Billboard JAPAN


NEWS

2015/10/09

cero×黒田卓也コラボステージ公演レポート 2015年の現代に生きる音楽家同士が示したこの時代のマイルストーン

 10月2日、ビルボードライブ東京にて、InterFM 897 の開局を記念したコラボライブ 【cero ~Night Drifter Live~ special guest 黒田卓也】が行われた。

 最新アルバム『Obscure Ride』の高評価で、2015年を代表するバンドとの呼び声も高いceroと、ジャズ・トランペッターの黒田卓也によるコラボは、両者の音楽面での同時代性という意味でも開催前から大きな話題となった。黒田を迎えて行うライブで、ceroの音楽や楽曲がどう変わるのか? ということに、観客の関心の焦点があったと言えるだろう。実際、両者は挨拶程度の“コラボ”の次元を遥かに超えて、リハーサルからがっぷり四つで向き合うこととなったようだ。

 ライブはceroの髙城、荒内、橋本に加えて、黒田とサポートミュージシャンの3名を加えた計7名がオンステージするところからスタート。演奏前に、まずはフロントマンの髙城がメンバー全員を紹介するという念の入れ様に、その後の演奏に要するであろう集中力と、バンドの気合いを察する。

 1曲目に演奏されたのは前述の『Obscure Ride』でもオープニングを飾るナンバー「C.E.R.O」。ここ2、3年でメキメキと演奏力を上げ、先日の【FUJIROCK 2015】でも素晴らしい演奏を披露したceroだが、この日の演奏は更にタイトな印象。そうした変化からも、黒田とのコラボがバンドにもたらした影響を感じる。

 ライブ前半は『Obscure Ride』の曲順通り。2曲目の「Yellow Magus(Obscure)」に続いて披露された「Elephant Ghost」は、ceroが黒田の音楽を最も直接的に参照した曲の一つである。アウトロのアレンジを大きく変え、黒田のトランペットをフィーチャーした演奏に会場が大いに盛り上がった。この曲で多用される演奏の“キメ”の箇所の力強さをはじめ、この日のライブでは音源よりもさらに演奏の内包するファンク感が強調されていたと言える。

 いつも以上に力強くタイトな演奏。ただ、それ以上に印象的だったのは、中盤で披露された「Roji」や「ターミナル」(1st『WORLD RECORD』収録)といったミドルテンポの曲。髙城のヴォーカルや黒田のトランペットなど、中音域のパートがたゆたうような美しいハーモニーを作る様子に、ファンキーで歯切れの良いリズムの部分とは別種の、ゴスペルめいたブラックネスを感じた。

 その「Roji」の演奏前には、髙城がMCで「ビルボードでは僕が初でしょう」というコメントとともに自身の経営する飲食店(阿佐ヶ谷・roji)を宣伝する場面も。そうしたMCを含め、ライブ全体の振る舞いには初出演らしい初々しさも感じられた。

 終盤には、黒田の最新作『Rising Sun』から「Green and Gold」も披露。髙城を除いたメンバーと黒田による激しい演奏は、この日最もceroが“バンド”であることを感じる瞬間になった。同曲の演奏のクライマックス、髙城がステージに戻り、そこからDJミックスのように間髪を入れずに演奏されたのはロイ・エアーズの「Everybody Loves The Sunshine」。『Rising Sun』にも収録されていたジャズ・ファンクの名曲だ。ボリュームを抑え、少しかすれたような声による髙城の歌唱も胸に沁みる、ファンには嬉しいカバーとなった。本編最後はceroのライブでは定番ナンバーの一つである「(I found It) Back Beard」。髙城の吹くフルートをはじめ、爽やかなインスト演奏でステージを締めた。

 観客の拍手に応え披露されたアンコールでは『Obscure Ride』の最終曲である「FALL’N」を演奏。ビルボードライブの恒例でステージ裏のカーテンが開くと六本木の夜景が広がる。とはいえ、この日はそれが必要以上にゴージャス過ぎず、むしろステージの明かりも最小限に落とし、街灯りの中で演奏しているような粋な演出に。従来のジャンルとしてのシティ・ポップではなく、21世紀の現代に生きる音楽家として“シティのポップ”を引き受けたceroに、ぴったりの演出となった。

 今回のライブで現代のジャズのエッセンスにより深く触れ、バンドの奥行きを更に深めたcero。今後、その成果がどのような形で表れるのか。あるいは、ここを折り返し地点にまた新たな道へ進むことになるのか。そんな動向まで楽しみにさせる、バンドにとって大きなマイルストーンとなるであろうライブだった。そして、そのマイルストーンは、現代のシーンにとってもまた大きな意味を持つものになるのではないだろうか。

◎ライブ情報
【cero ~Night Drifter Live~ special guest 黒田卓也】
2015年10月2日 ビルボードライブ東京
1stステージ Open 17:30/Start 19:00
2ndステージ Open 20:45/Start 21:30

<セットリスト>
01. C.E.R.O
02. Yellow Magus(Obscure)
03. Elephant Ghost
04. Summer Soul
05. Orphans
06. 夜去
07. Roji
08. ターミナル
09. Green and Gold
10. Everybody Loves The Sunshine
11. (I found It) Back Beard
En. FALL’N

cero その他の画像・最新情報へ

関連商品

Outdoors
cero「Outdoors」

2016/12/07

[Blu-ray Disc]

¥5,093(税込)

Outdoors
cero「Outdoors」

2016/12/07

[DVD]

¥4,074(税込)

街の報せ
cero「街の報せ」

2016/12/07

[CD]

¥1,100(税込)

My Lost City
cero「My Lost City」

2012/10/24

[CD]

¥2,619(税込)

WORLD RECORD
cero「WORLD RECORD」

2011/01/26

[CD]

¥2,305(税込)

ACCESS RANKING

アクセスランキング

  1. 1

    <インタビュー>YUTA(NCT) ミニアルバム『Depth』に込めたソロアーティストとしての挑戦――「たくさんの経験があったから今がある」

  2. 2

    和楽器バンド、活休前最後のツアーが開幕 10年分の感謝をこめた渾身のステージ

  3. 3

    <インタビュー>米津玄師 新曲「Azalea」で向き合った、恋愛における“距離”――「愛情」の源にある“剥き身の生”とは

  4. 4

    ロゼ&ブルーノ・マーズ、11/22大阪開催【MAMA】で「APT.」世界初披露へ

  5. 5

    米津玄師/back number/マカえんらキリバン突破:今週のストリーミングまとめ

HOT IMAGES

注目の画像