あのファレルが言葉を失うほど、彼女の楽曲「Alaska」に感銘を受けたことが
話題となりブレイクを果たした、NYブルックリンを拠点に活動する現在23歳のシンガー・ソングライター、マギー・ロジャース。ミレニアルらしいモダンな感性とフォークなどオールドスクールな音楽への造詣の深さを兼ね備えた、ジャンルレスなポップ・ミュージックを紡ぐ彼女が【FUJI ROCK FESTIVAL '17】に出演するために初来日を果たした。少しあどけなさが残るものの、可能性に満ちた
ステージを披露してくれた彼女だが、ライブ後に行われたインタビューでは、表情をコロコロと変えながら、初来日や自らの音楽についてフランクに話してくれた。
◎初来日となりますが、観光する時間はありましたか?
東京で2日間オフがあって、フジロックのあとにも何日かオフがあるの。日本にいる時間を伸ばすために、入念に計画を立てた。日本って何もかもが“配慮”されている。住んでいる人々は自分が置かれている状況や環境を考慮していて、その気遣いは尊敬すべきだと思う。だから、来れてとても嬉しく思う。
◎今夏は、世界各国の錚々たるフェスに出演していますね。
アメイジングね。色々なフェスを体験することができてクールだし、それぞれフィーリングは違うんだけど、ステージからの光景は何となく一緒かなって感じてる。音楽の一番好きなところは、コミュニティ意識が生まれるところ。それを目の当たりにできるのがフェスだと思う。
◎フジロックは多くの自然に囲まれたフェスで、マギーの楽曲には自然とリンクする詞が頻繁に登場しますが、何か感じることはありますか?
この場所が特に美しいのは標高が高くて、雲がとても間近にあるから。山頂から霧が立ち上る光景も、ものすごくアメイジング。今年の夏はこのような美しい場所に次から次へ行けて最高ね。
◎これらの体験から、いい曲が生まれることを期待してます。
だといいな~(笑)。どうなるかわからないけど。
◎自然に惹かれるのはなぜですか?
穏やかだからかな。私は周りの人や環境のエネルギーに敏感だから、自然の中にいると足が地に着く感覚がある。音楽は常に私の頭に中で流れているもので、それを聴き取るために周りが静かな方がいいと感じるの。だから、静かな場所や時間を見つけることができれば、音楽はおのずとついてくる。
◎今日のステージで「Hashtag」は、現在世の中で起こっている変化に感化されて書かれた曲と言っていましたが、それがツアーをする上で浮き彫りになった部分もあるんですか?
今アメリカ国内に起こっている政治的な変化についての曲なんだけど、世界中をツアーする上で、この問題を私自身が曲を通じて認めることで、いくらか気が楽になったようなが気がする。好き、嫌い関係なく、私はアメリカ国民で、祖国を代表しているわけだから、自分の国で起こっていることにライブ中に触れることによって、心が軽くなると思う。
◎なるほど。あと、パフォーマンスできる曲がまだ少ないって、冗談ぽく言ってましたね。
そう(笑)、だから昔書いた曲に加え、新曲をいくつかパフォーマンスしてる。新曲はもしかしたらアルバムに収録されるかもしれないけど、まだわからないな。
◎とはいえ、これまでにインディーで何枚かアルバムをリリースしてますよね。
うん。変な話なんだけど、大学を卒業した時、音源を全部取り下げてるの。
◎それはなぜ?
就職活動をしなきゃいけないから、Googleで自分の名前を調べられても引っかからないように、と思って。音楽関係やジャーナリストの仕事につきたいかもって思ってたんだけど、面接する時にもし音楽をやっていることが知られたら、真剣に仕事に取り組む気持ちがないと思われるんじゃないか、って考えてたから。でも、そんなことを心配する前に、ネットで検索すると名前が出てくるようになっちゃったんだけどね(笑)。だから、近いうちに再アップできると思う。今はタイミングを見てるところ。
◎「Alaska」が多くのリスナーに届き、マギーを取り巻く状況にも大きな変化があったと思います。
ちょっと圧倒されている部分もある。卒業してすぐこの業界に入ったから、慣れなきゃいけないことがたくさんあって…。私が置かれている状況はユニークだけど、同時に大学を卒業したばかりの新社会人にも当てはまると思うの。卒業1年目で、初めての仕事について、同僚とはどう接したらいいのか学んだり。私がこの仕事を選んだことで、友達との関係にも変化があったし、人生においてひとつの過渡期にある感じね。身の回りのことをやってくれているチームは会って1年ぐらいだけど、気を使うこともないし、とてもいい仕事をしてくれている。
◎元々はフォーク・ミュージックをプレイしていたとのことですが、ダンスやポップ・ミュージックに傾倒した現在のスタイルはどのように生まれたのですか?
