2018/05/16 17:00
SPECIAL OTHERSがアコースティック・プロジェクト=SPECIAL OTHERS ACOUSTICとしては2作目となるアルバム『Telepathy』を完成させた。2006年のメジャー・デビュー以降、インスト編成のジャム・バンドとして国内メインストリームを切り開いてきたスペアザ。そんな彼らのシーンにおける独自の立ち位置と芳醇な音楽性にあらためて迫るべく、早速メンバー4人に話を訊いてきた。
メンバー:
宮原“TOYIN”良太(ドラム/Drums&Percussions,Guitar)
又吉“SEGUN”優也(ベース/Bass&Mandolin)
柳下“DAYO”武史(ギター/Guitar)
芹澤“REMI”優真(キーボード/Melodion,Glockenspiel)
ーー皆さんはここ10年の音楽シーンにどんな変化を見出していますか。スペアザがメジャー・デビューした2006年頃と比べると、きっと状況はかなり変わったと思うのですが。
宮原:たしかに今の状況は僕らもまったく予想してませんでしたね。それこそフェス・ブームみたいなものがなければ、俺らはここまで注目されてなかったんじゃないかな。
柳下:そうだね。僕らみたいなインスト・バンドにとっては、まずライヴを見てもらうことが一番の宣伝だったので、それこそ昔はフェスを「大規模なストリート・ライヴ」みたいに捉えてたんです。それによって「インストってこんなに楽しいんだよ」ってことをちょっとずつ広めてこれたのかなって。
ーーフェス・カルチャーの盛り上がりと並走してきた実感があると。
宮原:それはありますね。ただ、昔は「ヒットチャートに入ってる曲はダサい。それよりもフジロックとかに出てる人の方がカッコいい」みたいな壁もあった気がしてて。俺ら、そういうのはイヤだったんですよ。売れてようがなんだろうが、良いモノは良いと認めたいし、自分らもそこで気取らずにやりたいなと。
芹澤:それこそ俺たちは洋楽志向でもなければ、J-POP志向でもないんですよね。そこは柔軟にやっていきたいなって。
宮原:実際、俺たちの音楽って多ジャンル感がすごいというか。アルバム一枚のなかにジャンル的な幅もすごくあると思うんです。なにかコンセプトを立てることもないし。
ーーたしかに。でも、不思議とサウンド全体に統一感があるんですよね。
芹澤:多分それって、どの曲にもちょっとずつ醤油を入れてる感じだからじゃないかな。僕らはそのほうが美味いと感じる舌になっているというか。
ーーその「醤油」というのは何を指しているんでしょう?
柳下:たとえば、俺らは曲ごとに楽器を持ち替えたりしないんですよ。それにオーヴァーダビングを一切してないから、音色に統一感があるんですよね。で、確かにそれは「醤油」なのかもしれないなと。あとは構成もA→B→サビみたいなやつがけっこう好きだし、それこそ僕らは「J-POP生まれ、洋楽育ち」みたいなところがあるから、洋食でも醤油を使いたくなるタイプというか(笑)。
ーーなるほど。非常にわかりやすい例えですね(笑)。
柳下:でも、それこそ以前は洋楽と邦楽のあいだにもっと隔たりがありましたよね。今でこそ定額制サービスとかの影響で、みんなの音楽の聴き方が変わってきてる感じはするけど。
ーー確かにここ10年はSNSやサブスクリプションが音楽の聴き方を変えた時代でもありますよね。そのような変化はどう捉えていますか。
柳下:そこは特になにも意識してないんですけど、それこそフェス・ブームにしてもそうだし、時代の流れがたまたま自分達の音楽と合ってたんじゃないかなっていう気はしてます。今は試聴してもらえるチャンスも増えたし、みんながいろんな音楽に目を向けるようになった。それって俺たちみたいにちょっとマニアックなことをやってるバンドからすると、非常にありがたいっていうか。
宮原:趣味が多様化しましたよね。それこそ昔は誰もがビートルズを聴いて、皆がドリフターズの番組を観てたわけだけど、今の時代はそうやってひとつに集中することがないぶん、俺たちみたいなバンドに興味を持ってくれる人も少なからずいるわけで、それはありがたいよね。
又吉:2013年に日本武道館でやらせてもらったときは、まさか自分たちにそういう日がくるとは思ってもいなかったけど、ああいう状況になったのは確かに時代の影響もあったのかもしれない。かといって、無理に大きな目標を立てようとしたこともないんです。あくまでも地道にやっていった結果として、そうなればいいなと。
宮原:BUMP OF CHICKENの東京ドーム公演の写真とかを見ると「うらやましー!」とは思いますけどね(笑)。彼らとは年齢も同じだし。
柳下:まあ、そういう気持ちは勿論あるけどね(笑)。だからといって、「じゃあ、もっと売れそうな曲をつくろう」みたいな発想にはならないというか。あくまでも自分たちから自然に出てくるものを作っていきたいんです。
芹澤:でも、それこそフェスによって間口は広がったよね。ロック・フェスにEDMが混じってたり、ソウル・シンガーがいたり、そうやってひとつのジャンルにとらわれない場所で演奏してこれたのは、僕らにとっても大きかったんじゃないかな。実際、僕らの音楽自体もそれによって構築されたところはあって。それこそロック・バンドに感化されてロックっぽい曲が生まれたときもあったし。
ーーアコースティック・アルバムをつくったのも、そういう自然発生的なアイデアだったのでしょうか?
