2016/02/26 19:30
2016年2月17日、ももいろクローバーZの新アルバムが2作同時にリリースされた。2013年の『5TH DIMENSION』以来、約3年ぶりとなる新作は、なんと3rd『AMARANTHUS』と4th『白金の夜明け』の2枚同時発売。リリース前には段階的に本作に関わったプロデューサー/アーティストが発表され、その豪華な顔ぶれにファンからは驚きの声が上がった。
キングレコード/EVIL LINE RECORDS、宮本純乃介氏のインタビュー後編。個々の楽曲はもちろん、新作と並べて聴きたいアルバムや、ヒットの狙いについても話を聞いた。
*前編:http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/35412
◎「どんな天才が書いてるんだ?」
――では、引き続き楽曲の話を。4thに入っている「ROCK THE BOAT」は、ザ・バード・アンド・ザ・ビーのメンバーで、最近はアデルの「ハロー」にも参加して話題のグレッグ・カースティンが作曲にクレジットされてますね。この曲はどのような経緯から?
宮本:実はこの曲はちょっと前から持っていたんです。日本ではあまり聞かないんですけど、海外の作家の場合、楽曲デモが売りに出てたりすることがあって、そういうのをたまに聴かせてもらうんです。その中にこの曲があって、良い曲だからなんとかしたいなと。デモは全編英語詞だったんですけど、「ももいろクローバーZというアーティストでいつか形にしたい」とグレッグとニコルのサイドに連絡しました。
--そんな楽曲マーケットみたいなものがあるんですね。
宮本:はい。ただ、ある程度ベースが既に出来ているので、そこからは交渉になります。こちらからは、ももクロのプロフィールと作品の概要書、今後どういう方向で楽曲を仕上げていくか、説明するプランを提出した上で最終的に作家サイドが判断するんです。
--リリックは元から?
宮本:リリックは元々あったんですけど、そこは全く反映させてないですね。ステムのデータだけです。譜面もこっちで起こしました。なかなか日本人には書けないタイプの曲ですよね。特にハモの入れ方が独特で勉強になりました。
--この曲は少しジャジーなポップスのノリですが、4th『白金の夜明け』は、どちらかというと“黒っぽい”ノリのアルバムですよね。先ほど話に出た堂本さんの曲もそういうカラーが強いと思います。そういったサウンド面の方向性は各アルバムごとに考えてましたか?
宮本:はい。ただ、最初はそれぞれもっと偏ったものにしようと思っていたんです。それが作っている過程で行ったり来たりして、だんだんとアルバム毎にバランスの取れたものになっていきました。ただ、サウンド面だけ切り取ると、作っているうちに、3rdは生楽器を中心としたバンド演奏をベースとしたものにシフトして、4thの方は、表現が的確か分からないですけど、打ち込みを用いた実験的な作品にというイメージがありました。4thの方が圧倒的にバンドセットで表現するのが難しいと思います。
--確かに3rdの方がよりロック感のある曲が多く、4thは今までのももクロにないタイプの曲が多いですね。今作から復帰した前山田健一さんとはどうでしたか?
宮本:割とスムーズに制作出来たと思います。3rdの「武陵桃源なかよし物語」は、今までの彼との物語をそのまま落とし込んだというか、(2015年7月31日の)エコパスタジアムでのプロレスをそのまま楽曲化しました。喧嘩からの仲直りを経て、その友達を応援するっていう流れをアルバム内の構成として考えていて、彼もすぐにピンときたようで早くにデモが上がってきました。
--結果的に前山田さんは3rdと4thで2曲に参加しています。複数曲への参加という意味だと、清竜人さんも「デモンストレーション」と「イマジネーション」の2曲を手掛けていますね。
宮本:清くんとは、もともと僕がスターチャイルド・レコードにいた時に、堀江由衣の「インモラリスト」(2011年)という作品で一緒に仕事したことがあったんです。その時は、コンペ形式で、100曲以上デモを集めて、その中に文字化けしているファイルが1つあったんです。聴いたら全部持って行かれて。「どんな天才が書いてるんだ?」って思って、デモの送り元に問い合わせたら、清くんだったことが分かりました。その時には既にアーティストとしても精力的に活動されていて、それ以来いつか曲を書いてもらおうと思っていました。
――最近は清竜人25でも活躍していて、イメージもガラリと変わってきていますね。
宮本:たしかに(笑)。彼の作品で、『MUSIC』(2012年)というアルバムが特に秀逸で、試みも完成度も素晴らしいと思います。
--あれはすごいですよね。今回の作品では、最初から2曲を頼もうと決めてたんですか?
宮本:決めてました。3rdと4thでトラックも同じ位置に置いて、対になる曲を作ってもらおうと思っていました。両方のいわゆる“ワームホール”になる曲を担ってもらおうと。3rdと4thのコンセプトや企画の趣旨を彼に説明した上で書いてもらいました。
◎僕の中で“CD文化”が色濃く残ってるからなのかも知れない
--以前、宮本さんにインタビューした時、アーティストを1つのブランドのように考えて、その文脈をしっかりと見せていくことで、ヒットに繋げるというお話を伺いました。では、今作をアルバムとして考えた時に、どうやってヒット作にするかというようなアイデアはありましたか?
