2016/05/24
5月15日、大阪城音楽堂でFM802による春の恒例イベント【Eggs presents FM802 Rockin' Radio! -OSAKAJOH YAON-】が開催された。雲一つない晴天の下、Tシャツ姿ですっかり夏の装いの観客たちも、かき氷を食べたりビールを飲んだり、思い思いに初夏の野音を楽しんでいる。野外ライブとしては最高のシチュエーションでの開催となった。
まずは事前投票で選ばれたオープニングアクト二組が登場。
一組目は七月にメジャーデビューを控えるShout it Out。デビューシングルとなる新曲「青春のすべて」も聞くことができ、山内彰馬(vo,gt)の青空を突き抜けるような歌声が一日のスタートを勢いづける。続く二組目はBrian the Sun。こちらも六月発売のメジャーデビューシングル「HEROES」をライブ初披露。発売前の新曲ながら既に客席からは一緒になって歌う声も聞こえ、地元での人気ぶりが窺える。二組とも開場中の演奏だったものの、ライブハウスのような熱気を作り上げ、大阪が誇る若手の勢いを見せつけた。
すでに温まった会場をさらにヒートアップさせたのはトップバッター、WANIMA。明るい陽の光にKENTA(vo,ba)の蛍光グリーンのベースがよく映える。一曲目はイベントの幕開けにふさわしく「ここから」でスタート。「今日は座席があってモッシュできないから、みんな手でモッシュ!手でモッシュな!」と手を頭上でひらひらさせながら観客を煽る。威勢の良いトークで笑いを誘い「朝イチから見た目も喋りもウザいと思いますがごめんなさい(笑)」とMCでもばっちり盛り上げてくれるのが彼ららしい。「いいから」では「大阪気持ちよくするから」とアレンジして沸かせ、ラストは「THANX」。最後のMCの「地元・熊本のためにWANIMAが動くときはちょっとだけ協力してください」というメッセージも、真っ直ぐな詩と共にしっかり届いたに違いない。
続いてSUPER BEAVERが登場。一曲めは「うるさい」。メンバー全員による冒頭の力強いコーラスと、「ロッキンレディオ初見参、よろしくお願いします」という渋谷龍太(vo)の一言で、空気を一変させる。長い手足をユラリと垂らし、背を丸め、ハンドマイクで言葉を繰り出す歌い姿は、この日も強烈な存在感だ。「音楽を好きでしょうがないであろうあなたたちの前でこうして歌えるのは決して当たり前なことではないし、本当に嬉しいことです」「素晴らしい景色をどうもありがとう」と、MC一つ取ってもどこか詩的な彼らの曲たちは、言葉の熱量も凄い。ラストは「人として」の「信じ続けるしかないじゃないか、愛し続けるしかないじゃないか」で大合唱。熱い言葉で会場の心を一つにした。
息をつく暇もなく三組目はドラマチックアラスカ。すっかりライブで欠かせない曲となった「無理無理無理」に続いて、最新曲「ニホンノカブキ」も披露。歌舞伎の開幕さながらに赤い拍子木をカンカンと打つこの曲は、ヒジカタナオト(vo,gt)の和モダンな衣装にもよく似合う。続く「東京ワンダー」「人間ロック」で演奏終了…かと思いきや、ここでなんと「地元のラジオ局FM802がやってるイベントなので、地元のバンドとしてできることはないか考えてきました!」とヒジカタの呼び込みで、米田貴紀(夜の本気ダンス/ vo,gt)&三原健司(フレデリック/vo,gt)が登場。実は彼らは去年【ALA-UMI-DOSS TOUR】と題して各地を回った繋がりの深い三組。ドラマチックアラスカの演奏で「オドループ」「B!tch」「リダイヤル」などそれぞれの曲を自在に行き来し、三人のボーカリストが畳みかけるように互いの曲を歌いあう。嬉しいサプライズと華麗なマッシュアップに客席からは演奏後も鳴りやまない拍手と歓声が響いた。
続いてはサンボマスター。「世界を変えさせておくれよ」で一曲目から会場がシンガロングすると、「10年前ここでやったときはこんなもんじゃなかったけどなぁ!?」と山口隆(vo,gt)が挑発してみせる。曲間はもちろん、曲中の間奏でさえ、「そんなもんか?」「かかってこいよ!」とひたすら盛り上げるための言葉を放ち続けるスタイルは相変わらず、圧巻。持ち時間の間、一瞬の隙間もなく、歌い、喋り、叫び続ける山口のパワーに客席も拳を挙げて応戦する。この日の出演者の中では一番長いキャリアを誇る彼ら。「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」「できっこないをやらなくちゃ」と、兄貴たちの優しくでっかいロックをみんなで歌い、さすがの一体感でライブを締めくくった。
