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2018/06/22

あっこゴリラ/Attractions/SIRUP/向井太一/the engy/AFRICAが出演、初の大阪開催【Spotify Early Noise Night vol.6】を振り返る

 2018年6月15日、音楽ストリーミング・サービス『Spotify』が主催するイベント【Spotify Early Noise Night vol.6】が大阪・心斎橋JANUSにて開催された。

  毎回『Spotify』がプッシュする旬のアーティストが出演するこのイベント。これまでにWONKや向井太一、CHAIやあいみょんなど、各方面から大きな話題を集める“今”のアーティストたちが個性溢れるステージを展開し、過去5回の開催を重ねてきた。そんな【Spotify Early Noise Night】は、6回目にして今回初めての大阪開催となった。

 トップバッターは大阪出身のシンガー・ソングライターKYOtaroによるニュー・プロジェクト、SIRUP。地元ということもあり、彼を目当てに足を運んでいたファンも多く、たくさんのオーディエンスに迎えられて登場。Tokyo Recordingsプロデュースによる1stデジタル・シングル「Synapse」でライブの幕を開けると、現行シーンのビート感をもって、その変幻自在なボーカルで確実に聴く者の五感を刺激する。SIRUPが「chillしていこか」と呟き「LOOP」へと流れると、サックスが参加し、会場の熱気はさらに上昇。新曲「Do Well」でフロアを揺らしラストを「SWIM」で締めくくった。観客は、“SING”+“RAP”=SIRUPの情感豊かな歌声とバンドのサンドに導かれるまま、心地よいグルーヴに終始酔いしれていた。

 2番手は関西を拠点に活動している4人組バンド、the engy。Spotifyでは、楽曲数が少ないながらも1か月で1万人を超えるフォロワーを獲得する注目バンドだ。「she makes me wonder」からスタートしたライブは、ブラック・ミュージックの影響を受けながらもロック~エレクトロの様々な要素を含んだ楽曲を柔軟に行き来するバンド・サウンドを序盤からふんだんに聴かせる。一貫した都会的なグルーヴを持ちながら、荒さとクールさの緩急をつける“隙間”の使い方がとても格好良く、激しさを増した「say it」から一気になだれ込んだ「Empty space」でのメロディアスなピアノの聴かせ方も秀逸だった。山路洸至(Vo/Gt)の「おしゃれなもの以上に、音楽が大好きな皆さんへ」というMCから「Headphones」がスタートすると、爆発力のある演奏と体を揺らすオーディエンスが呼応していくように恍惚とした空気に包まれたラストだった。

 3組目は、福岡出身バンドのAttractions。1st EP『Attractions』で国内音楽シーンにおいて注目を集めると、その勢いのまま2018年3月には【SXSW】への出演も果たしており、国内インディーシーンの中でも際立って熱い視線を受けているバンドだ。「踊る準備できてますか~!」の合図で「Baby Relax」からライブがスタート。現行のUKインディ・ロックとの親和性もありながら、緻密なサウンド・プロダクトとポップ・センスを感じさせ、バンドのエネルギーを受けて放たれるTARO(Vo)のハイトーンボイスは、ダイレクトに心に突き刺さってくる。掛け声で一体感を高めていくあたりも、ライブバンドの良さを十分に魅せていた。最新曲「Leilah」やデビュー曲「Knock Away」を披露しつつ、TAROがMCで「(自分が)インドネシア出身なんですが、日本語が話せなくて心細かった時、音楽が友達でした。そして、音楽をもっと好きになったら仲間ができました!」と語る姿も印象的で、彼らの熱い思いが観客にしっかりと届いたステージだった。

 そして、深夜1時頃イベントがどんどん盛り上がっていく中、待ってましたと言わんばかりの大きな歓声で迎えられたのは、同イベント2度目の出演となった向井太一。「FREER」が1曲目に演奏されると、揺れるフロアの空気を一瞬で鷲掴みにしていく。「FLY」や「SLOW DOWN」での甘くメロウな曲から「GREAT YARD」のハスキーな息遣いとパワフルボイスが入り混じる曲まで、自在に歌声を操る彼の表現力は実に多彩である。また、「EP出します!」と告げてから披露されたtofubeatsのプロデュース曲「Siren」がスタートするとフロアはさらに歓喜の渦に包まれていく。ライブ中すべての曲をオーディエンスが一緒に口ずさんでいる姿を見ながら、リスナーの耳の早さと、向井太一が東京だけでなく全国的な音楽シーンの一翼を担っているのだということを改めて感じさせられた。そして、フロアのクラップとシングアロングとともに「空」を演奏し、温かみのあるラストでライブが締めくくられた。

