェスにも出て、少しずつ自信が持てるようになったかな。

――ちなみに、これまでに、自分の国に帰ろうと本気で思ったことはありますか?とくに、2011年の震災の時には日本で暮らす多くの外国人が自分の国へと帰っていきましたが。

マーティン:いやいや。逆に、国に帰って行く周りのひとたちを見て、「あ、友達1人減った。もう友達じゃない。」って思ってた。日本に来て、日本でお金を稼いで、日本からいいところだけをもらって国が苦しんでる時には逃げちゃう。そんなヤツは知らない。俺は絶対にそんなことは出来ない、だって、日本にこんなに助けられてるのに。俺はここにいるべきだ。苦しんでる人に、音楽で少しでも元気をあげられるかもしれない。俺ができることが少しでもあるなら、それをやるべきだと思ったよ。帰るなんて、考えたこともないよ。

――今年のフジロックのステージで、TOSHI-LOWさんが震災の後にマーティンが「今いる国が俺の国なんだよ」って言ってくれた、って話をしていましたが。

マーティン:そう。俺はアメリカ人だけど、俺の国は日本。俺の家族はここにいるし、俺の人生はここにある。帰るとか、逃げるとか、そんな場所はどこにもないよ。

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  2. NACの雰囲気は、俺が子供の頃に体験してきた
    フォーク・フェスティバルとまったく同じ
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OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND「FOLLOW THE DREAM」Live ver.
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND「Making Time」Music Video
NACの雰囲気は、俺が子供の頃に体験してきた
フォーク・フェスティバルとまったく同じ

――そして、震災から3年経った今年、OAUにとって3枚目となる久々のフルアルバム『FOLLOW THE DREAM』がリリースされましたね。制作はどういう経緯でスタートしたんでしょうか。

30
▲9月3日に発売となった『FOLLOW THE DREAM』

マーティン:これまでは、1曲にいろんな要素を詰め込んだものが多かったんだけど、もっとシンプルな曲作りがしたいなと思って。そっちのほうが難しかったりもするんだけど。少しずつ作り貯めていた曲を今年に入ってレコーディングしたんだけど、今回もあんまり時間がなくて…また、リリース時期は決まってたから、すごいプレッシャーだったけど、でもそのほうが俺たちはやれるからね。笑

――短いレコーディング期間だったとのことですが、#2「Broken Glass」ではお母様と共演されているとか?

マーティン:母親は、前からTOSHI-LOWに参加したいって言ってたみたいなんだよ。俺には何も言わないんだけど。笑 それで、たまたま今回レコーディング期間中に日本に来ていたから、曲の後半、スティール・ギターで参加してもらった。その結果、その部分が曲のピークになって、すごくいい感じに仕上がったんだよね。

――#11「朝焼けの歌」は、マーティンがTOSHI-LOWに日本詞をお願いしたそうですが、アルバムの中でもすごく日本的なメロディーを持った曲ですよね。少し哀愁の漂う童謡、たとえば「夕焼け小焼け」のような…

朝焼けの歌
▲朝焼けの歌 [VIDEO]

マーティン:そう。この曲は自分で作ってて、やっぱりメロディーが日本っぽいなあって感じたんだよね。だから、日本語で日本のことを歌う曲にしたいと思って。なにもなくなった町が、人々の力によって立ち直っていく様子。TOSHI-LOWも俺と共通のイメージを持ってくれて、「そう、それそれ!」みたいな。どっちが歌うとかは考えてなかったんだけど、やっぱり日本語の歌はTOSHI-LOWの方がうまいからね。笑 よりうまく伝えられる人が歌えばいいんだよ。

――そんな日本ならではの旋律がマーティンの中に自然と浮かんでくるんですね。

マーティン:そう。メロディーが降りてきた時に、なにこれ、すごく日本っぽいって自分でも思ったよ。それで、日本って俺のルーツになったんだって。まだ人生の半分もここに居ないけど、大人になってからはずっとこの国にいるからね。自然と日本のメロディーが入ってるんだよ。日本のこういったメロディーは、少し寂しいけど、でも強い。親父の背中みたいな。

――再録の#3「夢の跡」は、オリジナルと何が変わりましたか?

マーティン:一番はヴォーカルだね。TOSHI-LOWと俺は最近、ヴォーカル・コーチについてもらってて。それで録り直そうってなったんだけど、本当に良くなったと思う。自分たちでやってて気持ちいいんだよ。 #6「Pilgrimage~聖地巡礼~」もそう。最初のレコーディングの時に「もっとできる」って自分でも思ったから、今回再録の機会をもらって新たな曲に生まれ変わったと思う。

――今年はジョンソンズ・モーターカーとしても5月に1stアルバム『HEY HO JOHNNY!!』をリリースして、まさにこれまでの活動が大きな実りとなった1年と言えそうですね。それぞれのニューアルバムを携えて、いよいよ自身が主催するフェス『NEW ACOUSTIC CAMP 2014』(NAC)がまもなく開催されますし。

マーティン:そうだね、NACは今年で5回目。今、すごくうまくいってるよね。もうチケットも売り切れてるし、ありがたいよ。

――年々プレミア感が増していますよね。やっぱり明確なコンセプトを持っている点がNACの一番の魅力なのでは。

マーティン:元々の大きなコンセプトは、普段エレキでやっているアーティストたちにアコースティックで演奏してもらうこと。それに加えて、家族みんなで来ても安心して楽しめるフェス。子供にとって勉強・いい経験になるフェス。それぞれがきちんと自分をコントロールするフェス。だからガタイのいいセキュリティもいないし、アーティストとオーディエンスを遮る大きな柵もない。夜、パトロールしてるTOSHI-LOWだけ。笑

――数多くあるフェスのなかでも、NACは日本のフェス・シーンが次のステップへと成長した“進化系”フェスとも捉えることができるかなと。

マーティン:そうだね。でも、NACの雰囲気は、俺が子供の頃に体験してきたフォーク・フェスティバルとまったく同じなんだよ。だから、あの場所に行くと、すごく懐かしい気持ちになる。みんなでキャンプして、そこでは温かい音楽がずっと演奏されてて、夜はみんなでJAMって。自分のルーツとなっているフェスと同じものを、ここ日本で作れたっていうのは、俺にとって本当に大きなことだよ。


 約4時間のロング・インタビューを通じて、マーティンの知られざる半生と彼のルーツ、そして“もう1人のフロントマン”ゆえの苦悩や不安など、これまであまり語られることのなかった新たな一面を垣間見ることができた。

 さて、9月3日にリリースされたニューアルバム『FOLLOW THE DREAM』は、すでにお手元に届いているだろうか。このCDの盤には、TOSHI-LOWのアイディアで採用されたという1枚の写真がプリントされている。それは、今回の特集<前編>でも紹介した、「ジョンソン・ファミリー・バンド」の演奏風景だ。

 マーティンの原点は、ここにもしっかりと刻まれている。

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND「FOLLOW THE DREAM」Live ver.
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND「Making Time」Music Video

OAU「FOLLOW THE DREAM」

FOLLOW THE DREAM

2014/09/03 RELEASE
TFCC-86487 ¥ 3,565(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Follow The Dream
  2. 02.Broken Glass
  3. 03.夢の跡
  4. 04.Blind Moonlight
  5. 05.Making Time
  6. 06.Pilgrimage~聖地巡礼~
  7. 07.Ride Today
  8. 08.N.A.C
  9. 09.Treason Song
  10. 10.Clumsy Queen “Isabella”
  11. 11.朝焼けの歌
  12. 12.Question

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