気温も少し落ち着いた頃、登場したのはSuchmos。爽やかなブルーの上下に赤いコードのマイクを持つ姿が何とも絵になるYONCE(vo)が、「Pacific」の波の音で気持ち良さそうに揺れながら歌声を聞かせる。横浜みなとみらいを歌った「YMM」の涼しげなグルーヴに観客もすっかりリラックスムードで身を委ねる中、途中のMCでは「大阪城野音ってことは天下人の場所だね。俺らの天下取る第一歩の場所だ!」と熱い闘志を見せる場面も。最後は7月発売のE.P.から「ジーパンが色あせてボロボロになるみたいにずっと歌っている曲です」と「MINT」を披露し、「絶対ワンマンで帰ってくるから!」と頼もしい言葉で今後の活躍を期待させた。
続いても心地いいグルーヴで会場を揺らしたKeishi Tanaka。この日はホーン隊やキーボードも含む七人編成で、贅沢に音色の重なりを響かせる。「初めての人もいると思うけど…どうも田中です(笑)」とフレンドリーなMCにすっかり会場がアットホームな雰囲気になり、「Foggy Mountain」では自然と客席から歌声があがり始めた。その様子を見て「ナイスコーラスですねぇ」と笑顔を浮かべ、ラストの「Floatin' Groove」では軽やかに客席のど真ん中へ。たった30分ですぐに会場みんなを仲間にしてしまう彼の温かなキャラクターにも魅了された。
続くceroも、七人編成の厚みのある音で、まずは「Summer Soul」。イントロ部分をじっくりたっぷり聞かせ、生楽器のアンサンブルの心地よさを存分に感じさせてくれる。緑いっぱいの野音に、髙城 晶平(vo,gt,flute)のフルートの音色は相性抜群で、観客も椅子に座ってその演奏に酔いしれている。穏やかなアコースティックサウンドを聞かせたかと思えば、突然高城のシャウトが響き渡るという先の読めない展開も彼らのライブの見どころの一つかもしれない。「わたしのすがた」ではメロウな高城のラップも堪能でき、他では味わえないceroワールドが広がる。7月10日、再び野音のワンマンライブでここに帰ってくる彼ら。高城がMCで「ワンマンも最高な予感がしています」と言っていたが、きっと同じ予感を客席のみんなも感じたはず。
夜も近づく夕方六時、続いて現れたのは夜の本気ダンス。夕暮れを経て少しまったりしかけていた会場を、「By My Side」で、いきなりぶった切る。昼にはドラマチックアラスカのステージに登場して観客を驚かせた彼らだったが、自身のステージでもサプライズを用意してくれていた。なんと、去年FM802のイベントで出会って意気投合したという先輩バンド、髭のボーカル・須藤寿がゲストで登場。「うちのボーカル(米田貴紀)が誠意を込めて今日のために髭を生やしました!」という後輩の熱い想いも「髭生やしてもモテないよー?」とマイペースに交わし、予測不可能な二組のコラボがスタート。色鮮やかな照明の中、髭の「ボニー&クライド」で会場を踊らせ、更に「夜の髭ダンスしようぜー!?」と、もう一曲。夜の本気ダンスの「Dookie Man」ですっかり会場はダンスフロア状態に。汗だくになってみんなではしゃぎ、大熱狂のコラボステージが実現した。
そしてこの日のフィナーレを飾ったのはクリープハイプ。「イノチミジカシコイセヨオトメ」「憂、燦々」と、イントロが聞こえた瞬間から大歓声が上がり、待ってましたというみんなの思いが伝わってくる。意外にも「こういうイベントで最後にやらせてもらうこととかあまりない」という彼らだが、MCでは尾崎世界観(vo,gt)がFM802に初めて出演した日のエピソードを語り「あの時から長い時間が流れて…今ここに立たせてもらっているのは本当に嬉しいので、頑張ります」と顔を綻ばせた。「二十九、三十」「グレーマンのせいにする」など新旧織り交ぜたセットでファンを喜ばせ、ラストは「傷つける」。「この暗い感じとか曲の雰囲気とか、覚えててほしい。少しでも音楽で傷をつけたいと思うので最後は『傷つける』いう曲をやって終わります」と、日も暮れて静かになった野音に切ないメロディを響かせ、楽しかった一日の終わりをみんなの胸に刻み付けた。
今回で四回目を迎えるこのイベント。時間ごとに表情を変える気持ちの良い野外ステージで今年も、キャリアも個性もバラバラの多彩なアーティストたちが、この場所この瞬間でしか見られないパフォーマンスを見せてくれた。また来年は今年とまったく違った新たな出会いが待っているはず。
また来年も、晴れますように。
text:FM802 DJ 鬼頭由芽
photo:渡邉一生、JP
◎イベント概要
■イベント名称:Eggs presents FM802 Rockin’Radio! -OSAKAJOH YAON-
■日程:2016年5月15日(日)11:00 開場/12:00 開演
■会場:大阪城音楽堂
■出演:Shout it Out/Brian the Sun(オープニングアクト)/クリープハイプ/KeishiTanaka/Suchmos/サンボマスター/ SUPER BEVER/cero/ドラマチックアラスカ/夜の本気ダンス/WANIMA
■MC:土井コマキ/飯室大吾/鬼頭由芽
■HP:http://funky802.com/rockin/
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