2016/06/03
元BiSマネージャーの渡辺淳之介が「BiSをもう一度始める」と始動させ、今春“楽器を持たないパンクバンド”としてavex traxよりメジャーデビューしたばかりのガールズグループ BiSH。結成当初からのメンバーで、グループの精神的支柱として活躍してきたハグ・ミィが、6月2日 赤坂BLITZでの渋さ知らズオーケストラとの2マンライブを最後に脱退した。
<渋さ知らズ「酒好きのおじさんとおばさんが集まったアイドルグループ」>
メジャーデビュー時の単独インタビュー(http://bit.ly/1Va3ZEJ)では、「エロと歌とダンス。この3つを磨いて、加齢に逆らって頑張っていきたい」「BiSっぽいことを私ひとりで率先してやっていきたいです」等、BiSHの個性派メンバーとして邁進していきたい想いを切々と語ってくれていたハグ・ミィだが、5月中旬に「家庭の事情」を理由に脱退することが発表された。そして僅か半月後にラストライブということで、おそらくファンは気持ちの整理もつかぬまま会場に駆けつける形になったことと思うが、同公演は渋さ知らズオーケストラの天井知らずの明るさとフリーダムさも手伝って、序盤はウェットなムードはなし。
「我々は酒好きのおじさんとおばさんが集まって、とりあえず打ち合わせもなくいっせーのせ! で音を鳴らしたらどうなるかな? というコンセプトで集まったアイドルグループでございます! 結成25年前なので、やっとアイドルブームが来たときはこんなんになってしまいました。でもアイドルブームの最後ギリギリに間に合ったと思って、これからいろんなイベントに出て売り出していきたいと思ってますので、みんな協力、応援よろしくお願いします!」世界を股にかけて大暴れしている大先輩にこんな粋で痛快なMCをされたら、悲しみに暮れてなどいられない。BiSHも渋さ知らズオーケストラのステージに乱入し、ダンサーのスカートを捲り上げたり、バナナを持ってはしゃぎ回ったり、アドリブの怪物たちを相手に笑顔で立ち回ってみせる。
<「ハグ・ミィ、愛してるよ!」涙を流しながら歌い叫んだケモノ>
そんなサプライズもあった渋さ知らズオーケストラのアクトで燃え盛った赤坂BLITZ。いよいよ始まったBiSHハグ・ミィ脱退ライブも、序盤は感傷に浸っている暇もないほどの爆裂ロックチューンを畳み掛け、満員の清掃員(BiSHファンの総称)はモッシュやウォールオブデス等、全身全霊で狂乱の渦を生み出していく。しかし終盤「スパーク」の披露以降からメンバーもファンも「これはハグ・ミィとお別れする為のライブだった」ことを否応なしに痛感し始め、「ハグ・ミィ、愛してるよ!」といった叫びが響き渡ったり、泣きながら拳を振り上げる者たちが続出。下ネタをバンバン言うような大胆さを持ち合わせながら「自分に自信が持てない」といつも悩んでいたり、それでもメンバーのお母さん的な存在になりたいと懸命に立ち回り、最年長メンバーでありながらも完全燃焼するほど全力の歌声、パフォーマンスを披露していたハグ・ミィが居なくなる。誰もがこの現実を受け入れようと、でも完全には受け入れきれない様相で、涙を流しながら、彼女への想いを溢れさせながら、ケモノのように歌い叫び、踊り狂い、暴れ回っていた。
<「宇宙で一番幸せな夢を見れました!」BiSH6人最後で歌い届けた曲は……>
鳴り止まない、そしてどんどん巨大化していく「ハグミィ!」コールに応え、ひとりステージに戻ってきた彼女は語り出す。「皆さんに何か伝えたくて、何を話そうかいろいろ考えたんですけど、なかなか浮かばなくて、まとまらなくて……BiSHに入って1年間、本当にいろいろなことがあったんですけど、ツラいこともいっぱいあったし、マジかよ? って思うこともたくさんあったんですけど、それ以上に…………めちゃめちゃ楽しいことが多くて、BiSHのメンバーでいられて本当に幸せだったなって思います。私はBiSHのメンバーのことも清掃員さんのこともスタッフの皆さんのこともすごく大事で、本当にBiSHが一番で、BiSHが一番大事だと思ってやってきたから、本当に実感が湧かないし、自分で決めたことだから引き返せないけど、本当に寂しい気持ちでいます。
でも私がいなくなった後もBiSHとしてのストーリーはまだまだ続いていくし、BiSHはもっともっと大きくなっていくと思います。そのBiSHの歴史の中に……ハグ・ミィっていう、息をするように下ネタを言ってしまうような人間がいたんだなっていうことを心のどこかで覚えておいて……ください! よろしくお願いします。私はBiSHにいたこの1年間、宇宙で一番幸せな夢を見れました! …………BiSHは永久に不滅です!」
まさかの長嶋茂雄の名言オマージュで締め括られた別れの言葉だったが、このあと「それでは、私がBiSHのハグ・ミィとして最後に歌うこの曲、聴いてください」と言って歌い叫んだ「ALL YOU NEED IS LOVE」。そこには、セントチヒロ・チッチ、アイナ・ジ・エンド、モモコグミカンパニー、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、そしてハグ・ミィの6人で駆け抜けた青春の日々があり、その日々の数だけ溢れ出た想いがあり、おそらく今日ここに居合わせた者たちの胸に生涯刻まれるであろう光景が生まれていた。
All you need is love. 今も過去も振り向かせよう
now and past 時代に流されながら
all you need is love
この曲を歌い終えると同時にハグ・ミィは退場。ステージに残った5人は立ち止まることなく「BiSH -星が瞬く夜に-」を披露し、ハグ・ミィのハイトーンがエモーショナルに響き渡っていたフレーズ「そんなもんか? わがまま? うまくやろう! いこう!」はリンリンが涙のシャウトで受け継いでいた。終焉と共に新たな始まりを提示する。これもまたBiSHらしい。
<ステージに残った5人は立ち止まることなく……>
なお、同公演の終演後、ビルボードジャパンはプロデューサー兼マネージャーの渡辺淳之介に話を訊いた。
--ハグ・ミィはなんで脱退することになったんですか?
渡辺淳之介:家庭の事情。それ以上のことは分かんない。
--ハグ・ミィがいた6人時代のBiSHは渡辺さんにとってどんな存在だったんですか?
渡辺淳之介:4人から始まって6人になったんですけど、すごく良い感じに品川ステラボールでのワンマンまで来てメジャーデビューして……ってときに、普通の人間は辞めねーよなって(笑)。不思議すぎるけど、何か理由があるんでしょうね。BiSHより大事なものがあるんでしょうけど、俺はBiSHより大事なものがあんまりないから理解には苦しむ。
--ハグ・ミィも「BiSHが一番大事だと思ってやってきた」みたいですけどね。
渡辺淳之介:でも一番大事だったら辞めないからね。どうなんだろうね?
--なんか燃えそうな話になってきたね。でもたしかに残念でした。
渡辺淳之介:一番大事なら辞めないでしょ?
--えー、これからのBiSHは5人で活動していく訳ですけど、どうなりそう?
渡辺淳之介:新メンバーオーディションに物凄い数の応募が来てるんで、近々で面接させてもらって新メンバー決めたいなって。夏には発表できるんじゃないかな。もう頭は夏に向かってます。
--新生BiSHも楽しみにしてます。
渡辺淳之介:ヤバいと思いますよ。がんばります!
取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:Jumpei Yamada
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