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2017/12/08 18:00

Hi-STANDARD【THE GIFT TOUR】ライブレポート<大阪城ホール:1日目> by FM802 DJ 飯室大吾

 僕が大阪でHi-STANDARDのライブを観るのは21年振りになる。

 2011年、ハイスタが主催しているフェス『AIR JAM』で再始動して話題を呼んで以降、数々の場面で何度も信じられない様な景色を見てきた。でも今回は違う。フェスの主催者やイチ出演者としてではなく、自ら新しいアルバムを携えて全国を回るツアーバンドとして僕たちの目の前に現れるのだ。ツアー13本中、大阪公演には7本を終えた状態でやって来る。「そんな3人が、もう大阪にいる」、そう思うだけで前日の夜はやっぱり眠れなかった。

 このツアー中、唯一2デイズでの開催となった大阪城ホール公演の初日。会場前にある馴染みの掲示板に貼られたツアーポスターを見て「ほんとに始まるんだな」と少しだけ実感が湧き始めるけど、いや、まだちょっぴり信じられない。

 この日のゲストアクトを務めたのは10-FEET。会場が一体化できるライブアンセムのみでセットリストを組み、熱い想いとHi-STANDARDへのリスペクトだけで構成されたかの様なステージ。オーディエンスは、10-FEETがこのツアーに招かれたという喜びを共有するかのようにモッシュとダイブで応えている。「バンドを始めた頃の自分に教えてやりたい」というTAKUMAさん(Vo)の言葉。TAKUMAさんだけじゃない、今日ここにいるみんながそう思っているはずだ。もう一度大阪でライブを観られる日が来るよと、あの頃の自分に教えてやりたいって。

 そして、始まる。Hi-STANDARD。ステージ袖の階段をゆっくり上がってスタンバイする3人が見える。ハイタッチしたり、後ろに伸ばした手で最後のコミュニケーションを取り合い、リラックスした様子でステージに向かっていく。3人の肩の力の抜け具合(実際にはすごいプレッシャーもあったとお察しします。。)とは対称的なオーディエンスの歓喜の絶叫に迎えられてステージに揃った。各々の立ち位置に定まった瞬間、なんて絵になる3人なんだろうと思う。それは、言葉に困るほどかっこよかった。どの曲からライブが始まるのか、考えたって仕方ない。そんな予想をしたところで始まればそれが全て。そう思っていたけど、もう胸も頭も興奮で極限までパンパンになっている。18年振りの大阪で、あなた達はどんなスタートを切るおつもりなのですか。

 誰もが固唾を飲んでその時を待った1曲目は、「Growing Up」だった。ぶっ飛んだ。僕が初めてハイスタを観たのは、1996年に大阪城ホールからほど近くにある松下IMPホールで開催された、GREEN DAYのJAPAN TOURでのサポートアクトだった。実はこの時、「Growing Up」が1曲だけ収録されたサンプラーが、会場で配布されたということがあった。僕も今でも大切に持っているが、同じように1996年の大阪公演に想いを馳せている人がここにいるのではないかと、胸を熱くした。そして、今年発売された『The Gift』に収録されているタイトルを見た時から続編の様に思えてならなかった「We’re All Grown Up」へと続いたのには、長い時間と3人のストーリーを感じずにはいられなかった。ただここで曲順を間違えて4カウントで一度止まるのだが、違う曲のタイトルを叫んでしまった難波さん(章浩 Vo・B)はきっと、2曲目にしてかなりの高揚感の中にいたんじゃないかと思う。登場と共に放った「帰ってきたぞ大阪!!」の雄叫びの気迫からも、容易に想像がついた。

 その後大阪城ホールの大きなステージを隅々まで動いてオーディエンスとのアイコンタクトを試みるKENさん(横山健 G・Vo)の姿が印象的だった「Endless Trip」、アウトロでフロントの2人がお尻で挨拶を交わした「Dear My Friend」が続く。
そしてニューアルバム『The Gift』から「All Generations」が披露された。この日肌で感じたのは、新曲のライブでの輝きと生き生きとした存在感がすごいことだ。 今自分が目にしているHi-STANDARDは、過去のハイスタとは違っている。4枚目のアルバムを作り上げた現役の3ピースロックンロールバンドが、これまでの経験を糧にした上で、過去にとらわれず、覚悟を持って新しいバンドを結成したかの様な気迫と喜びを、我々は目の当たりにしている。

