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2016/11/01

元Tame Impalaのメンバー、ニック・オールブルック率いるサイケデリックポップバンド、PONDのLA公演をレポート

   ここ数年、オーストラリア発サイケデリックロックバンドの勢いが止まらない。Tame Impala, Jagwar Ma, King Gizzard & The Lizard Wizard, The Laurelsなど。Pondもその一角であり、ここアメリカでの人気を着実にものにしていて、特にLAではカルト的人気がある。PONDのフロントマンのニック・オールブルックは元Tame Impalaのメンバーで、現Tame ImpalaのメンバーでGUM名義でソロとしても活躍するジェイ・ワトソンもニック同様バンドの中核としギター&キーボードを担当している。

ニックは今年新作『Pure Gardiya』を、ジェイも3枚目となるアルバム『Flash In The Pan』リリースし精力的な活動を続ける彼らのロサンゼルス公演の模様をお届けする。

ロサンゼルスのダウンタウンにある老舗ライブハウスTeragram Ballroom。103年前に建てられた元映画館。会場のドアの前には多くの人が列をなし開場を待っていた。会場に入った観客達はまずドアの正面奥にあるアーティストグッズへと向かう。テーブルにはPONDの新旧アルバムレコードに加えて、ジェイのソロプロジェクトGUMのレコードまで揃っている。そしてこの公演でしか手に入らないシリアルナンバー入りのポスターを多くの人が手にし、会場内に吸い込まれていった。

この日の公演はソールドアウトにはなってないもののキャパシティ600人の会場はほとんど満員状態。観客のPONDコールに迎えられニックがステージ脇からジャンプしながら登場。ジェイは日本で買ったというお気に入りの浴衣を着ていた。ジョーとジェイミーが続いて、新しいサポートメンバーがドラムとして登場。

ショーは「Elvis’ Flaming Star」からスタート。サイケデリックなヴィジュアルイメージがステージ上のスクリーンに映し出されると観客はスペクタルな異空間へとトリップしていく。中盤のハイライトはファンなら思わず暴れたくなるエレクトロ・ダンスチューンの「Don’t Look at the Sun or You’ll Go Bling」ドラムとベースのビートが観客の手拍子とともに波打つ。この曲を待ち望んでいた興奮気味の観客の中へニックがいきなりダイブすると同時にクラウドサーフが始まり、会場のボルテージは最高潮に達した。ジェイがジェイミーのキーボードを飛び越えドラムセットを叩いたかと思うとすぐさまジョーの元へ行きギターセッションが始まる。ニックは何度もダイブとクラウドサーフを繰り返した後、観客席からステージを観て雄叫びをあげている。その後ステージに戻り、即興のリリックをオペラのように歌い出し、再び興奮が最高潮に。「You Broke My Cool」ではニックがまたもやするりとステージを降り観客の中で歌い始めると、彼の周りに自然とサークルが…ニックがマイクを観客に差し出しYeah Yeah Yeahの掛け声を歌わせる。観客と一体になりながらショウをクライマックスへと導いた。

ラストに披露したのは「Man It Feels Like Space Again」。この曲のニックのギターソロは何度聴いても毎回違うアレンジで観客をうならしてくれる。その華奢な体からジミー・ペイジのようなプレイが垣間見れるとは一見想像しがたい。そんな彼独特の叙情的なプレイに観客は酔いしれるのだ。観客が陶酔感に浸っていると、ギターソロが終わるやいなやギターをステージに投げ捨て、フロアにダイブしこの日最後のクラウドサーフを堪能した。ステージに戻り「新しいアルバムと一緒に来年戻ってくるよ!またね!」と伝えショウが終了した。

ショウを終えると、まるでカルト映画の『ロッキー・ホラー・ショウ』を観た気分になった。ニックのポップでキッチュなビジュアルからは想像できないような強烈な存在感に、ロックンロールとサイケデリック、そしてグラムロックを融合した毒々しく官能的で魅力的なステージが観客の心を始終鷲掴みにする。「Don’ t Look at the Sun or You’ll Go Bling」の一節のように1度観たらやみつき。何度でも観たくなるーそんな中毒性が彼らのステージにはあった。

Tame Impalaを脱退したニックが自らフロントマンとなり、彼のやりたかったものがPONDに集約されている。作曲能力、ギターリフやバッキングのアレンジ能力、構成力と何もかもがニック流に凝っていて計算されている。実験的のように曲を次々と生み出してくがどれも完成度が高い。

そして彼の多面体な音楽的才能はPONDだけでは収まらずNick Allbrookというソロ名義でさらに知ることができるということだ。来年はPONDの新作がリリース予定だそうだ。メンバー全員が来日するのを心待ちにしていると言っていたので、来日ツアーにも期待したい。

Pond@Teragram Ballroom
Oct. 17th 2016
Setlist
1. Elvis’ Flaming Star
2. Whatever Happened to the Million Head Collide
3. Waiting Around for Grace
4. Giant Tortoise
5. Sweep Me Off My Feet
6. Don’t Look at the Sun or You’ll Go Bling
7. Sitting Up on Our Crane
8. You Broke My Cool
9. Man It Feels Like Space Again

Photo & Text: ERINA UEMURA

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