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2017/10/31

スクリレックス/フューチャー/5Hローレンら豪華制作陣とともに本格的なレゲエにも挑戦した意欲作 / 『BEACH HOUSE 3』タイ・ダラー・サイン(Album Review)

 2010年、ラップ・チャート12位をマークしたYGのシングル「Toot It and Boot It」にフィーチャリング・ゲストとして参加し注目された、米ロサンゼルス出身のラッパー=タイ・ダラー・サイン。2016年はフィフス・ハーモニーの「Work From Home」と、映画『スーサイド・スクワッド』のサントラ盤に収録された「Sucker for Pain」にゲストとして参加し、どちらも大ヒットを記録した。まさにブレイク真っただ中といえるだろう。

 その絶好のタイミングでリリースされた新作『BEACH HOUSE 3』は、全米アルバム・チャート14位、R&Bチャート4位、ラップ・チャートでは3位のスマッシュ・ヒットを記録した2015年のデビュー・アルバム『Free TC』から2年振り、2作目のスタジオ・アルバム。本作は、ミックステープとしてリリースされた『BEACH HOUSE』(2012年)、 『BEACH HOUSE 2』(2013年)の続編となる“BEACH HOUSE”シリーズの第3弾で、フル・アルバムとしては初のリリースとなる。

 プロデューサーには、DJマスタードやマイク・ディーン、マイク・ウィル・メイド・イット、サウスサイドなどの超売れっ子から、アリシア・キーズやジェニファー・ハドソンなどの実力派シンガーを手掛けるジェフ・ギテルマン、ジル・スコットからジャスティン・ビーバーまで、幅広い世代のシンガーを担当してきたベテラン・プロデューサー=プー・ベアー、グッチ・メインやフレンチ・モンタナの最新作に参加したクリストファー・ドットソンなどがクレジットされている。

 ラッパーのアルバムらしからぬ(?)アコースティック・ギターの弾き語り「Famous」から始まる本作。楽園をイメージしたジャケ写やアルバム・タイトルからも予想がつくが、レゲエやチルアウト系のヒップホップなど、リゾート感漂うナンバーがメインとなっている。特にその色が強く出たのが、スクリレックスがプロデュースした先行シングル「So Am I」。この曲では、ボブ・マーリーの実息であるダミアン・マーリーをフィーチャリング・ゲストとして招き、本格的なレゲエに挑戦している。

 リル・ウェインとザ・ドリームがコラボした「Love U Better」や、フューチャーとスワエ・リーが参加した「Don't Judge Me」など、大流行中のトラップ・ソングもあるが、ボーカル・パートを多くしたり、テンポを少し速めたり、メジャー・コードにすることで、暗く重たい印象を払しょくしている。「Don't Sleep on Me」や「All the Time」、フィフス・ハーモニーのローレン・ジャウリギーとデュエットした「In Your Phone」など、ダークなトラップ・ソングもあるが、アルバムのコンセプトを貫くという意味では、こういった曲は逆になかった方が良かったかもしれない。

 美声で人気のR&Bシンガー、ジェレマイが脱力して歌う「Dawsin's Breek」や、「Uber Everywhere」のヒットで知られるラッパーのメイドインTYOが参加した「Lil Favorite」などのチルアウト系から、トロピカルな「Side Effects」や、YG参加の80年代風ディスコ「Ex」などのダンス・トラック、不安定なリズムと不気味なメロディが続く、ファレル・ウィリアムズがプロデュースと歌を担当した「Stare」など、浮遊感漂うナンバーなど、リゾート・ソングが目白押し。夕日を眺めながら聴きたい、ブルージーな歌モノ「Message in a Bottle」や、昨年「Luv」の大ヒットでブレイクしたカナダ出身のラッパー/シンガーのトリー・レーンズがボーカルを担当した「Droptop in the Rain」などのミッド・チューンも完成度が高い。

 また、涼やかな「Famous Lies」や、波の音を引用した「Famous Excuses」、遠い夏を表現した「Famous Amy」など、所々に配置したインタールードが良いアクセントになっている。間もなく迎える冬に、こういったリゾート・アルバムを聴くのもオツなもの。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
『BEACH HOUSE 3』
タイ・ダラー・サイン
2017/10/27 RELEASE

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