2017/05/31
中田裕二の全国ツアー【TOUR 17 “thickness”】の最終公演が5月28日、東京・昭和女子大学人見記念講堂にて開催された。
最新アルバム『thickness』を携えて、3月25日の兵庫・神戸SLOPEを皮切りに計11都市を回ってきた【TOUR 17 “thickness”】。
「『thickness』でさらに分厚く逞しくなりました中田裕二の音楽を、今日はたっぷりと楽しんでいただきたいと思います!」という自信に満ちた中田裕二の言葉以上に、何よりその歌とサウンドそのものが、彼のポップとロックの芯の太さを雄弁に物語る、珠玉のアクトだった。
辣腕メンバーを擁したラインナップでこの日のステージに臨んだ中田。奥野/白根/平泉/真船の繰り出す分厚いアンサンブルとともに、粘るようなソウルファンクのグルーヴを繰り出す「femme fatale」からライブはスタート。
そこからソリッドなロックナンバー「リビルド」を熱唱、さらに「ツアー千秋楽、人見記念講堂へようこそ! えー、女子大です。でも残念ながら、女子大生には会えませんでした(笑)」というMCで客席を沸かせたところで、フォークロア調の「静かなる三日月」へと序盤から『thickness』の楽曲を畳み掛け、会場の空気を熱く震わせていく。
中田の歌声がカトウ&木村のコーラスと描き出す極上のハーモニーが、スロウ&メロウな「何故に今は在る」ではメランコリックな叙情性を帯びて広がり、ミドルナンバー「IT'S SO EASY」ではゴスペルのような壮麗な力強さとともに鳴り渡っていく。
長らく「歌謡ロック」と漠然と形容されてきた自分自身の表現世界を、「“中田本来の洋楽志向が反映されたサウンド”と“和の情緒漂うメロディ”の融合体」として明確に再定義した『thickness』の楽曲群が、中田の歌声にさらに色彩感とスケール感を与えて、ホールの大空間を高揚感で満たしてみせる。
「本当に、いろんな意味でひとりぼっちな存在になってしまったんですけども……ジャンル的にね(笑)。でも、それがすごく今、自信となっていて」と語る中田が、「このアルバムの中で、特に『これは俺しか作れんぞ』と思った曲があります」と披露したのは「Deeper」だった。謎めいた愛の奥底へ潜行していく歌の世界観と、クールかつ濃密な音像が渾然一体となって、日本のシーンにおける「シンガーソングライター」像すらも刷新するような音空間を生み出していた。
中盤も「ギミー・ナウ」「ラフター・パーティー」「ただひとつの太陽」といった『thickness』の流れに、椿屋四重奏時代の楽曲「共犯」のリアレンジバージョンを織り込んで、ブラック・アイド・ソウルの極致の如き時間を展開してみせた中田。
「この旅で一番いい演奏かもしれないですね」と満足げな表情を見せた後、「ここから先も、グルーヴィーな曲でグイグイ押していきますんで!」と「誘惑」からライブは終盤へ向け一気にクライマックスへ。そのまま「STONEFLOWER」「MY LITTLE IMPERIAL」、さらに椿屋曲「恋わずらい」で客席の熱気を刻一刻と高めていく。
「みんなひとつになるための“愛の作業”を――」と会場一丸のコール&レスポンスを巻き起こしてから突入したのは、『thickness』のラストナンバー「THE OPERATION」。一面にハンドウェーブと多幸感が広がる客席を、本編を締め括る「愛に気づけよ」のタイトなビート感と晴れやかな歌声で歓喜の果てへと導いてみせた。
「まあ、若い人たちが聴いてるような流行りの感じとはちょっと違うかもしれないですけど。そればっかりでもつまらないし、俺みたいな音楽もたくさん聴かれないとおかしくないか? っていうね(笑)」
アンコール冒頭のMCで中田は、自身のスタンスをそんな言葉で話していた。
「孤独な戦いではありますが、自分の音楽に賛同してくれるメンバーとか、みなさんすべてがあってこそのいい旅だったなと思います。今、素直に思うことは……とにかく売れたいです! このままじゃ悔しくて、夜も眠れません!(笑)。ピカピカ光るような名曲を書いて、どんどん世の中に攻め続けていこうと思っています」
そんな決意表明とともに、「リバースのカード」から「DANCE IN FLAMES」のカーニバル的な狂騒感へと突入して大団円――かと思いきや、鳴り止まない手拍子に応えて中田とメンバーが三たび登場。Wアンコールのダンサブルなソウルナンバー「MIDNIGHT FLYER」で高らかなクラップが沸き起こる中、マイク片手にステージから飛び降り、伸びやかなメロディを歌い上げながら客席を練り歩く中田の姿に、ひときわ熱い歓声が広がっていった。
TEXT:高橋智樹
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