Billboard JAPAN


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2015/08/21

20世紀のダンス・サウンドを確信犯的に演奏し続けたタキシード。彼らのレトロで新しいステージに身も心もリフレッシュして。tofubeatsのオープニングDJプレイリストも公開。

   痛快なる確信犯――。
 新世代のブルーアイド・ソウル・シンガーとしてユニークな存在感を放っているメイヤー・ホーソーンと、プロデューサーのジェイク・ワンが中心になって組んだユニット=タキシードが生バンドのスタイルで『ビルボードライブ東京』を、ミラーボール煌くディスコティックに変えてしまった!

 オープニングDJのtofubeatsの粋な選曲に温められて、会場には若いころにディスコでブイブイ言わせたと思しき“ちょいワルおやじ”(死語/笑)がところどころに陣取って、今にもハジケそうなオーラを発散しまくっている。さながら会場には20世紀のダンスフロアを髣髴させる雰囲気が充満した。

 真っ白のタキシードに身を包んだバックバンドのパワフルな演奏に引き寄せられるかのようにステージに登場した2人。ユニット名通り黒のタキシードに身を固め、冒頭から80年代末~90年代初頭あたりのニューヨークやフィラデルフィアを想起させる、洗練されたディスコ/ファンクを惜しげもなく繰り出してくる。その音を聴いているとシック、エムトゥーメイ、ザップ、メイズ、クインシー・ジョーンズ…といった20世紀のダンス・サウンドをクリエイトした存在が頭の中をよぎっていく。また、彼らの発散する熱量たるや、まさに「あの時代」に一歩も引けを取らないエナジーの放出量で、初っ端の30分はノンストップ。むずかしいことは抜きにして、とことんダンス・サウンドを身体いっぱいに浴びせてくれる。これは、現在の音楽シーンの王道なのか、それとも“仇花”なのか――まぁ、そんな小理屈とは関係なく、とにかく第一級のダンス・サウンドが鳴らされているのだから文句はない。「ナンバー・ワン」や「ソー・グッド」といった中毒性の高い楽曲がグルーヴィに奏でられていく。

 彼らのステージ・アクションからも、相当“その気”になっているのがよくわかる。ところどころに、ステップやハンドクラッピングといった伝統的なソウル・リヴューへのオマージュと思しきアクションが込められていて、そんなちょっとしたところにもソウル・ミュージックへのこだわりが感じられ、もう、観ていて嬉しくなってしまうのだ。

 2013年に『Tuxedo EP』をリリースして正体不明のユニットとして登場した彼ら。そのときから、ダンス好きの間では話題沸騰だったが、正式に姿を現したのは今年。そのサウンドは、浮遊感のある都会的なブギーやバラードで、ダフト・パンクの「ゲット・ラッキー」と共に、思わず中年世代も巻き込んだ流行になってしまった。もちろん、彼らの音楽に反応したのは中年だけではない。若いヒップホップ世代からも大歓迎され、賞賛を浴びたのだから、その勢いたるや想像がつくものだ。

 後半はシックやスカイのカヴァーを絡めながら、よりグルーヴィに迫ってくる。しかし、彼らが今、なぜレトロなディスコ・サウンドに撤した作品を発表したのか。やはり、ヒップホップ世代にとって、20世紀のディスコ・サウンドはアイデアの源であり、サンプリング・ソースとしても重要なものだからだろう。それらのルーツを自分たちの手で再現し、足下を見つめ直したユニットがタキシードなのではないか。メイヤーたちも心底、ステージを楽しんでいるのが手に取るように伝わってきた。

 ショウは20世紀のオマージュに彩られ、さまざまなディスコの要素が「記号」としてふんだんに込められている。時代が一回りしたと解釈をするのは簡単だが、それだけではない“何か”がタキシードのサウンドとステージには隠されている気がしてならないのだ。

 それにしても、彼らのステージに遭遇することができた幸運。なぜなら、サマーソニックでの短いショウを除けば、たった1日の、しかもワン・ステージのみのフル・ライヴだったから。果たして彼らは、このタキシードというユニットをどのように続けていくのか。その“本気度”は未だ不明だけど、少なくとも今宵、90分のステージは素晴らしかったと絶賛していいだろう。もう、次の来日が待ち遠しくてたまらない。

Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。厳しい残暑が続く8月の後半。冷たい白ワインばかりでは、さすがに飽きてくるというもの。そんな今にオススメしたいのがグルナッシュ主体で造った南仏ラングドックの赤ワイン『レ・ランドマン・キ・シャントゥル・トン・デ・スリーズ』。少し標高の高い土地で造られたこのワインは、南仏のものとは思えない清涼感に満ちていて、今の時期でも爽やかに飲める。しかも、酸化防止剤等を一切使用していないデリケートな品質は、とても貴重。ぜひ、この時期に試してみて!

Photo:Masanori Naruse

◎公演情報
Billboard JAPAN Party X SUMMER SONIC Extra
タキシード Full Band Set
2015年8月17日(月)
More Info: http://www.billboard-live.com

◎tofubeats オープニングDJプレイリスト
Drake - Furthest Thing
Joy Denalane - Let Go
Maxi Anderson - Lover For Lover (Sander Molder Tiks Edit)
山下達郎 - DANCER
笠井 紀美子 - バイブレイション
Rhye - Last Dance
Slum Village - Go Ladies
Osamu Ansai - Woman
Mayer Hawthorne - Her Favorite Song(Oliver Remix)
Cavalier - Lifestyle
MF Doom - Doomsday (feat. Pebbles The Invisible Girl)
Jake One - Glow (feat.ELZi & Royce da 5’9)
Freeway & Jake One - She Makes Me Feel Alright
坂本慎太郎 - Wine Glass Woman
坂本慎太郎 - 君はそう決めた(inst.)
Bobby Nunn - Do You Look That Good In The Morning?
The Cool Notes - My Love Is Hot
The Cool Notes - You’re Never Too Young
Daft Punk - Lose Yourself To Dance (feat. Pharrell Williams)
Everything But The Girl - Driving(Osamu Ansai Edit)
Poolside - Do You Believe
The Beat Broker - dub talkin'
Taana Gardner - No Frills (Club Version)
Dam-Funk - We Continue
阿川泰子 - L.A. NIGHT
B.B. & Q. BAND - Dreamer(Shep Pettibone Long Vocal Version)
Change - Change of Heart(Alternate Dance Version)
Billy Griffin - Hold Me Tighter In The Rain
Drop Out Orchestra - Never Gonna Give You Up (Drop Out Orchestra Dub)
Howard Johnson - Say You Wanna (Pants Re-edit)
Daft Punk - Get Lucky (Drop Out Orchestra  Edit)
Chloe Martini - Volatile Dreams (feat. Azteka)
MAGOO & Eddie Craig - Funktime
Tony Cook - What’s On Your Mind (feat.Dam Funk)
O’Jays - Put Our Heads Together
GARY’S GANG - KNOCK ME OUT
B.B. & Q. BAND - On The Beat
Mayer Hawthorne - Back Seat Lover
CON FUNK SHUN - TOO TIGHT

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