 当時から変わっていないんじゃないかと思うほど高いJUMPでブレイクを決める「New Life」 (単音を自分で打ち込んで、このイントロをポケベルの着信メロディーにしてた同級生もいたなーー)から、難波さんが大合唱を誘うように歌い出すアレンジもひとつの見せ場となっている「Fighting Fists, Angry Soul」へ。難波さんが歌詞に詰まってしまったところでKENさんにバトンタッチするという一幕も垣間見ることができた。この曲のギターソロでは、エアギターでKENさんになりきるオーディエンス(もちろんこの僕も!!)も客席にたくさんいた。

 至って真面目な口調での下ネタ炸裂のMCブレイクを挟んで「Hello My Junior」が始まった。とても短い曲なのだがリズムのまとまりが素晴らしく、8ビートを基調とした今のHi-STANDARDのモードを垣間見ることができる。後に続く曲のイントロは、かなり長くアレンジしてある言わば「導火線」だ。それは長ければ長いほど、オーディエンスのフラストレーションが蓄えられる。「あの曲が来るな」、というのはその場にいる誰もがもう気付いている。ステージからフロアのスピーカーの上に飛び乗って大阪城ホール全体を煽る難波さん。ついに曲の本編に入った「Teenagers Are All Assholes」は一種の起爆剤だ。会場の全てのブロックでダイブが起こって(こんな光景見たことない!!)、オーディエンスが大爆発を作り出す。いいぞ。 パンクロックショーのオーディエンスはこうでなければ。ツネさん(恒岡章 Dr)の「オイ!!」コール付きドラムソロから「Pink Panther Theme」、続く「Saturday Night」ではバスドラとフロント2人の煽りで空気を高めていく。それにしてもツネさんのキックはなんて上質な音がするんだろう。演奏を終えた瞬間のKENさんと難波さんのかなり強めのハイタッチに嬉しくなる。ああ、「きっとそういう事なんだろうな」って。

 しばしのMCタイムの間に「ハイスタって言ってみて」とちびっ子に向けられた誘いに、「ハイスターーー!!」と、精一杯の声で応える子どもたちの可愛い声。フェスはともかく、ハイスタのライブ会場が子どもの歓声で満ちるなんて、今までのキャリアの中でこんな瞬間があっただろうか。そんな子どもたちの声に大勢の観客の顔がほころんで、この日最初の最も暖かい空気が会場内に生まれる。今ツアーでは初披露となる「Catch a Wave」、「California Dreamin’」は、自分を含め、数あるカバーの中でもこれは演ってくれ…! と願っていた人も多いはず。燃えるようなアウトロを弾き終えた難波さんとKENさんは、ここでも軽いタッチを交わし、そのままギターソロから始まる「Pacific Sun」へ。メタリックで超絶な早弾きの瞬間にこそ笑顔が溢れるKENさんは、本当に素敵だ。

 次に演奏された「Another Starting Line」は、きっとこれからのハイスタと僕達にとって新しいスタンダードになっていくと確信している。これはハイスタと僕達で育てていく“みんなのうた”みたいだと、ライブで体感しながらそんな事を考えた。ハイスタがもう一度集まれた事の奇跡に触れた難波さんの言葉から始まった「Starry Night」、ゲストアクトの10-FEETもカバーで披露したこともあり、それを理由に「やめておくことにしました。」という3人のコント的MCをわざわざ挟み、むしろ10-FEETへ贈るような形で演奏された「Stay Gold」が大阪城ホールに鳴り響く。アルバムで聴いた時、こんなにも「みんなで歌ってくれ!」と言わんばかりのビッグコーラスの曲が今まであっただろうかと驚いたのと同時に、ライブで披露される時の会場のムードをずっと想像していた曲「Free」はやっぱり凄かった。観客の歌声があって初めて曲が完成する様な瞬間を味わうことができた。KENさんが歌い出し、何度もお互いの名前を呼びながら掛け合いで歌われる「Sounds of Secret Mind」、22年前にCDをラジカセに入れてプレイボタンを押した瞬間の気持ちが今でも蘇る「Maximum Overdrive」が続く。僕は、自分の言葉を添えて日々たくさんの楽曲をラジオで届けることを生業にしているけれど、「いろんな事があった。でも今はすべてを受け止められる」「人生って最高だな!」そんな難波さん、KENさんのの言葉から始まった「Brand New Sunset」は、どんなDJにも真似のできない曲紹介を聞いた気分になった。