大学3年生の時にフランスで勉強していたことがあるの。当時ベルリン出身の友人が多くいたから、その時初めてドイツに行って、ベルリンのクラブに連れて行ってもらったんだけど、そこでハウス・ミュージックに出会ったことは、私の人生を変えたと言っても過言ではない。ダンス・ミュージック…ダンスすることもそうなんだけど、動きって音楽を理解するための最も本能的で原始的な方法だと思うの。メロディやフォーク・ミュージックが古典的なストーリーテリングの技法であるのと同じように。フォーク・ミュージックって静かだけれど、エモーショナル。その概念がリンクした時…その二つの音楽によって同じように自分のエモーションを発散できることに気付いた。
◎パフォーマンスの面はどうでしょう?フォークとダンス・ミュージックでは、異なりますよね。
パフォーマンスに関しては、これまでとは全く違う。過去にロック・バンドに所属していたこともあって、そのバンドではベースを弾いていたんだけど、すごくラウドで…NYのバーなんかで演奏してたんだけど、ライブはやはり毎晩違う。ライブはパフォーマーと観客の対話から成るもので、多くの場合、観客に許可を与えられてこそ、パフォーマーが自由に動くことができるような気がする。これまでパフォーマンスする時は、常に楽器を持っていたから、ステージを隅から隅まで探求するのはエキサイティングであるとともに、自分の体をどのように使えるのかを考えるのも興味深い。急にマイクだけになって、「どうしよう~」って以前は思っていたけれど、今は可能な限りダンスしてる。
◎気になるニュー・アルバムについても伺いたいのですが、現在絶賛制作中?
そう。制作に取り掛かっている。
◎方向性など、何か明かせることはありますか?
一応あるんだけど、完成するまでは話したくないかな。
◎あとどれぐらいで完成するとかは?
う~ん、自分が今ここって思ってるところ。ただ言えるのは、アルバムを通じて表現したい、言いたいことがあって、それを表現できる機会を与えられて嬉しいということ。
◎分かりました。では、マギーにとってソングライティングの醍醐味とは?
私は自分で曲のプロデュースもするから、リズムについて考えるが好き。そして言葉が好き。それが私にとって第一で、最も価値があるもの。人が何を伝えたいのかというのは、大切なことだから。曲を書くのって、論文を3Dで書くような感じ。一つの完全なるアイディアのプレゼンテーションを行うために、マスターしなきゃいけないものがたくさんある。とにかく何かを創るというプロセスに惹かれるの。
◎全くアイデアが浮かばないことやアイディアがたくさんありすぎて上手くまとめられなかったり、創造プロセスにハードルはつきものですが、過去にそういった経験をしたことはありますか?
大学生の時、2年半ぐらいずっと曲が書けない時期があった。それも音大に通っているわけだから、音楽が作れないなんて、おかしな話でしょ。あの時はとても苦悩した。大きな要因は、私自身がパーソナルな部分で大きな変化を遂げている途中だったこと。私の音楽はほとんどの場合、自分のアイディアを投影したもの。自分自身が変化をしていた時は、その変化がどんなサウンドだか、全く分からなかったんだと思う。アイディアが浮かばない時は、慎重になりすぎていたり、こだわりすぎている時だと思うから、ストレスを溜めずに、創造は楽しいからするものなんだ、って思い出す。そうやって進めていくと、大体いいものが生まれる。
◎書き出すと早い方ですか?
うん。私がこれまで書いた曲のほとんどは15分ぐらいとか短時間で出来上がったもの。頻繁に曲は書かないんだけど、書き出すと早いんだ。
◎ポップ・ミュージックの現状については、どのように感じますか?
しばらくミニマリストなフェーズにあったと思うんだけど、生の楽器を徐々に取り入れるようになってきている。90年代は、アコースティックの楽器をツールとしていたポップ・シンガーソングライターがたくさんいたけれど、ダブステップがブームになってから音楽は大分ミニマリストになった。ドラムンベースとか。今はその中間に回帰しているんじゃないかな。
◎そんな中でマギーが注目している新人アーティストやバンドはいますか?
私はThe xxが大好き!新人ではないけど、今のポップ・ミュージックを象徴しているような人たちね。ライブも、バンド・サウンドからジェイミーxxよりのハウス・ミュージックまで網羅したとても幅広いものだし。そしてロード。新作にはピアノがたくさん使われているけど、ビートもこれまで以上に興味深いものだった。
◎では最後に“夏の1曲”を教えてください。
ザ・サンデイズの「Summertime」。まさにピッタリでしょ。
◎リリース情報
『ナウ・ザット・ザ・ライト・イズ・フェイディング』
マギー・ロジャース
2017/2/17 RELEASE
デジタル配信