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2018/06/28 12:00

【K STORM】BTSのSUGAも実力を認めたシンガーソングライター、SURAN(スラン)の挑戦…日韓音楽コミュニケーター筧真帆が韓国音楽の新鋭を紹介

“K-POP”のメインストリームとは一歩離れた地点から音楽シーンを更新する、韓国音楽の新たな才能を紹介する連載企画【K STORM】。第5回となる今回は、実力派シンガーソングライターのスラン(SURAN)を取り上げる。

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 韓国の女性シンガーソングライターとしては、第3回で取り上げたHeize(ヘイズ)に次ぐ人気を誇る彼女。だが、ヒップホップのバトル番組上がりのHeizeとは異なる、興味深い形でそのキャリアを築きはじめた。その飛躍には、いままさに世界中で“K-POP革命”を起こしているあのグループのメンバーが関わっている。今回も取材と文章は、日韓音楽コミュニケーターの筧真帆氏。取材は昨年12月から今年5月にかけて、現地と書面にて行われた。(以下、文:筧 真帆)

〈BTSのSUGAも実力を認めたシンガーソングライター、SURAN(スラン)の挑戦〉

 最近出演した韓国のテレビ番組で、“宝玉ヴォイス”と紹介されたスラン。一度聴けば耳に残るその歌声は、今や彼女のトレードマークになっている。
「自分の声に魅力があると特に思ったことがなくて。もっと楽に聴ける歌声や低音ヴォイスとか、自分にないものに魅力を感じていた。でも今は、個性的な声と言われることがうれしい。簡単に同じスタイルのシンガーが出てこないと思うから」

 彼女が一気に知名度を上げたのは昨年の春。ミニアルバム『Walkin'』の先行曲「今日酔えば」(Feat.チャンモ)が発表されたとたん、韓国の主要配信チャートの首位を席巻。リリース後も長らく人気を保ち、音楽総合サイトGAONの2017年デジタルチャートでは年間14位という高ランクに付けた。ファニー・ヴォイスで情感豊かに歌うスランの実力が支持されたのはもちろんだが、この曲のプロデュースをBTS(防弾少年団)のラッパー、SUGA(シュガ)が手掛けていたことが話題を後押しした。
「BTSは去年の春の時点でも十分に大スターだったけれど、アメリカのビルボード・チャートの上位に入る前だったし、メンバーが一緒に歌っているわけでもない。ファンクラブの人たちには届くかな?くらいには思っていたものの、まさか1位になるとは本当に予想外。あの曲から私の音楽人生が変わった」

「今日酔えば」(Feat. チャンモ / Prod.SUGA)
https://youtu.be/a3JqIwCx8Cs


 このブレイク以降、露出も増えて人気アーティストの仲間入りを果たしたスランだが、やりたい音楽へたどり着くまで時間を要した。歌う楽しさに触れたのは高校のコーラス・サークル。理系の大学へ進学したものの、作曲サークルに入ったことで本格的に音楽へ興味を抱き退学。フリーのジャズシンガーを経て、20代半ばでソウル芸術大学の実用音楽科(作詞作曲・歌・楽器・理論すべての音楽スキルを学ぶ学科)へ再入学。
「大学を辞めてシンガーをしていた頃、ある大きなジャズクラブで歌ったときに店長からスカウトされて。色んなミュージシャンとセッションを重ねるようになり、自然とジャズシーンに馴染んでいった。でもジャズがルーティーンになってきたから、もっと情熱を見つけたくて芸術大に入り直した。色んな出会いが音楽の幅を広げてくれた」

