2020/12/15 12:00
2020年、デビュー35周年を迎えた今井美樹。そのアニバーサリーを飾る【billboard classics MIKI IMAI 35th Anniversary premium ensemble concert】が、2020年の11月22日、23日に大阪・フェニーチェ堺で、11月26日、27日に東京・Bunkamuraオーチャードホールで開催された。本稿では11月27日・東京の模様を届ける。
今井とbillboard classicsの初のコラボレーションによる本公演は、当初は2020年の5月に開催が予定されていた。しかしコロナ禍の影響で止む無く延期に。今井にとっても、観客にとっても、まさしく念願の公演だった。
音楽監督を務める山下康介の指揮のもと、16名の管弦にピアノ、ドラム、ベース、パーカッションを合わせた総勢20名で編成されたアンサンブルが奏でる荘厳な旋律の「PRIDE- Overture-」で今井がステージに呼び込まれると、観客から大きな拍手が起こる。彼女は両手を大きく広げて感謝を表すと「瞳がほほえむから」を皮切りに、穏やかなテンポの「幸せになりたい」、「雨のあと」を歌う。これらの楽曲は公演に先駆けてリリースされたアルバム『Classic Ivory 35th Anniversary ORCHESTRAL BEST』の収録曲だが、さらに本公演のための新たなアレンジが施されている。続いては2018年のアルバム『sky』の収録曲「同じ空」を披露。ロンドンで生活している今井が、離れていても“同じ空”の下で繋がっているという自らの思いを乗せた歌だ。そして、ファンにはうれしい2006年のシングル曲「年下の水夫」を挟んで、やはり「Classic Ivory~」から新たなアレンジが施された「未来は何処?」、「Goodbye Yesterday」の絶唱で第1部の幕が閉じる。歓声を上げることが叶わない観客からの波打つような大きな拍手が彼女を讃えていた。
客席の換気も含めた20分間の休憩を挟んで本編は第2部へ。アンサンブルが奏でるのはエンリオ・モリコーネ「ニュー・シネマ・パラダイス」、「リスナーのみなさんの人生のサウンドトラックで在りたい」。そんな今井のモットーが彼女のフェイバリットナンバーで体現された格好だ。
すると一転、リズムはアップテンポに。「Anniversary」~「Driveに連れてって」~「微笑みの人」~さらには「彼女とTIP ON DUO」と、アニバーサリーを彩るメドレーだ。軽快な歌声に観客の手拍子が応えていく。シックな舞台美術、表情豊かなグラデーションの照明、そしてクリエイティブチーム“NAKED”によるイメージ映像が演出を盛り立てる。指揮に沿う形で奏でられる管弦のダイナミズムとポップバンドのフィジカルなグルーヴ。両者が合流する演奏というのは実のところ難易度が高いのだが、アンサンブルの演奏は今井の歌声を柱に絶妙なマッチングを聴かせていた。細部のアレンジもよく聴けば原曲と異なる幾つもの拘りを確認できるが、全体としては極めて聴き易く、楽曲の魅力と今井のボーカルをストレートに届ける構造となっていることに感心させられる。今回のアンサンブルの大きな特徴とも言えるだろう。山下はもちろんのこと、ピアノの河野圭とドラムの鶴谷智生という、近年の今井美樹バンドにおける二人の常連プレイヤーの貢献が大いに感じられたメドレーだった。
高くかざした手を未来へと向けるように歌われた「Hikari」、ピアノとハープの美しい旋律が印象的な「Blue Rain」、まさに名画の追憶のワンシーンを思わせる「半袖」、そして今を生きることの大切さを説く「あなたはあなたのままでいい」と会場を包み込むような美しい演奏と表情豊かな歌声が続いていく。観客にあらためてアニバーサリーの感謝をMCで伝えると、今井はリリックの一語一句を噛みしめるように「夕陽が見える場所」、そして「野性の風」を伸びやかに歌い上げるとステージを去った。
鳴り止まぬ拍手に迎えられてアンコール。「PIECE OF MY WISH」、「PRIDE」を披露すると、この日のステージが幕を閉じた。一旦は舞台袖に去った今井だったが、鳴り止まぬ拍手に応えて再度ステージに姿を見せると、あらためて深々と礼をして観客に大きく手を振る。終わってみれば、ほぼ全ての曲がこの日のためのアレンジだった。
この日のMCで何度となく今井が口にしていたのは、35周年の感謝、本公演の実現に漕ぎ着けた思い、そして未来への希望だ。
未だ収束のつかないコロナ禍のなか、本公演は観客数を1/2に絞り、入場時の消毒など感染対策にも細心の注意を払って行われ、無事に成功。アニバーサリー、コラボレーションの主旨はもとより、今井にとっても、billboard classicsにとっても、またファンにとっても、あらゆる点で意義深く、文字通りpremiumなひと時となった。
40周年も視界に入った今井美樹の今後に期待が高まる。当日の模様は2021年の2月にWOWOWでの放送が予定されている。是非ともご覧いただきたい。
TEXT by 内田正樹
LIVE PHOTO by NORIKO INOSE
ARTIST PHOTO by KIYOTAKA SAITO(公演パンフレットより)
◎公演情報
【billboard classics MIKI IMAI 35th Anniversary premium ensemble concert】
2020年11月22日(日)、23日(月・祝)大阪・フェニーチェ堺
2020年11月26日(木)、27日(金)東京・Bunkamuraオーチャードホール
◎番組情報
WOWOW『billboard classics MIKI IMAI 35th Anniversary premium ensemble concert』
2021年2月放送予定
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像