2018/07/03 12:15
2018年7月1日、英シンガー・ソングライターのジェイムス・ブレイクが米カリフォルニア州オレンジ・カウンティのチャップマン大学で開催されたパフォーミング・アーツ・メディスン・アソシエーション(PAMA)のシンポジウムに出席し、うつ病と不安神経症と戦った自身の経験を語り、似た問題を抱えているアーティストたちにエールを送った。
毎年開催されているこのシンポジウムの今年のテーマは、“芸術人口の自殺危機に対処する”だった。現在29歳のブレイクは、音楽活動を始めた頃に苦しんだうつ病のせいでツアー中に自殺を考えたことがあったことを率直に語った。21歳の若さで世界的に有名になった彼は、「自分が本質的にまだ成長しきっていない年齢だった頃に普通の生活から離されてしまった」と振り返り、ツアー中は、「他人とのつながりが表層的になる。だからある町に一日しかいなかったとして、誰かに“調子はどう?”って聞かれても、いいことしか話さない。自分がどんなに不安を感じていても憂鬱な気分でいても、大抵そのことには触れない」と語っている。
また、ツアー中の若いミュージシャンにありがちな不健康な食生活も精神の不調を悪化させた。「食生活が原因の化学的不均衡と体調の悪化は、自分のうつ病とその後の自殺願望にとても、とても大きな影響を与えたと言える」と彼は述べ、「(特定の食べ物への)不耐性になってしまい、そのせいで毎日のように実存的な絶望を感じるようになった。あるものを食べるとその一日はずっと“何もかも無意味だ”って気分になった」と振り返っている。
このような自身の経験から、創造力と心理的苦悩を混同しないように気をつけるべきだとブレイクは語った。「不安でなければクリエイティブになれないとか、絶望していなければ天才でないというような通説がある。でも僕が何かを創る時に不安神経症が助けになったことなどないとはっきり言える。そして友人たちの創造的プロセスを破壊するところも見てきた」と彼は明かしている。
ブレイクにとってEMDRセラピーと呼ばれる実験的な治療法が有効で、「自分がうつになったそもそもの原因だったトラウマとか抑制していたものを弱体化させる効果があった」と話している。また、米ロサンゼルスで同棲している恋人の存在も大きかったそうで、彼女の手を借り、自身の不健全な行動を手助けしていた人々との関わりを絶ち、自分のキャリアを持続可能な方法で管理できるようになったのだと彼は話している。
「正直、多くの人に“うせろ”って言ったことからたくさんカタルシスを感じた。あとは“ノー”と言ったこと。ツアーばかりの生活にノー。どれだけ金を積まれても嫌だ」と彼は語った。
今声を上げたことについて彼は、「臨界点に達したからだ」と言い、「我々の世代は、数世代ものミュージシャンたちが、自分を駄目にするドラッグや不摂生や対処メカニズムに走るところを目撃してきた。そして最近あまりにも多くの著名人たちが自分の命を断っている。だから話すことで悪いイメージを取り除く責任が僕たちにはあるんじゃないかと思う」と話している。
ジェイムス・ブレイクは2018年5月、常に“sad boy”と揶揄されることに対し、「男性が自分の感情についてオープンに語ることがこの言い回しで表現されることを不健全で問題があると常々思っていた」と問題提起し、「僕が情熱を傾けている精神の健康と幸せへと続く道は誠実でできている」と、男性が自分の弱さや感情を表現することは悪いことではないと主張した。
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