 KENさんが書いた歌詞から決められたという今回のアルバムタイトル『The Gift』。ハイスタからの贈り物だと受け止めている人も多いと思うし、僕もそうだ。でもそのタイトルには、「ハイスタがもう一度集まって新しいアルバムを作る事ができた、それこそが神様からの贈り物のようだ」という想いも込められていると聞けば、メンバー自身がバンドを祝福しているようで、なんてこの3人は自分達が成し遂げている事に対して素直なんだろうと。そんな想いを抱えながら、本編ラストの「The Gift」を聴いた。ズバッと演奏を決めてさっとステージを立ち去る3人もかっこよかった。会場を根底から揺るがす様な大きな拍手・歓声と共にステージを降りた3人へ、まだまだハイスタを観たいと願うオーディエンスが、再登場をリクエストし続ける。その声にガッチリと応えるように再びステージに姿を現したアンコールは、「Friend Song」「 Stop the Time」「 I Know You Love Me 」という流れで始まり、観客のスマホのライトアップがとびきりの演出となった「Happy X’mas(War is Over)」(まさかこのカバーをライブで観られる日が来るなんて!!)へ。続く「Can’t Help Falling in Love」を終えたところでKENさんが一度ギターを置く。難波さんの「Hi-STANDARDでした!!」の言葉に、この曲が今日の最後だったんだなと感じ取る。だが、その難波さんはベースを手にしたままだ。しかも、KENさんとツネさんに視線を送り、その目は“やろう”と言っている。「おっきな輪っかを作ろう。上の人達もつながってみる?」の言葉で始まった、正真正銘のラスト「Mosh Under the Rainbow」!!!!客席すべてのブロックに巨大なサークルができている。スタンドのオーディエンスは肩を組み合って歌っている。ステージからだけでなく会場全体を照らす照明が灯され、そこに映るすべての顔が笑っている。大阪城ホールの真ん中に、まん丸であったかくて尖ったところがない、何て言ったらいいのかなあれは、でっかい愛情の塊みたいなものがドーーーンって生まれて、夢のライブが終わりを告げた。

 Hi-STANDARDがHi-STANDARDを超えていく。そんなライブだった。
ライブ前、親子で来ているオーディエンスが何組もスクリーンに映し出された。AIR JAM世代という言葉も生まれるほどに熱狂的な一時代を築いた3人が、当時まだ生まれていなかった人や盛んにライブに行ける年齢じゃなかった人達にも「今こそみんなこっちに来て楽しもう」と言ってくれている。

 今回のツアーのタイトル【THE GIFT】の後に“for All Generations”と付け加えてみたい。そんな思いに浸りながら乗った帰りの電車の中で、ライブの後にこんな気持ちになるなんて想像もしなかったけど、なぜか自分の家族に会いたくなった。
翌2日目やこれ以降のツアーだけじゃなく、この先にまだまだ続く3人の音楽人生の中で、Hi-STANDARDは何を生み出していくだろう、それを身もだえするほど楽しみにしながら、僕はハイスタツアー大阪初日を終えた。

Text by FM802 DJ 飯室大吾
Photo by
Teppei Kishida(Hi-STANDARD)
Daisuke Hirano(10-FEET )

<セットリスト>

10-FEET

01.RIVER
02.VIBES BY VIBES
03.1sec.
04.goes on
05.back to the sunset
06.Stay Gold
07.ヒトリセカイ
08.その向こうへ

Hi-STANDARD

01.Growing Up
02.We’re All Grown Up
03.Endless Trip
04.Dear My Friend
05.All Generations
06.New Life
07.Fighting Fists,Angry Soul
08.Hello My Junior
09.Teenagers Are All Assholes
10.Pink Panther Theme
11.Saturday Night
12.Catch A Wave
13.California Dreamin’
14.Pacific Sun
15.Another Starting Line
16.Starry Night
17.Stay Gold
18.Free
19.The Sound Of Secret Minds
20.Maximum Overdrive
21.Brand New Sunset
22.The Gift
-En-
23.Friend Song
24.Stop the Time
25.I Know You Love Me
26.Happy X’mas (War Is Over)
27.Can’t Help Falling In Love
28.Mosh Under The Raimbow

◎公演情報
【Hi-STANDARD「THE GIFT TOUR」】
2017年11月25日(土)大阪城ホール
GUEST:10-FEET

◎ツアー情報
東京・下北沢SHELTER
2017年12月11日(月)<SOLD OUT !!>
open 18:30 / start 19:00
GUEST: HOTSQUALL / DRADNATS
(問)H.I.P. 03-3475-9999

埼玉・さいたまスーパーアリーナ[TOUR FINAL]
2017年12月14日(木)<SOLD OUT !!>
open 18:00 / start 19:00
GUEST: マキシマム ザ ホルモン
(問)H.I.P. 03-3475-9999
協力:さいたまスーパーアリーナ

Hi-STANDARDオフィシャルHP:http://hi-standard.jp/

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