Billboard JAPAN


NEWS

2016/09/06

新国立劇場、新シーズン開幕第一弾『ワルキューレ』稽古開始 世界最高峰のワーグナー歌い集う

 新国立劇場の新シーズンは、飯守泰次郎指揮、フリードリヒ演出のプロダクションで1年前にスタートした新制作の「指環」第2弾『ワルキューレ』で開幕する。世界的ヘルデンテノール、ステファン・グールドを始めとしたワーグナー歌い達が一堂に会すまたとない機会だ。

 ワーグナーの重厚で甘美な音楽が、兄と妹の許されぬ恋と愛、哀切に満ちたドラマと神々の思惑を描き出す『ワルキューレ』は、「ニーベルングの指環」シリーズの中でもそのドラマ性から最も人気を博す演目だ。『トンネル・リング』で名声を轟かせたゲッツ・フリードリヒの最後の“リング”演出は、1996年フィンランド国立歌劇場での公演であり、本プロダクションはフィンランド国立歌劇場(ヘルシンキ)の協力により上演される。

 9月5日に歌手・スタッフ陣が集い、演出監修のアンナ・ケロからフリードリヒ演出のコンセプトの説明が行われた。『ラインの黄金』の後に何があったのか。

 「神々の長であるヴォータンは、多くの女性とセックスして子供をつくりますね(笑)。最初に作ったのは将来の兵士となる娘達、ワルキューレ達。智の女神エルダとセックスして作ったのがブリュンヒルデ。次に人間とセックスをしてジークムントと双子の妹ジークリンデを作ります。ヴォータンの一番の目的は、ヴァルハラをなんとか守ること。その為には彼の意志から独立した存在、“ヒーロー”が必要だったのです。それがジークムントです。生き別れた妹のジークリンデは美しく成長しフンディングの元に嫁ぎます。そのような状況で物語は始まります」

 「1幕の部屋は傾いていて、何かがおかしい状態。状況が上手くいっていない、というのが伝わってくると思います。ジークリンデはフンディングに叩かれたりして、恐怖に圧迫されているような状態ですが、1幕の最後に双子の兄妹はお互いを見つけて恋に落ち、自分自身がどういう存在であったのかを再発見します」

 「ヴォータンはヴァルハラを守る戦士を確保するために、人間を戦でどんどん死なせてヴァルキリー達に集めさせているのですが、その状況に満足しているわけではなく、申し訳なく思っています。ちょっと面白いことに、ヴォータンの部屋には木馬が置いてあるのです。ヴォータンは神々の長であり、何でも持っている存在ですが、これをどんどん脱ぎ捨てていき、木馬の前に立つというシーンがあります。もう仕事はいやだ、働きたくない、ということですね」

 「実は同じ木馬がベルリンのゲッツ・フリードリヒのオフィスにもありました。これは神であるヴォータンの、子供でありたいという願いのシンボルでもあります。もしかしたら、フリードリヒもそうだったかもしれません」

 「そのような辛い状態のヴォータンに唯一楽しみがあるとすれば、娘ブリュンヒルデとの時間でした。ゲッツ・フリードリヒの演出する“リング”では、二人は単なる親族としての父娘の関係ではなく、それ以上の何かであり、彼らが愛し合っているということは明白です」

 ヴォータンに運命を与えられ、翻弄され、そして見捨てられたジークリンデとジークムントを繋ぐ愛が、遂にはブリュンヒルデの心を強く打つ。本当の愛を知ることで、ブリュンヒルデは父を裏切ってでも二人を守ると誓うのだ。ジークムントの子供を妊娠しているジークリンデを逃がしたブリュンヒルデに激怒したヴォータンだが、しかし最後には和解、そして眠りという告別を迎えて幕切れとなる。

 「3幕のセットは飛行場のイメージです。怒り狂ったヴォータンが入ってきてヴァルキュリー達を追い出し、ブリュンヒルデとの長い美しいシーンが始まります。このシーンの終わりで、二人はある意味では仲直りをしますが、ヴォータンは非常に苦しい気持ちでブリュンヒルデを眠りにつかせます。フィンランドの上演では、最後ヴォータンは客席に降りていきました。ヴォータンは娘に神性を与えて去って行く。ですから、次の話(第二夜『ジークフリート』)で、ヴォータンは全く神的な存在では無いのです」

 昨年『ラインの黄金』の知的で気品あるローゲ役で大きな話題を呼んだグールドがジークムントで登場。舞台上演で歌うジークムントは初ということで、前回に続き話題を呼んでいる。神々の長ヴォータン役は、今年3月の『サロメ』ヨハナーンで圧倒的存在感を放ったグリア・グリムスレイ。ブリュンヒルデはワーグナー・ソプラノとして第一線で活躍するイレーネ・テオリン。ジークリンデにはビルギット・ニルソンの再来と言われている若手ドイツ人ソプラノのジョゼフィーネ・ウェーバーが新国立劇場初登場。極上のワーグナーが味わえるキャストが勢揃いしている。

 新国立劇場新2016/17シーズン、ワーグナー歌劇『ヴァルキューレ』は10月2日~18日の全6公演。新国立劇場オペラパレスにて上演される。text by yokano

◎公演概要
新国立劇場 2016/2017 シーズンオペラ オープニング公演

ワーグナー作曲
楽劇『ニーベルングの指環』第1日
ワルキューレ
2016年10月2日~18日 全6公演
会場:新国立劇場オペラパレス
More info:http://www.nntt.jac.go.jp/opera/walkure/

新国立劇場 その他の画像・最新情報へ

関連商品

チャイコフスキー交響曲全集
飯守泰次郎 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団「チャイコフスキー交響曲全集」

2012/12/20

[CD]

¥5,500(税込)

ベートーヴェン 交響曲全集
飯守泰次郎 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 佐々木典子 小山由美 福井敬 小森輝彦 藤丸崇浩 東京シティ・フィル・コーア「ベートーヴェン 交響曲全集」

2012/04/04

[CD]

¥5,500(税込)

湯浅譲二:オーケストラル・シーン
飯森範親 東京交響楽団 飯守泰次郎 新交響楽団「湯浅譲二:オーケストラル・シーン」

2004/12/21

[CD]

¥3,204(税込)

シューマン&ブルックナー
飯守泰次郎 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団「シューマン&ブルックナー」

2004/09/21

[CD]

¥3,204(税込)

ワーグナー:管弦楽曲集
飯守泰次郎 東京都交響楽団「ワーグナー:管弦楽曲集」

2004/04/30

[CD]

¥2,640(税込)

ACCESS RANKING

アクセスランキング

  1. 1

    <インタビュー>YUTA(NCT) ミニアルバム『Depth』に込めたソロアーティストとしての挑戦――「たくさんの経験があったから今がある」

  2. 2

    和楽器バンド、活休前最後のツアーが開幕 10年分の感謝をこめた渾身のステージ

  3. 3

    <インタビュー>米津玄師 新曲「Azalea」で向き合った、恋愛における“距離”――「愛情」の源にある“剥き身の生”とは

  4. 4

    ロゼ&ブルーノ・マーズ、11/22大阪開催【MAMA】で「APT.」世界初披露へ

  5. 5

    米津玄師/back number/マカえんらキリバン突破:今週のストリーミングまとめ

HOT IMAGES

注目の画像