現在、最新作『デイ・ブレイクス』のプロモーションのために来日中のノラ・ジョーンズが、2016年9月7日に東京・ブルーノート東京にてプレミアム・ライブとQ&Aを行った。
新曲をいち早く生披露するということもあり、一般当選者に加え、関係者など250名の観客が集まったこの日。19時半を過ぎ、会場が暗くなると、司会のクリス・ペプラーが登壇し、ノラのプロフィールを簡単に紹介。そしてフラワープリントのワンピースを身に纏い、にこやかにノラが登場。
まず、『デイ・ブレイクス』最大の注目点であるピアノと向き合った作風については「これまではギターで曲を書くことが多かった。ギターはそこまで上手くないから、不思議とギターで曲を書く方が簡単なの。けれど、ここ数年はピアノを弾くことが増えて、それがすごく楽く感じた。新作に収録された曲はほとんどピアノで作曲した曲よ。」と明かした。
さらにウェイン・ショーターやブライアン・ブレイドなど、アルバムに参加した錚々たるメンバーについては、「ブルーノートの75周年コンサートで彼らと演奏する機会があったんだけど、それがとても楽しかったら、また彼らと演奏したいと思ったの。」と嬉しそうに語った。
Q&Aが終わると、ノラはピアノに移動。「みんな、来てくれてありがとう。」と観客に向かって語りかけると、アルバムからの先行トラック「キャリー・オン」でライブがスタート。2001年に本格的に音楽活動をスタートした彼女だが、15年に及ぶキャリアを経て、さらに円熟味を増したスモーキーな歌声が会場に澄み渡る。続いて、軽快なベースラインとほろ苦いヴォーカルが絶妙に絡み合う洒脱なジャズ・ナンバー「イッツ・ア・ワンダフル・タイム・フォー・ラヴ」では、エレガントさとラフさを兼ね備えた抜群のピアノ・プレイで観客の心を奪った。
今回のパフォーマンスはトリオ編成で、ウッド・ベースとエレクトリック・ベースを巧みに操った小泉P克人、そしてブラシや直に叩くなどして繊細なプレイを魅せたSOIL&"PIMP"SESSIONSのみどりんが担当。先日行ったインタビューでは、「初めての試みだから、すごく楽しみ。」と話していた彼女だが、数日前に初めて一緒にプレイしたとは思えないほど息のピッタリな演奏で会場を沸かせた。
「もっと新曲を演奏するわ。」という言葉とともに、レッドの照明に切り替わると、“It's a tragedy”というリフレインが印象的な「トラジディ」を伸びやかに歌い上げ、「アンド・ゼン・ゼア・ワズ・ユー」に。インティメイトな会場だからこその楽曲自体のテクスチャーが最も強く感じられ、まるで30年代のモノクロ映画の世界にタイムスリップしたかのような、ぬくもりとノスタルジーが交差する。シンプルながらも、惚れ惚れとするようなアレンジも、ノラのリビング・ルームに招かれたような親密なムードを演出していた。
ジャジーでメロウな楽曲で固めてくるのかと思いきや、「フリップサイド」ではソウルフルなヴォーカルと熱っぽいプレイで会場の空気をガラッと変え、音楽的幅の広さとその卓抜した才能を発揮。そしてラストは、言わずと知れた名曲で、ノラの代表曲である「ドント・ノー・ホワイ」。なんと同曲のソングライターであるジェシー・ハリスがサプライズで登場し、ファン垂涎の豪華共演を果たし、公演はフィナーレを迎えた。
「同じアルバムを繰り返し作ることはしたくない。」と話していた彼女だが、これまでのキャリアがあるからこそ、改めてピアノと向かい合うことで、さらなる進化を遂げたことがヒシヒシと感じられた、まさにプレミアムなライブだった。
Live Photo: 濱谷幸江
◎ノラ・ジョーンズ『デイ・ブレイクス』ショウケース・ライヴ セットリスト
2016年9月7日 @ ブルーノート東京
Carry On / キャリー・オン
It's A Wonderful TIme For Love / イッツ・ア・ワンダフル・タイム・フォー・ラヴ
Tragedy / トラジディ
And Then There Was You / アンド・ゼン・ゼア・ワズ・ユー
Flipside / フリップサイド
Don't Know Why / ドント・ノー・ホワイ(ゲスト:ジェシー・ハリス)
◎リリース情報
『デイ・ブレイクス』
ノラ・ジョーンズ
2016/10/5 RELEASE ※日本先行リリース
初回限定盤: 3,456円(tax incl.)
通常盤: 2,700円(tax incl.)