2015/05/16
ストラスブール音楽院とルガーノ音楽院を最高位の評価を得て修了し、朝日現代音楽賞・現代音楽演奏コンクール“競楽Ⅹ”で第2位を受賞、現在は国内外で演奏活動を行うフルート奏者若林かをりのソロリサイタルが、5月23日と10月31日に東京オペラシティ 近江楽堂にて開催される。
当日のプログラムのテーマは、若林自身がフランス留学中に感じた、日本独特の“間”だ。若林は「ヨーロッパの音楽は、基本的には三拍子や四拍子など、“拍”に基づいていますが、日本の古典音楽には数えない“時間”というものがあります。言葉で説明するには非常に難しい、空間そして時間の違いを音楽を通じて伝えられれば」と述べ、「私自身、現代音楽は難しいものというイメージがありましたが、師匠であるマリオ・カローリの演奏を初めて聴いた時、光が出ているような衝撃を受けました。フルートは、原始的な構造を残した側面がある楽器なので、綺麗な音や息まじりの音、吹きながら声も出せたり、歌口を塞いでパーカッションのような音が出せたり…色んな方法で音を出すことができます。多彩な表現が豊富な現代作品を通じて、楽器の可能性をお伝えできれば」と続けた。
当日は、湯浅譲二氏、細川俊夫氏、若林千春氏といった日本人作曲家による作品が3作取り上げられる。湯浅氏の作品「舞働 II」は、日本の横笛である能管の「序の舞」をモデルに作られ、繰り返すたびに次第にテンポを上げていくという、能楽特有の手法が用いられた作品だ。都内で行われたリハーサルに立ち会った湯浅氏は「若林さんは世界的なフルート奏者マリオ・カローリ氏の数少ない愛弟子の一人。私は世界や日本の現代音楽に、彼女が大きく寄与していく存在であることを疑いません」と語った。
また細川俊夫氏の「フルート独奏のための『垂直の歌』Vertical Song」は、“音楽は空間と時間という画布に向かって描かれる、音による書(カリグラフィー)である”というテーマのもと作られている。細川氏は本公演について「この作品は、ロベルト・ファブリチアーニに捧げるために作曲し、そしてマリオ・カローリによる素晴らしい再演が行われたという思い出があります。初演から20年たち、マリオ・カローリの素晴らしい日本人生徒である若林さんが、さらにこの曲を掘り下げて、新しいいのちをこの曲に与えてくれようとしていることを、とても嬉しく思う」と語った。
他にも、エッシャーの絵画のように音や音型がどんどん変容していく様が面白いヤン・マレシュの「巡行」や、発音しながら反響をフルートに響かせたり、音をカーブさせたりと様々な手法を用いながら独特の世界観を表すカイヤ・サーリアホの「風彩~アルトフルートのために~」など、普段なかなか聴くことのできない作品ばかり。フルートの新たな一面を体感することができる貴重な機会を聴き逃さないようにしたい。
◎公演概要【若林かをりフルーティッシモ~フルートソロの可能性~】
会場:東京オペラシティ 近江楽堂
vol.01:2015年5月23日(土)11:00開演
湯浅 譲: 舞働 II
ヤン・マルシュ:巡行
細川 俊夫:垂直の歌
サルバトーレ・シャリーノ:フェニキアのイメージ
カイヤ・サーリアホ:風彩~アルトフルートのために~
若林千春:光の跡
Vol.02: 2015年10月31日(土)11:00開演
ブライアン・ファーニホウ:カサンドラの夢の歌
八村義夫:マニエラ
細川俊夫:息の歌
クリストフ・ベルトラン:エクトラ
ナディア・ヴァッセナ:海で失われた子供のように
藤倉大:グラシア
若林千春:タイトル未定(2015/献呈初演)
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