 ジャズを離れてからも幾つかのジャンルを模索したのち、2014年冬にソウル系シンガーソングライターのスランとしてデビュー。彼女の実力と呼応するように、Beenzino(ビンジノ)、Primary(プライマリー)、Yankie(ヤンキー)、ZICO(ジコ)など韓国トップクラスのラッパーやプロデューサーらと作品を発表、ドラマのサントラにも採用され、音楽フリークの間では注目されていたところ、前記のとおり2017年の「今日酔えば」でブレイク。
 この曲をSUGAが手掛けることになったのは、1年前の出会いにさかのぼる。
「SUGAがミックステープを制作するときにボーカルを探していて、何かで私の歌を聴いて気になったらしく、知り合いを介して連絡が来て「so far away」という曲で参加することになった。彼の印象はアイドルやシンガーソングライターとも違う、フランクなクリエイター仲間という感じ。最初の出会いがグループの1人ではなくプロデューサーだったから、音楽的な会話を沢山できた」

SUGA「so far away」(Feat. SURAN) [ミックステープ『Agust D』収録]
https://bit.ly/2yIFuyu

 その後もSUGAとは音楽仲間たちと共に会う機会があり、スランが曲作りに悩んでいると耳を傾けてくれたという。ならばスランの曲でも一緒にやってみようという話の流れで、「今日酔えば」のプロデュースに至る。なお同曲はSUGAに加えて、BTSの筆頭プロデューサーのSlow RabbitやPdoggほか、BTSの制作チームとスランで作り上げられた。
「私は基本1人で音楽を作るスタイルだから、SUGAたちとの出会いは大きな刺激になった。“この曲で姉さんは有名にならなきゃ!”と言いながら作ってくれて、本当に感謝しかない。BTSのメンバーはもちろんクリエイターたちも日々すごい研究をしている。彼らを見て多くのことを学んだし反省もした。音楽と向き合う夢がとてつもなく大きくて、心からリスペクトする」

 続いて初夏に発表した「1+1=0」(ミニアルバム『Walkin'』リード曲)は、売れっ子シンガーソングライターDEANによる全面作詞作曲で連続ヒット。それまでは必ずスラン自身が作詞作曲を手がけていたが、はじめて他人の作った曲を歌うことに。
「挑戦だった。DEANには独特のカラーがあるから一度身を任せてみようと思って。本当は自分で自分をプロデュースするほうが難しい。何が自分に合っているのか上手くできるのかとか、独りで考えることが多すぎる。SUGAやDEANなど若いプロデューサーとの出会いは大きく成長できる機会だった」

「1+1=0」(Feat. DEAN)
https://youtu.be/YA6G74gk6R8


 10代のアイドルたちが次々とデビューし、熾烈な争いが繰り広げられる韓国の音楽シーン。“遅咲き”であることを誇りに、活躍の場を広げてゆくスランの言葉には説得力がある。
「ずっと思い続けたら叶わないものは無いと思う。私みたいに30歳を目前にメインストリームへ行けるなんて普通はありえない。諦めないで頑張っていたら進むべき道は必ず開けると思うし、実際にそれを経験したから、夢は大きく持っておきたいと思う。いつか海外へも出てみたい」

「Love Story」 (Feat. CRUSH)
https://youtu.be/kDM5c5ImW_Y



(文:日韓音楽コミュニケーター 筧 真帆)


◎スラン(SURAN)バイオグラフィー
韓国ソウル出身、本名シン・スラン。インディーズでジャズ、R&B、エレクトロ系のアーティストを経たのち、2014年12月にソウル系シンガーソングライターのSURANとして「I Feel」でデビュー。2015年「Calling In Love」に人気ヒップホッパーBeenzino(ビンジノ)をフィーチャリングに迎えたのをきっかけに、ミュージシャン界隈でも存在感を示すことに。2017年「今日酔えば」のヒットによりMnet Asian Music Award、Melon music award、Golden Disc Awardの3つのアワードでノミネート、後者2つで受賞。アイドル・サバイバル番組「MIXNINE」ではボーカルトレーナーを務める。2018年6月からは、ジャンルを超えた実力派アーティストのコラボレーション番組「The Call」で活躍中。好きな日本のアーティストは椎名林檎。

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