2017/12/12 09:00
2017年の年間ビルボード・ソング・チャートは、エド・シーランの「シェイプ・オブ・ユー」がNo.1に輝いた。
年明け1月6日にリリースされ、翌週のチャート(2017年1月28日付)でNo.1デビューしてから通算12週の首位をマークした、「シェイプ・オブ・ユー」。シングル曲としては、エド・シーランの全米1位獲得は初の快挙で、年間チャートでも2015年の2位にランクインした「シンキング・アウト・ラウド」を上回る、自己最高位を更新した。「シェイプ・オブ・ユー」と同日に発売された「キャッスル・オン・ザ・ヒル」(最高6位)は年間40位にランクインし、両曲が収録された3作目となるスタジオ・アルバム『÷(ディバイド)』も、米ビルボード年間アルバム・チャート4位の大ヒットとなった。「シェイプ・オブ・ユー」は、アメリカ以外でも母国イギリスやフランス、カナダ、オーストラリアなど主要各国で首位に輝き、ストリーミング配信サービスSpotifyでは14億回視聴され、今年最もストリーミングされた曲になった。バラエティ番組の出演や情報番組で生歌を披露するなど、プロモーション来日も大盛況だったエド・シーランは、まさに今年の顔といえるだろう。
「シェイプ・オブ・ユー」の12週を上回る、歴代最長となる通算16週のNo.1を獲得したルイス・フォンシ&ダディ・ヤンキーの「デスパシートfeat.ジャスティン・ビーバー」は、YouTubeの再生回数(ミュージック・ビデオ)が過去最高の44億回(2017年12月現在)を突破し、首位獲得週と動画再生回数の歴代記録を塗り替えたが、総合得点では「シェイプ・オブ・ユー」に及ばず、年間チャートでは2位に留まった。リミックスのフィーチャリング・ゲストであるジャスティン・ビーバーは、2016年の年間チャートで「ラブ・ユアセルフ」と「ソーリー」がワンツーフィニッシュを飾り、2年連続の年間TOP3入りを果たしている。今年は「デスパシート」の他にも、フィーチャリング・ゲストで参加したDJキャレドの「アイム・ザ・ワン」が12位にランクインした。ちなみに、1996年に同16週を記録し、歴代1位タイを死守しているマライア・キャリー&ボーイズⅡメンの「ワン・スウィート・デイ」も、同年の年間チャートではロス・デル・リオの「マカレナ」に敗れ2位だった。首位獲得数よりも、チャートインした長さで順位が決まるのが、ビルボード年間チャートの特徴でもある。
その傾向が強く出た、2017年の年間チャート。例えば、3位にランクインしたブルーノ・マーズの「ザッツ・ホワット・アイ・ライク」は、首位獲得が1週のみだったにもかかわらず、40週を超えるロングヒットを記録してTOP3入りしている。2016年の年間チャートと集計期間が割れてしまったためTOP10入りは逃したが、前シングル「24K・マジック」(最高3位)も同じく40週以上ランクインして年間16位にランクインした。2曲が収録されたアルバム『24K・マジック』も大ヒットし、年間アルバム・チャートでは自己最高位となる2位をマークしている。その他にも、首位には到達しなかったが驚異的なロングヒットで年間TOP10入りした曲が4曲もあった。
ザ・チェインスモーカーズとコールドプレイのコラボ曲「サムシング・ジャスト・ライク・ディス」は、最高位が3位ながらもTOP10に17週も居座り、年間チャートでは5位にランクインした。ザ・チェインスモーカーズは7位にも「クローサーfeat.ホールジー」がランクインしているが、同曲は2016年の年間チャートでも10位に滑り込み、2年連続のTOP10入りを果たしている。同じ曲が2年連続でTOP10入りしたのは、 1997年9位/1998年5位にランクインした、リアン・ライムスの「ハウ・ドゥ・アイ・リヴ」以来20年振りの快挙。また、昨年は「クローサー」の他にも「ドント・レット・ミー・ダウンfeat.デイヤ」が年間8位に輝き、2年連続で2曲をTOP10を送り込むという偉業を成し遂げた。今年は、42位にも「パリ」がランクインし、ザ・チェインスモーカーズは昨年に引き続き大活躍の1年だった。
