2015/04/03
この3月に、セルフ・タイトルのアルバムでデビューを果たしたタキシードは、メイヤー・ホーソーンとジェイク・ワンの白人アーティスト2人によるエレクトロ・ファンク・デュオだ。思い切り80’sコンシャスなサウンドとグルーヴを鳴らしながら、ソング・ライティングの味わい深さがキラリと光る作品に仕上げられている。
タキシードのメンバー2人が残して来たそれぞれのキャリアをざっと振り返ると、まずメイヤー・ホーソーンはメジャー・デビュー・アルバム『How Do You Do』(2011)でグラミーにノミネートされたこともあるシンガー・ソングライター。LAのレーベルである<ストーンズ・スロウ>から発表した、見事なソウル・オタクぶりと甘い歌声のインディー・アルバム『A Strange Arrangement』(2009)が一躍脚光を浴び、スターの階段を駆け上がることになった。これまでにソロ・アルバム3作を発表し、2014年には14KTとのユニット=ジェイデッド・コーポレイテッドでも作品を残している。
一方のジェイク・ワンは、これまでにスヌープ・ドックや50セントといったスターMCたちにトラックを提供して来たことでも知られるプロデューサー。自身はミネアポリスの先鋭レーベル<ライムセイヤーズ>からソロ名義作品をリリースし、レーベルの看板プロデューサーの一人として活躍している。実はメイヤー・ホーソーンとジェイク・ワンのコラボ・ワークは2006年にまで遡ることが出来るそうで、今回のタキシードとしてのアルバム・リリースは、2人それぞれがキャリアを重ねた末の、念願の一枚でもあるのだ。
アルバム『Tuxedo』の作風はと言えば、80年代のエレクトロ・ファンクにジャム&ルイスのミネアポリス・サウンドを少々、そしてメイヤー・ホーソーンが近作で追求してきた上質なAORのフレイヴァーを添えている。2人の世代的なポップ体験がそのまま反映されているのだろうな、という部分が微笑ましく、しかし個々の磨き上げて来たスキルが無ければ、ここまで全編粒ぞろいな楽曲だらけという風にもならなかっただろう。「Watch the Dance」や「I Got You」のような恍惚としたダンス・ナンバーあり、或いは「Two Wrongs」のようなアーバン・ポップの粋を探り当てる悩ましいナンバーあり、といった具合である。
また、終盤のディスコ・チューン「Do It」は、かつてピットブルがラップを乗せたヴァージョンで公開していた楽曲。ピットブルはタキシードとの共作をいたく気に入り、自身のレーベルからアルバム・リリースを勧めたそうだが、結果的に本作はメイヤー・ホーソーンの古巣ストーンズ・スロウから発表されている。白人クリエイター2人による満を持してのファンキー・ポップ作を、ぜひ堪能して欲しい。
text:小池宏和
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