宮原:これに関しては、「アコースティックでやってほしい」というオファーをよく頂いてたというのが、まずひとつの理由ですね。あと、マイス・パレードのアコースティック・セットを観たことがあるんですけど、それがめちゃくちゃよかったんですよ。それでみんな興奮しちゃって、だったら俺らもやってみようよと。結果としてそれがこういう作品に至ったというか。
又吉:アコースティックは機材が少ないところもいいんですよね。それこそエレクトリック編成のときは搬入と準備だけで1時間くらいかかっちゃうんですけど、アコースティック編成のときはそれが20~30分で終わっちゃうから、そういう気軽さもすごくよくて。
ーーSPECIAL OTHERS ACOUSTICとしては、今回が2作目となります。
宮原:元々これはアルバム一枚だけで終わるようなものだとも思ってなかったんです。やっぱりアコースティック楽器の響きってすごくいいし、ダイナミクスもエレクトリック楽器より全然あるんで、そういうところにもハマっちゃったというか。
ーーすごくダンサブルな作品に仕上がっていますよね。
宮原:そこはすごく意識してますね。アコースティック・アルバムっていうとしんみりした作品をイメージするひともいるだろうけど、そうはならないようにしたというか。それこそマイス・パレードのライヴがそうだったみたいに、ちゃんとかっこよくて盛り上がるような音楽にしたいなと。
芹澤:僕らは常にライヴでやることを想像しながらつくっているので、そこの影響も大きいんじゃないかな。それこそクラブでよく演奏してたときは、いつもフロアのことを意識してたし。
ーーあくまでも現場で求められているものが重要だと。
宮原:はい。それに僕らは自分たちがかっこいいと思われたいんじゃなくて、音楽がかっこいいと思われたいんですよね。多分その気持ちは皆すごく強いんじゃないかな。
芹澤:うん。もっと音楽そのものに注目を向けてほしいよね。
宮原:そういえば、今ふと思い出したんですけど、見た目がいいのにマズい飯屋ってけっこうあるじゃないですか。俺、今それにめちゃくちゃイライラしてて。
ーーははは(笑)。最近そういう店にあたったんですか。
宮原:よくあたるんですよ、これが(笑)。で、やっぱり飯屋は見た目よりも美味しさを優先してくれなきゃイヤだなと。たぶん俺たちの根底にもそういう魂があるんですよね。だからこそ曲が大事っていうか。
芹澤:僕らは人を先導したいんじゃなくて、みんなと音楽が楽しみたいんです。それこそクラブ・カルチャーってそうじゃないですか。パーティの場では演者もお客さんも関係ないというか、そういう匿名性の高さがDJのかっこよさと思うんですけど、なんか俺たちもそういう感覚に近いというか。
柳下:それにライヴじゃないと伝わらないこともありますからね。それこそ今回のアルバムで良太がバスドラを踏みながらギターを弾いてるのとかさ。
宮原:たしかに(笑)。そこは音源だけじゃわからないもんね。
柳下:うん。そこはぜひツアーで確認してほしいな。
interview:渡辺裕也
photo:Yuma Totsuka
◎「STEADY」MUSIC VIDEO+特典DVD予告編:
https://youtu.be/WKKa1RWxWJs
◎リリース情報
『Telepathy』
2018/5/16 RELEASE
<初回限定盤(CD+DVD)>
VIZL-1367 3.780円(tac in.)
<通常盤(CD)>
VICL-64989 3.024円(tax in.)
<収録曲>
01. WOLF
02. Wayfarer
03. STEADY
04. IDOL
05. My Home Town
06. Birdie
07. ローゼン
08. CP
09. Mirage
10. Telepathy
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