カントリー・シンガー=サム・ハントの「ボディ・ライク・ア・バック・ロード」は、週間最高位6位で年間チャート8位にランクインした。この曲は、4月に開催された【アカデミー・オブ・カントリーミュージック賞】でパフォーマンスしたことで火が付き、夏にピークを迎えた後、集計期間終了の11月最終週まで粘り強くランクインし続けた。ポップに転身したテイラー・スウィフトを除けば、カントリー・シンガーの年間TOP10入りは2013年の9位にランクインしたフロリダ・ジョージア・ラインの「クルーズ」以来、4年振りとなる。9位のイマジン・ドラゴンズ「ビリーヴァー」も週間最高位は4位だが、TOP10に長期間滞在したことで年間TOP10入りを果たしている。イマジン・ドラゴンズは、2012年のシングル「レディオアクティヴ」も60週を超えるロングヒットを記録し、翌2013年の年間チャートで3位にランクインした。
ポスト・マローンの「コングラチュレーションfeat.クエヴォ」も、最高位が8位と順位はあと一歩だったが、10~20位までを行ったり来たりし続け、年間チャートでは10位にランクインした。ポスト・マローンは、最新チャート(2017年12月16日付)で新曲「ロックスター」が通算8週のNo.1を獲得している、今年ブレイクしたラッパーの1人。その「ロックスター」は集計期間が割れてしまったため、今年の年間チャートでは56位だったが、2018年の年間チャートではさらに上位に食い込むだろう。フィーチャリング・ゲストの21サヴェージも、自身のシングル「バンク・アカウント」が48位とブレイクの兆しをみせた。
ポスト・マローンと同じく、今年ブレイクしたヒップホップ・トリオのミーゴズは、「バッド・アンド・ブージーfeat.リル・ウージー・ヴァート」が6位、「Tシャツ」が52位、「スリッパリーfeat.グッチ・メイン」が86位にランクインし、フィーチャリング・ゲストとして参加したカルヴィン・ハリスの「スライド」が71位、現在ヒットしているグッチ・メインの「アイ・ゲット・ザ・バッグ」が93位と、TOP100に計5曲を送り込む大活躍をみせた。メンバーのクエヴォは、前述の「コングラチュレーション」と12位の「アイム・ザ・ワン」、そして36位にランクインした、ワン・ダイレクションのメンバー=リアム・ペインのソロ・デビュー曲「ストリップ・ザット・ダウン」にもフィーチャリング・ゲストとして参加していて、これらを含めると計8曲が100位内にランクインしたことになる。ワン・ダイレクションのメンバーは、テイラー・スウィフトとのデュエット曲「アイ・ドント・ワナ・リヴ・フォーエヴァー」(週間最高2位)をヒットさせたゼインが26位、デビュー・アルバム『フリッカー』がNo.1デビューを飾った、ナイル・ホーランの「スロウ・ハンズ」が32位、ハリー・スタイルズの「サイン・オブ・ザ・タイムズ」が87位にそれぞれランクインし、ソロ活動が充実した1年になった。
彼らの他にも、「バッド・アンド・ブージー」で注目されたリル・ウージー・ヴァートの「XO TOUR LLIF3」が年間13位、自身のタイトルとしては初の全米TOP10入りを果たした、米ブロンクス出身のラッパー=フレンチ・モンタナの「アンフォゲッタブルfeat.スワエ・リー」が15位、ポール・マッカートニーがツイッターに“マネキンチャレンジ”の動画を投稿したことがヒットに繋がった、レイ・シュリマーの「ブラック・ビートルズ」が16位、女性ラッパーのシングルとしては3年振りに全米首位を獲得した、カーディ・Bの「ボダック・イエロー」」が24位にランクインするなど、新人アーティストの楽曲が次々とヒットした、2017年のヒップホップ・シーン。自殺志願者に向けたメッセージ・ソング、ロジックの「1-800-273-8255 feat.アレッシア・カーラ&カリード」も話題を呼び、年間31位にランクインした。
