2016/10/29
コンサートから帰ってきて、その後も僕はずっとTLCを聴いている。アルバム『クレイジーセクシークール』に持っていかれた94年や95年の感覚が甦った気分、とでも言えばいいだろうか。彼女たちへの想いが今また盛り上がりまくる、そんな会心のステージを体験することができたのだ。
まだ公演が残っているのでセットリストへの言及は避けるが、あの曲に始まってあの曲に終わるプログラムは、文字通りヒット曲の連発。選曲のすべてがヒット・チューンで埋め尽くされるコンサートというのを、僕は初めて経験した気がする。ハスキーな声のトーンに磨きがかかっているT-ボズと、楽しそうな笑顔でキュートなダンスをキメるチリ。ふたりがTLCをしっかりエンジョイしている様子が手に取るように伝わってくるのがたまらない。
そう、それはまさに、この10数年の開店休業がウソのような、ふたりの輝きだった。デコレートされたデニムの上下に身を包み、スターでしか持ちえないオーラがたっぷりと振り撒かれていく。亡くなったレフト・アイのラップが曲の途中で流れると、満員の会場から一層大きな歓声が沸き上がったりもする。
フレッシュな勢いが躍動する『エイント・2・プラウド・2・ベック』。ベイビーフェイスらの貢献によって90年代R&Bの頂点を極めた『クレイジーセクシークール』。近未来的な先鋭性を聴かせる『ファンメール』と『3D』。これら4作のナンバーが、今のふたりによってよりスクエアに、ナチュラルに消化されていく。ベース、ドラムス、キーボードという3人編成のバンドと男女4人のダンサーとの呼吸も申し分ない。途中、セクシーなラヴ・ソングのあの曲では、観客の男性をステージの上の椅子に座らせて彼の膝の上でチリが歌う、なんて場面もあった。
加えてグッときたのは、すでに日本先行で配信がスタートしている2曲の新曲、すなわち「ジョイ・ライド」と「へイターズ」が歌われたことだ。この2曲を紹介する時に、チリは言った。「もうすぐ新しいアルバムが出るの。そこからの曲を聴いてね」。つまり、今回の来日公演は02年の『3D』以来のTLCの新章の幕開けを告げるコンサートになっている。そこへ向かうふたりの意欲が、確かに伝わってくるステージになっている。
この日のTLCは、今年見たライヴの中でも5指に入る素晴らしさだった。できるならもう1度見たいと思うくらいだし、これからライヴに行かれる方もきっと同じ想いをされることだろう。秀逸なヒット曲の数々。いくつもの涙。それを超えて向かう未来━━。
様々な想いが交錯せずにはいられないステージを、ぜひ多くの方に体験していただきたい。
Text: 宮子和眞
Photo: Masanori Naruse
◎来日ツアー情報
2016年10月27日(木)東京・Billboard Live Tokyo
2016年10月29日(土)横浜・One Live (フェスティバル出演
2016年10月31日(月)東京・Billboard Live Tokyo
2016年11月2日(水)東京・Billboard Live Tokyo
2016年11月4日(金)大阪・Zepp Namba
東京公演詳細:http://www.billboard-live.com/
横浜公演詳細:http://www.one-live.jp/
大阪公演詳細:http://www.kyodo-osaka.co.jp/
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