2016/12/22
世界最高峰のオペラハウスの全貌を紐解くアート・ドキュメンタリー映画『ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿』より、指揮者トスカニーニの偉業を紹介した本編映像が一部解禁となった。
「トスカ」「蝶々夫人」を作曲した、ジャコモ・プッチーニ。彼が手掛けた名曲の数々は、オペラ好きならずとも間違いなく耳にしたことがあるだろう。実際、1年の中で最も重要なステージとされる、オペラシーズン初日(12月7日)が今年も幕を開け、演目はプッチーニの「蝶々夫人」初演版が選ばれた。実は、本作の初演版は不評につきブーイングの嵐となったいわくつきの作品で、今年はなんと“112年ぶりに再演”ということでも大きな話題となっている。やじが飛んだ1904年の初演時とは異なり、今年の公演には13分間もの間、スタンディングオベーションが贈られた。
意外なことに、プッチーニは生前、オペラに重厚な芸術性が欠如されていると言われ、大きく評価が分かれる音楽家だった。そんな彼が見直された背景が、このたび公開された映像で明らかにされている。それは、1898年からスカラ座の音楽監督も務めた指揮者アルトゥーロ・トスカニーニとプッチーニにまつわる逸話だ。プッチーニのオペラ「トゥーランドット」は、1926年にスカラ座で初演を迎えた。しかし、プッチーニは楽曲を仕上げる前に亡くなったため、未完の遺作として、トスカニーニは指揮を振ることとなる。トスカニーニは演奏の途中で突如指揮を止め、プッチーニが“その部分で息を引き取った”ことを告げ、劇場を大きな感動の渦に引き込んだのだ。
途中で指揮を止めるなど、本来は考えられない“事件”だが、トスカニーニの熱い信念がなせる業は後世にも語り継がれ、結果的にプッチーニの音楽家としての評価を底上げする契機にもなった。その後もトスカニーニは、オーケストラ・ピットを低くし、女性客に帽子を取らせ、アンコールを禁止、さらに聴衆の注目を歌手や作曲家から指揮者へと変化させるなど衝撃の変革を次々と行っていく。そして、彼はワーグナーやドビュッシーといった外国の作曲家の新しい曲もレパートリーに取り入れ、その後のスカラ座の礎を築いていった。映像では、スカラ座と縁が深い、音楽学者のフランコ・プルチーニ、指揮者のフランチェスコ・マリア・コロンボ、ダニエル・バレンボイムらがエピソードを語るほか、ワーグナー作「トリスタンとイゾルデ」の2007年上演版のアーカイブも盛り込まれている。
◎『ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿』映像
https://youtu.be/cK3UjKlIU4s
◎公開情報
『ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿』
2016年12月23日(金・祝)公開
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