年間アルバム・チャートを制した、ケンドリック・ラマーの「ハンブル.」は4位、フューチャーの「マスク・オフ」が14位、女性アーティストとして今年Spotifyで最もストリーミングされたリアーナは、DJキャレドの「ワイルド・ソーツ」(18位)と「ラヴ・オン・ザ・ブレイン」(33位)、昨年に続き今年も絶好調だったザ・ウィークエンドは、「スターボーイfeat.ダフト・パンク」(20位)と「アイ・フィール・イット・カミングfeat.ダフト・パンク」(34位)がダブル・エントリーするなど、人気アーティストの楽曲は依然として強い。彼らとは対照的に、シングル・チャート上位常連のテイラー・スウィフトやマルーン5、ケイティ・ペリーなどは勢い振るわず、今年はTOP10入りを逃している。
今年も、ストリーミングの強いヒップホップ/R&B系のアーティストが上位に多数ランクインしたが、新世代の実力派シンガー・ソングライターたちも勢いがあった。最高位が11位とアメリカではTOP10入りすらしなかったが、50週を超えるロングヒットで年間チャート11位まで上昇した、ジェームズ・アーサーの「セイ・ユー・ウォント・レット・ゴー~最愛の君へ」は、その代表格。日本でも高い人気を得ているチャーリー・プースの「アテンション」(22位)や、イケメン・シンガー=ショーン・メンデスの「ゼアズ・ナッシング・ホールディン・ミー・バック」(23位)、2月に初来日したアレッシア・カーラは、30位の「スカーズ・トゥ・ユア・ビューティフル」など計3曲がTOP40にランクインし、来年1月に開催される【第60回グラミー賞】で<最優秀新人賞>にノミネートされた。ジャスティン・ビーバーの「ソーリー」などを手掛けた女性シンガー・ソングライターのジュリア・マイケルズも、デビュー曲「イシューズ」が年間29位と躍進し、同<新人賞>にノミネートされている。
TOP10に2曲がランクインしたザ・チェインスモーカーズや、17位にランクインしたゼッドとアレッシア・カーラの「ステイ」、カイゴ&セレーナ・ゴメスのコラボ曲「イット・エイント・ミー」(27位)など、エレクトロ・ミュージックによるヒットは続いてはいるが、数年前の年間チャートと比較してみると、上位にランクインする曲は大分少なくなった。2017年は、ミーゴズやポスト・マローンなどがヒットさせたトラップ・ミュージックと、年間2位の「デスパシート」はじめ、DJキャレドやドレイク、カミラ・カベロなどがヒットさせた、ラテンやレゲエを取り入れた楽曲が流行したことが、傾向として挙げられる。2018年も、引き続きこういったサウンドがヒットの中心となるのか、はたまた、また違うブームが訪れるのか。来年は、ヒップホップやR&Bのアーティストだけでなく、ロック(・バンド)やカントリー・シンガーの活躍にも期待したい。
Text:本家一成
※関連リンク先の米ビルボード・チャートの掲載は、12月12日15時以降予定となります。
◎【Billboard HOT 100】2017年年間チャートTOP10
1位「シェイプ・オブ・ユー」エド・シーラン
2位「デスパシートfeat.ジャスティン・ビーバー」ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー
3位「ザッツ・ホワット・アイ・ライク」ブルーノ・マーズ
4位「ハンブル.」ケンドリック・ラマー
5位「サムシング・ジャスト・ライク・ディス」ザ・チェインスモーカーズ&コールドプレイ
6位「バッド・アンド・ブージーfeat.リル・ウージー・ヴァート」ミーゴズ
7位「クローサーfeat.ホールジー」ザ・チェインスモーカーズ
8位「ボディ・ライク・ア・バック・ロード」サム・ハント
9位「ビリーヴァー」イマジン・ドラゴンズ
10位「コングラチュレーションfeat.クエヴォ」ポスト・マローン
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