2020/03/08 16:00
今週のHot100を上位から眺めていると、aikoの「カブトムシ」が12位にランクインしていることに驚かされる(【表1】)。この曲がリリースされたのは1999年なので20年以上前の楽曲だが、その後もカヴァーやタイアップなどの話題が度々あり、その都度チャートには顔を出している。しかし、ここまで上位に来るというのはおそらくはじめてだろう。
もちろん、この結果は2月26日からストリーミング・サービスで全曲の配信を解禁したことによるものだ。これまでストリーミングで聴けないアーテストの筆頭に挙がっていたaikoがついに解禁したということだけでも大きな話題だが、加えて新曲「青空」がリリースされたこともあり、絶好のタイミングと言える。なお、「青空」は初登場6位という好スタートを切っているのもさすがだ。
ただ「カブトムシ」のポイントを見ると、ストリーミングよりも動画再生数が占める割合のほうが大きいことに気付く。これにはいくつかの理由があるが、まずストリーミング解禁と同時に、MVのフルバージョンもオフィシャルで解禁になったことが大きい。また、解禁前の2月20日にaikoがニッポン放送のラジオ番組『King Gnu 井口理のオールナイトニッポン0』に出演し、この曲を2人でデュエットしてその動画がバズったということも大きな話題のひとつだ。
さらにいえば、ストリーミングだけでなくダウンロードも大幅にアップしている。これは音楽配信サイトにおけるダウンロードのキャンペーンをこのタイミングで行っていることもあり、ストリーミングでなく購入したいというファンを上手く取り込めたということだろう。過去にもMr.Childrenのストリーミング配信解禁時に同様の動きがあったが、こういったコアファンの数が多いアーティストほど密接に連動するようだ。これらの話題性を持ってツイッターのポイントも稼いでいるし、もともとカラオケのポイントは一定していたのが、ここに来て急上昇。様々な要素が見事に重なり合った結果なのである。
新曲プロモーションのタイミングで、過去の名曲も同時にチャートに入れ込むというのは度々あるが、ここまで上位に食い込んでくるというのは珍しい。いかに今回のプロモーションがうまくハマったかがよくわかる好例だろう。フィジカルがメインの20年前のヒットの仕方とはまったく違うが、名曲はいつの時代にも人々の心に届き、広がっていくのだ。Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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