1994年にリリースされたマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」が、2019年12月21日の米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”でNo.1に輝いた。マライアは、これで通算19曲目の首位を獲得。歴代1位のザ・ビートルズの記録(20曲)に王手をかけ、女王の存在感を改めて示した。その快挙を記念して、歴代の全米首位獲得19曲をご紹介する記事の＜後編＞をお届けする。

◎「ハニー」
https://youtu.be/w3KOowB4k_k

5thアルバム『バタフライ』からの1stシングルとして1997年8月26日にリリースされ、自身3曲目の初登場1位獲得を果たした。9月13日～27日付チャートの計3週をマークしたが、年間32位とTOP10入りは逃している。制作は前述のパフ・ダディーを中心に、パフィーの＜バッドボーイ・レコーズ＞に所属していたスティービー・J(フェイス・エヴァンス、リル・キム等)、Qティップといったヒップホップに精通するアーティスト陣が担当。サンプリング・ソースには、ワールドフェイマス・シュプリーム・チームの「Hey DJ」(1984年)が使われている。離婚後の解放感からか、この曲から一気に色気と露出度が増し“セクシー路線”にシフトチェンジし、MVではお芝居(？)にも初チャレンジしている。

◎「マイ・オール」
https://youtu.be/mIhI23gBBPQ

　『バタフライ』からの5thシングルとして1998年4月21日リリースされ、翌5月23日付チャートで首位に到達した。1位をマークしたのは1週のみだが、同年の年間チャートでは17位にランクインする大ヒットを記録。2ndシングル以降の曲が1位を逃がし、5曲目でNo.1を獲得するというケースも珍しい。制作はマライアとウォルター・アファナシェフによるものだが、「ハニー」同様、過去の作品にはなかったタイプのドラマティックなラテン・バラードに仕上がっている。スパニッシュ・ギターの音色とモノクロの映像が重なるミュージック・ビデオは、まるで映画のワンシーンのよう。

◎「ハートブレイカー」
https://youtu.be/kMCGvtlL4fw

　6thアルバム『レインボー』からの1stシングルとして1999年9月22日にリリースされ、10月9日～16日付チャートの計2週をマーク。同年の年間チャートでは35位にランクインした、90年代最後の首位獲得曲。今やラップ界の頂点に立つジェイ・Zをフィーチャーしたヒップホップ・チューンで、ステーシー・ラティソウの「ラップでアタック」(1982年) がネタ使いされている。同曲を手掛けたのも(偶然か？)前述のデビュー曲「ヴィジョン・オブ・ラヴ」をプロデュースしたナラダ・マイケル・ウォルデン。これまでの正統派なイメージを覆すべく、1人2役を演じたコミカルなMVも(いろんな意味で)面白かった。

◎「サンク・ゴッド・アイ・ファウンド・ユー」
https://youtu.be/7KVxjQUCyn0

　『レインボー』からの2ndシングルとして2000年1月25日リリースされ、2月19日付チャートで首位に到達した、2000年代初の首位獲得曲。1位は1週のみで、同年の年間チャートでは45位と勢い振るわず終わった。本作が思うようなヒットに至らなかったからか、『レインボー』を最後に＜ソニー・ミュージック＞を一旦離れることになる。当時ヒットを連発していたR&Bシンガーのジョーと、ボーイズ・グループの98ディグリースという異色のコラボは、若干取っ散らかってる感否めず。キース・スウェットの「メイク・イット・ラスト・フォーエヴァー」(1987年)をサンプリングした、アーバンな仕上がりのリミックス・バージョンの方がしっくりくる。ジャム＆ルイスによるプロデュース曲が首位を獲得したのは、同曲のみ。

◎「ウィ・ビロング・トゥゲザー」
https://youtu.be/0habxsuXW4g

　＜アイランド・レコード＞移籍後2作目、通算10枚目のスタジオ・アルバム『MIMI』からの2ndシングルとして2005年3月29日リリースされ、6月4日～9月10日付チャートの通算14週のNo.1をマーク(非連続)した、諸々の説明も不要の大ヒット曲。同2005年の年間シングル・チャートでは自身初の1位に輝き、＜アイランド・レコード＞から2000年代にリリースされたタイトルとしても、最も売れた曲として認定されている。1stシングルが首位獲得を逃し、2曲目がNo.1を記録したのは本作『MIMI』のみ。プロデュースは前述のジャーメイン・デュプリ。『レインボー』以降の2作がヒットに恵まれなかっただけに、再ブレイクの喜びもひとしおだっただろう。

◎「ドント・フォゲット・アバウト・アス」
https://youtu.be/8tZkzL4j3BU

　新曲とDVDを追加した『MIMI』のプラチナ・エディションから2005年12月12日にカットされ、12月31日～2006年1月7日付チャートの計2週をマークした、17曲目のNo.1ソング。制作陣には、ジャーメイン・デュプリと、前曲「シェイク・イット・オフ」(最高2位)をヒットに導いたブライアン・マイケル・コックスがクレジットされている。当時の流行を上手く取り入れたアーバン・メロウで、仕上がり自体は悪くないものの、「ウィ・ビロング・トゥゲザー」の二番煎じという声も多く、2006年の年間チャートでは50位と大ヒットには至らなかった。新曲を追加したデラックス・エディションでアルバムを再ヒットさせるプロモーションは、この頃ビヨンセやリアーナ等の人気シンガーも取り入れている。

◎「タッチ・マイ・ ボディ」
https://youtu.be/9b8erWuBA44

　11thアルバム『E=MC2』からの先行シングルとして2008年2月12日にリリースされ、4月12日～19日付チャートの計2週をマーク。同年の年間チャートでは22位にランクインするヒットを記録した、2000年代最後の首位獲得曲。プロデュースは、当時ヒットを連発していたトリッキー・スチュワートとザ・ドリームによるコンビで、ドリーミーなトラックもさることながら、映画監督のブレット・ラトナーが手掛けたミュージック・ビデオによるプロモーションこそ、ヒットの理由といってもいいだろう。コメディアンのジャック・マックブライヤーとの絡みがユニークで、歌詞にも登場するYouTubeの再生回数は1億8,000万回を記録している。なお、撮影場所は翌年公開の映画『プレシャス』で共演したレニー・クラヴィッツの自宅だそう。＜アイランド・レコード＞からのシングル、そして「新曲」としての全米首位獲得は、この曲でストップしている。

◎「恋人たちのクリスマス」
https://youtu.be/yXQViqx6GMY
https://youtu.be/aAkMkVFwAoo

　1994年10月29日の発売から25年目を迎えた今年、2019年12月21日付チャートで遂に1位を記録し、翌12月28日付チャートの計2週をマーク(2019年12月25日時点)。「タッチ・マイ・ ボディ」以来約11年半ぶり、2010年代では初の首位獲得を果たした、記念すべき19曲目の全米No.1ソング。この快挙に本人、メディア、ファンも大いに沸き、米ビルボード誌の最新号では表紙を飾るなど、ホリデー・シーズンを彩っている。12月19日には、双子も登場する新しいミュージック・ビデオがリリースされ、公開1週間で2,000万再生を記録する反響をみせた。このNo.1を機に、2020年代は新作からも「20曲目」の1位獲得曲が生まれることを期待したい。

Text: 本家 一成