宮本:ライブを観てもらうということでしょうか。今回もツアーが結び付いてくるので、最終形態はステージにあります。今回は北海道以外各地で2日間、1日目は3rd、2日目は4thを再現するツアーを行います。だからアルバムを買って気に入ってもらえたら、直ぐにでも、次はリアルに作品を追体験することが出来ます。LIVEから入ってCDを買うという逆の流れもあるかもしれません。
振りが付く過程や現場の演出で、レコーディング音源とは表現が多少変わってくる部分も出て来ると思います。ツアーが進む毎にそれぞれの楽曲が育っていってくれると嬉しいです。
--なるほど。では、また別の確度の質問ですが、ももクロの作品がことごとくコンセプト作になる理由って何だと思いますか?
宮本:なんですかね…? どういうわけかストーリーを紡いで行きたくなります。もちろん本人たちには本人たちの文脈があるんですけど、そこと寄り添いながらも作品には作品の文脈があっても良いのかなと。
でも、たしかに、こういう歌ものでコンセプト作品って、あんまりないですかね?
--珍しいと思います。逆に、アルバム=ヒット曲を束ねたものという発想も当然あると思いますし。
宮本:でも、そういうのはいずれベスト盤で、という風にも思っちゃいますね。あと、これは僕の中で“CD文化”が色濃く残ってるからなのかも知れないですけど、ちゃんと曲順通り聴いて欲しいという気持ちは少しあります。もちろん、バラバラに聴く楽しさもありながら、頭からお尻まで通して聴いた時に残るもの、アルバムだからこそ出来る流れがあると思うんです。だから、アルバムという規格の特性をフルに活かそうと思った結果なのかも知れないですね。単曲で聴いてもらっても成立しますが、通して聴く度に新たな発見を見出してもらえたら嬉しいです。
--ちょっと話が飛躍しますが、前作の『5TH DIMENSION』がリリースされた時、あのアルバムがカニエ・ウェストの『ダーク・ツイステッド・ファンタジー』を意識した作りになっているのではないか? という見方があったのですが、それについてはどう思いますか?
宮本:それ、誰かにも言われましたね(笑) でも、カニエ・ウェストはほとんど聴いてこなかったので、意識したことはなかったです。どちらかと言うと、『5TH~』はピンク・フロイドの世界観に影響を受けています。その都合、特にプログレ色が強い作品になりました。
--なるほど。では、今作の場合、どんな作品と並べるのがしっくりきますか?
宮本:難しいですね……、あんまり思い浮かばないですね。結構シアトリカルな要素が有りますからね、クイーンの『オペラ座の夜』とピンク・フロイドの『ザ・ウォール』あたりでしょうか(笑)。
--(笑)。でも、たしかに演劇的な要素を強く感じる作品ですよね。セリフがたくさん使われてるのも印象的ですし。
宮本:たしかにセリフは今回多用しましたね。特に3rdは多いです。
--彼女たちが演劇や映画(『幕が上がる』)に取り組んできたことも関係あるのかなと思いました。
宮本:あ、でも、それはすごくありましたね。去年は映画と舞台もやっていたので、セリフの演技に磨きが掛かったというか。セリフひとつに乗ってくる、彼女たちのキャラクター性に、すごく深みが増した感じがしましたね。
--じゃあ、そこを押し出そうっていう気持ちでセリフを増やした?
宮本:そうですね。そこは意図的に増やした部分はあります。
--なるほど。そういう部分は彼女たちが普通のシンガーじゃないことの強みかもしれませんね。
宮本:そうですね。そういう意味では、舞台とか女優業の経験を得た結果、新曲が出来たという面はあるのかも知れないです。
話が逸れちゃうんですけど、実は今、声優のアイドル・ユニットものを制作していて、声優ならではの新しい音楽ジャンルを確立出来たら良いなと思っています。声優だからこそより表現出来ることを楽曲内にしっかり埋め込みたいなと思っていて、早口だったりスキットだったり。
--先ほど話に出た清竜人さんなんかも、そこの考え方が上手いですよね。
宮本:そうなんですよ。さっきお話した『MUSIC』もそういう要素が実験的に取り入れられてて、あれが出た時は「ああ、やられた!」って思いました。
先ほどお話しした声優ユニット“イヤホンズ”の作品(『MIRACLE MYSTERY TOUR』)も“声優だからこそ表現出来る音楽”を意識して作られています。チャートとかはまだまだなんですけど、内容的には面白く出来あがってるんじゃないかなと思います。
--それも今作と並べて聴くと、なお面白そうですね! いよいよももクロもアルバム発売ですが、今の気持ち的にはどうですか?
宮本:制作は終わってますけど、ちゃんとお客さんに行き渡るまで気が抜けないですね。さっきお話ししたように、今回は特にCDで通して聴いてほしい気持ちが強いです。さらにツアーに来てもらえれば、より作品を楽しんでもらえる自信はあります。ぜひ興味を持ってもらえると嬉しいです。
◎リリース情報
3rdアルバム『AMARANTHUS(ヨミ:アマランサス)』
2016/2/17 RELEASE
[初回限定盤(CD+Blu-ray)]
KICS-93308 3,800円+税
[通常盤(CD Only)]
KICS-3308 2,800+税
CD収録内容:全13曲収録予定
Blu-ray収録内容:MUSIC VIDEO + アルバムドキュメンタリー + オフショット映像収録予定
4thアルバム『白金の夜明け(ヨミ:ハッキンノヨアケ)』
2016/2/17 RELEASE
[初回限定盤(CD+Blu-ray)]
KICS-93309 3,800円+税
[通常盤(CD Only)]
KICS-3309 2,800+税
CD収録内容:全13曲収録予定
Blu-ray収録内容:MUSIC VIDEO + アルバムドキュメンタリー + オフショット映像収録予定
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