 後半戦に登場したのはメジャーデビューも発表されたばかりのあっこゴリラ。ニルヴァーナの不穏なSEとともに“カート”に乗り、両脇を抱えられながら登場。「地球の歩きかた」からの「TOKYO BANANA」ではバナナをフロアに投げるパフォーマンスで観客の熱気を上昇させ、突然「今日、めっちゃ気合い入ってたんですけど、足骨折しちゃったんですよ!(笑)」と驚きの告白。観客が騒然とする中、「テニスでラケットを思いっ切りフルスイングして、それが自分の足に当たって骨折。え?みんな引いてるじゃん!私もドン引きだよ!」と経緯を説明し笑いを誘う。この告白で応援モードが高まったこともあるが、その後に披露された“バスケが好きすぎる”ことから作られた「電光石火」でのコール&レスポンスやドラムの演奏などを見ても、彼女の盛り上げ方は抜群でパフォーマンス力に圧倒される。彼女が愛される理由は、ライブを見れば一目瞭然だ。その後は、向井太一が呼び込まれSpotifyのCMソングでもある「ゲリラ」を披露。この嬉しいコラボレーションにフロアでは<ゲリラ>コールが降りしきっていた。そしてメジャーデビュー曲「余裕」では「メジャーデビュー余裕! 骨折も余裕!」と自らを鼓舞しラストまで駆け抜け、ハプニングを乗り越えて自由に楽しみ切ったあっこゴリラを称える大きな拍手が贈られた。

 記念すべき初の大阪開催となった【Spotify Early Noise Night】のトリを飾ったのは、大阪発のバンド、AFRICA。鞆良磨(Vo)と中村泰二朗(Gt)を中心に結成された、“ロマンを抱いた、ヤングポップバンド”を掲げる彼らは、はっぴいえんど、SUGAR BABEらの系譜に連なる日本のポップ・ミュージックの影響を受けながらも、現代の海外インディーや歌謡ロックなどの感性も持ち合わせており、それらを見事にクロスオーバーさせている。「翌朝」からスタートしたライブは、音がレイヤーされていくたびに彼らの世界観が色を変えていくようで、彼らの音楽性の振り幅も感じさせていく。後半に進むにつれて、「WONDER WONDER」「アテナ」が披露されると、キャッチーかつダンサブルな多幸感に溢れた楽曲にどんどん惹き込まれジャンプやステップでオーディエンスも音に身を任せる。最後は、「よろこびのわ」で笑顔を弾けさせ全員でハンズアップする大団円の中イベントを締めくくった。

 Spotifyをはじめサブスクリプション・サービスの近年の広がりは言うまでもないが、どこにいても音楽を知ることができる情報の早さによって、東京と地方が同じタイム感で音楽シーンを共有できて、これだけイベントで盛り上がりを見せることに驚かされた。それと同時に、このイベントがアーティスト同士のコネクトや、地方を拠点に活動するアーティストたちのいち早いフックアップにも繋がっていくことを感じさせてくれた。

 なお、次回【Spotify Early Noise Night #7】は7月18日、東京・代官山 SPACE ODDにて開催されることが決定。同イベントには、TENDOUJI、SUSHIBOYS、Newspeak、THREE1989の4組が出演する。

photo:今村知嗣
photo:竹本みずき
text:神人未稀

◎公演情報
【Spotify Early Noise Night vol.6】
2018年6月15日(金)
大阪・心斎橋JANUS
出演:あっこゴリラ/Attractions/SIRUP/向井太一/the engy/AFRICA

<セットリスト>
SIRUP
1.Intro
2.Synapse
3.Last Lover
4.LOOP
5.一瞬
6.Do Well
7.SWIM

the engy
1.she makes me wonder
2.stay where you are
3.say it
4.session?Holding you down
5.Empty space
6.Headphones

Attractions
1.Baby Relax
2.Twilight
3.Leilah
4.Hazy Boy
5.Knock Away
6.Escapist

向井太一
1.FREER
2.FLY
3.眠らない街
4.SLOW DOWN
5.GREAT YARD
6.Siren
7.空

あっこゴリラ
1.地球の歩きかた
2.TOKYO BANANA ~ TOKYO BANANA 2018
3.電光石火
4.BNNZラップ
5.ゲリラ
6.余裕
7.ウルトラジェンダー

AFRICA
1.翌朝
2.サマータイム
3.BOY
4.WONDER WONDER
5.アテナ
6.よろこびのわ

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