2017/11/17 17:00
2017年は米津玄師が大きく動いた一年となった。
かつては「ライブはあまりしたくない」と語っていた米津、いまもなお苦手意識はあるというものの、7月には2DAYSホールワンマン【米津玄師 2017 LIVE / RESCUE】を開催し、現在は来年1月の武道館公演2DAYSを含む自身最大規模の全国ツアー【米津玄師 2017 TOUR / Fogbound】の真っ最中。リリースとしては2月の『orion』、6月の『ピースサイン』というシングル2作品に加え、11月1日には約2年ぶりとなるニューアルバム『BOOTLEG』を世に放ったばかりである。
これまでの1st~3rdアルバムも各音楽チャートの上位には入ってきたが、今回の『BOOTLEG』は発売初週に16万枚以上を売り上げた。さらに伸び続けているセールスからもその人気ぶりは明らかだが、2017年の米津を語る上で外せないのがミュージックビデオの再生回数である。今年、YouTube上に公開された米津に関するMVは、本人名義の「orion」「ピースサイン」「灰色と青(+菅田将暉)」に加え、ハチ「砂の惑星 feat.初音ミク」、DAOKO×米津玄師「打上花火」の全5曲。その再生回数がすべて1000万回再生を突破したのだ。
この数字だけでも凄まじいが、注目すべきは今年YouTubeで1000万回再生を突破した全25曲のうち4曲が米津関連で、3曲以上がリスト入りしたのは米津のみ、ということである。10月10日公開の「灰色と青(+菅田将暉)」は集計外となったが、既に1500万回再生を突破しているため、2017/11/30付けの集計でリストに加わることが内定している。
◎米津玄師の各MVにおけるYouTube再生回数
【2017/10/31付け/プランテック調べ】
●DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO(64,360,746回)
●米津玄師 MV「ピースサイン」Kenshi Yonezu / Peace Sign(38,929,485回)
●米津玄師 MV「orion」(31,150,448回)
●ハチ MV「砂の惑星 feat.初音ミク」HACHI / DUNE ft.Miku Hatsune(12,234,353回)
●(集計外)米津玄師 MV「灰色と青(+菅田将暉)」1500万回突破(2017/11/17時点)
なお、チャンネル登録者数は約98万人。これまでの全MVの再生回数は合計5億を超えている。
◎米津玄師のYouTube全体像
【2017/11/16時点】
●米津玄師のチャンネル登録者数 980,685人
●米津玄師YouTubeのMV再生数 合計5億超え(正確には5億1,610万、クロスフェードやSPOTは含まず純粋なMVのみ)
●驚異的なYouTube再生回数=米津玄師が“時代の寵児”たる所以
米津の2017年を物語る今回の快挙だが、その立役者を一つ挙げるとすれば、2016年にシングル『LOSER / ナンバーナイン』としてリリースされた「LOSER」だろう。3rdアルバム『Bremen』発売以降、約1年ぶりに発表された新曲とあり、それだけで話題性は十分だったのだが、MVが公開されるや否や巷がどよめいた。それまで自分自身を大々的に押し出してこなかった米津が、昔はコンプレックスの一つでもあった長身を活かしたダンスを披露していたのである。ボカロ時代には自らのイラストを用いて動画を制作し、その後CDジャケットやライブグッズを自ら手掛けるなど、多才ぶりは当初から発揮されていたものの、まさかダンスという表現方法が持ち出されてくるとは当時誰も思わなかった。
現時点で4800万回再生を超えているこの「LOSER」後のアプローチも彩り豊か。新鋭気鋭の映像作家・dutch_tokyoこと山田健人を監督に起用した「orion」では楽曲のイメージを美しい映像へ抽象的に結びつけ、ストレートなギターロック「ピースサイン」にはバンドを率いての演奏シーンを収録。ボカロ回帰曲「砂の惑星 feat.初音ミク」は暗喩的表現を詰め込んだオリジナルアニメーション、映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』の主題歌「打上花火」は同映画のアニメーション仕様で、「灰色と青(+菅田将暉)」には菅田将暉本人が出演しているが、これは初めて世間的に知名度の高い役者を起用したMVとなった。
上記を含め、現代性と郷愁を上手く融合させた米津の楽曲は幅広い年齢層に受け入れられ、音楽シーンを席巻するまでにもなった。それでもやはり、楽曲だけで米津を語ることはできないだろう。もちろんその土台あってこそとはいえ、例えば『BOOTLEG』のCDセールスにしても、自ら手がけるジャケットや、常に新しい工夫がなされる魅力的なパッケージは間違いなく一つの要因となっている。驚異的なYouTube再生回数もまた、多くの人の胸を打つ楽曲に多くの人が何度も観たいと思う映像が合わさることで叩き出されたものであり、これが1曲ではなく何曲も続くということは一過性の流行りでもない。つまり「2017年のMV全5曲がYouTube再生回数1000万回突破」は、多岐に渡るフィールドで強い存在感を放ってきた米津だからこそ成し得た結果の一つであり、米津が“音楽の寵児”に留まらない“時代の寵児”たる所以を示すデータの一つとも言えるのである。
あるいは、こんな意見もあるかもしれない。複数が1000万回再生を突破とはいえ、そもそもMVを1曲しか公開していないミュージシャンだっているだろう――もちろんその通りである。だからこそ見過ごせないのだ。短期間で多くの作品を生み出すのには多くの困難が伴う。それが高い評価を受けるものであるなら尚更だ。ただ、米津にはそれを実現できるだけの精神力と体力があった。勢いがあった。土壌がなければ育つものも育たない。米津は今回の快挙を可能にする土壌を自らの手でしっかり耕したわけである。
自身の活動について「同じことをしていてもつまらない」と語るように、次になにが起こるのかが想像できない。自身のTwitterでは「こんどはどこへ行こうかねえ」と呟いていたように、音楽とはまったく関係のないところにだって行くかもしれない。来年はどこで、どんな活動をしていくのか、そしてどんな世界を見せてくれるのか、それは神のみぞ知るところだろう。
PHOTO:Jiro konami
TEXT:佐藤悠香
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