2013/09/12
ブエナビスタ・ソシアル・クラブと、同じくキューバを代表する女性シンガー オマーラ・ポルトゥオンドによる来日公演が9月6日、ビルボードライブ東京にて行われた。
ブエナビスタを代表するあまりにも有名なあの曲のイントロを、ラウドのバルバリート・トーレスとトレスのパピ・オビエドが奏でると、場内から雄叫びが上がる。この中で何人くらいが13年前のあの狂騒を知っているのかな……と考えていると、歌が入る前に「チャン・チャン」はストップし、音楽監督のアグアヘ・ラモスの指揮のもと、間髪入れずにトランペットのグアヒーロ・ミラバルが「リンコン・カリエンテ」をスタート。男性歌手のカルロス・カルンガ、女性歌手のイダニア・バルデスの声は13年前のフロント陣、イブライム・フェレールらのそれとは全く違う。しかしながら日本で奏でられたブエナビスタのサウンドの中で、この夜のビルボード東京でのライヴが最良であったのは疑いようのない事実。13年前も誰もがフォーラムAでなく、より小さいより音響のいい環境で聞きたいという感想を持っていたのだから。伝説の初来日、オマーラ・ポルトゥオンドのソロ作をフィーチャーした二度目の来日、そして今回。毎回違う編成で臨むブエナビスタ名義のコンサート、音楽監督としてアグアヘ・ラモスは今回トランペット×3、トロンボーン×1を選択。ピアノのロランド・ルナや、グアヒーロの孫であるグアヒリートなど、三世代に渡る世代間の交流もブエナビスタの美しさの一つだ。客席も様々な世代の笑顔で溢れている。
中盤も聞き所は十分。バルバリートをフィーチャーする「エル・ルイセニョーレ・デル・グアテケ」や、パピとロランドが異なる楽器で掛け合いを見せる「セメント、ラドリージョ、アレーナ」。こちらも13年前に来日していたティンバレスのフィルベルト・サンチェスの「エル・カルボネーロ」でのソロに耳を奪われた後、アグアヘの呼び込みでこの夜の主役、オマーラが万雷の拍手と共にいよいよステージに。
ここからの4曲はあっという間だった。美しいボレロ「ボイオの愛」に始まり、この夜最もアップテンポだった「ムラータス・デ・チャチャチャ」では客席に立ち上がって踊るようリクエストし、1Fは総立ちに。そして「ノ・メ・ジョーレス」「キサス、キサス、キサス」……何たる存在感、圧巻のステージ!カルロスとイダニアがオマーラを見つめる姿は畏敬の念そのもの。齢80を超えても台風並の存在感を持つ女性歌手は、古今東西そう多くはいまい。
オマーラが去った後は、ブエナビスタ定番の「エル・クアルト・デ・トゥラ」と「カンデラ」で締め。アンコールを求める拍手はステージ奥のカーテンが開いても鳴り止まない。天国のルベンやイブライム、カチャイートにもきっと届いたに違いない。
Text:船津亮平(「月刊ラティーナ」編集長) / Photo:成瀬正規
◎More Info
「月刊ラティーナ」
創刊61周年となる世界の音楽情報誌「月刊ラティーナ」。
同時にブラジル・アルゼンチン直輸入のCD/DVD・衣装・楽器も販売。
また中南米からのアーティストを招聘しコンサートも開催している。
ブエノスアイレス市と共催の「タンゴダンス選手権」も今年で10回目となった。
Latina Online : http://www.latina.co.jp/
◎公演情報
日時:2013年9月6日(金)
会場:ビルボードライブ東京
Billboard Live HP:http://billboard-live.com
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